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2010年9月29日 (水)

すれちがう日中関係

 6月のはじめころ、「武」のつく天皇という題で記事を書いたことがありました。神武・天武・桓武そのほか、いずれも新しい都をつくるとか、一時代を代表する有力な業績を残した、というのがその趣旨でした。

 ところが、これには先例がありました。中国の「三武一宗の法難」なるたとえです。これは、名前に「武」のつく3人の皇帝、すなわち北魏太武帝・北周武帝・唐武宗と後周世宗が、仏教迫害・弾圧のチャンピオンということで、あまりいい方の評価ではありません。

 このことは、日中文化比較で実績のある王敏(ワン・ミン)氏の著書『日本と中国―相互誤解の構造』(中公新書)で知ったのですが、その中に、日本の「寛容文化」と「謝罪」について触れた記述があるので、折も折、触れておきます。

 2007年に愛知県長久手町で起きた人質立てこもり事件です。警官のひとりが犯人の銃撃で犠牲になりました。事件発生から約30時間後に投降してきた男に、取り巻いていた警察の拡声器が、銃は家の中に置いてきたか、とたずねました。

 男がそれにこたえると、「そうしてくれたね、ありがとう」と警察が応じました。同僚を殺した犯人に対する言葉として、日本人でもちょっとおかしいと思いますが、それに反応したマスコミはなく、王氏は、

 在日外国人は、おそらく多くが「日本語の言い回しはここまでヤサシイのか」という思いで記憶し続けるだろう。

 と書いています。

 もうひとつは、滋賀県長浜市郊外で起きた2園児殺害事件です。中国国籍の30代主婦への送り当番の朝、わが子がのけものにされているという思い込みから、預かった2園児を刺殺しました。

 報道陣の前で、園長が涙を流しながら「亡くなられたお2人には『どうか許してください』という気持ちでいっぱいです」と述べられたことに、王氏は理解を超えるとして驚きを隠しません。これは、広島の原爆碑にも相通じるものがあると思います。

 園長さんの詫びはおそらく、小さな命を守ってあげらけなかった周囲の大人のひとりとして悔しさがあったからだと思われる。もちろん、内面には犯人に対する憤りがあったに違いないが、この怒りより先に、園児を守る責任を果たせなかったことを責めるところが日本における事件に対するリアクションの特徴のように思う。事件の因果を考える日本人のどこか原点には、犯人も同じ社会の犠牲者と見なす慈愛を潜ませている気がしてならない。

 王氏の観察は、買いかぶりすぎでしょう。橋下知事とかネットウヨとか、そうでない人が最近は増えています。かといって、王氏の指摘が誤解であるとはいえません。また、そういった慮りをいいことに、つけあがるようなことを許さない精神風土も当然あります。

 草食系ばかりがふえて、それすらなくなるようでは将来が思いやられます。中国の日本研究や知識も増え続けています。中国のネットウヨや産経新聞ばりの環球網の活動にもかかわらず、相互理解が進み、日中関係が改善することを信じたいものです。 

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コメント

菅内閣は政治判断するに当たって視野が狭過ぎます。参院選挙の時の消費税発言と同じで外交でも露呈したということです。日和見な政治スタイルはもう治らないでしょう。

日和見が相手では野党は完全に引いてしまうでしょう。妥協のための妥協といったグチャグチャ政治になりそうです。

ところで、今回の問題は中国側の非道を大使館を通して各国に訴えていくらしいです。そんなことさせられる各大使館の職員に同情します。

投稿: ていわ | 2010年9月30日 (木) 07時43分

レセプション招待だけでなく、そういうことは、日頃してなくてはならないことではないですか?。

投稿: ましま | 2010年10月 1日 (金) 13時19分

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