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2010年9月11日 (土)

防衛白書を撃破せよ

 10年度防衛白書が公表された。全文は売り出された本を買わないと読めないのでまだ見ていない。しかし、新聞にでている「要旨」で勘所は知ることはできる。

 防衛白書などというものは、予算獲得、権限拡張といった「省益」に資するための役人の作文なので、これまでもカネを出して買ったことはなかった。しかし、今回は政権獲得以来の沖縄普天間基地移転など、迷走を重ねた末、結局、辺野古移転という前回にも及ばない線で日米合意に至った理由が書いてある。

 したがって、鳩山首相を「学ばせた」外務・防衛・官房のトロイカ工作が見え隠れする白書になっている。そこには、「米軍の抑止力」と「その存在が沖縄でなくてはならない」という、本塾がかねて指摘している「虚構」に満ちあふれている。

 防衛省が役所として予算をふやし権益を確保するには、どうすればいいか。役人としてはいえないが(いってしまってクビになった人もいる)、憲法9条を改正し他国の軍隊と同じ目的と体制を持つようにすることである。防衛白書は、この足りない部分を、米軍が持つ「矛」と表現している。

 憲法の制約があるのであれば、その(矛)を日米(防衛官僚)ともに、最高度に利用すればいい。お互いに利用しているようで実は利用されているのである。もちろん、利用の仕方では、防衛力の量と技術の差や過去の歴史的経緯から、アメリカの方が何枚も上で、時により高圧的で無礼さもいとわない。

 「抑止力」の虚構はすでにここに始まる。「抑止力がある」、または「抑止力が必要」といいだしたのは、日米どっちからだろう。役人の文章には主語がないことが多いので、わかりにくい。だけど、前後の文の流れからみて、いいだしたのが日本側であることは否めない。アメリカは「日本がいうならそうなんでしょう。そのかわり――」というのが、辺野古拡張であり、グァム移転費追加融資であり、おもいやり予算なのだ。

 抑止力にはふた通りある。相手の攻撃力にはかなわないので手出しするのをやめておこう、というのと、相手を攻めても損害の割りにメリットがないのでやめておこう、で矛と盾が持つそれぞれの抑止力に相当する。普通は前者をいうが、後者は、武装永世中立のスイスであり、日本も憲法9条を厳守すればそれにあてはまる。

 要は、抑止力とは「相手をこわがらせる力」であるが、その力を定量化できないことである。かつて日本は圧倒的に力の差があるアメリカを相手に戦い、敗れた。今の米中間には、核兵器を含めそれ以上の軍事力の差がある。

 中国がそれを認めて戦争をさけているのなら、あえて抑止力の存在を否定しない。しかしそれだけで十分なのだ。沖縄がどうの海兵隊がどうのなどには一切関係がない。現に海兵隊の司令官がいつているように「われれの任務の第一は、朝鮮などで戦乱が起きたときに邦人救出をすることだ」であって、抑止力だ、などとは一言もいっていない。

 わずかな海兵隊が沖縄にいることぐらいで、中国がこわがるはずがない。殴り込みにきても広大な国土・人口があるから負けるはずがない。北朝鮮だって100万の陸軍が山岳に立てこもって戦えば、十分に持ちこたえられる。日本にとって普天間がお荷物のようにアメリカにとってもお荷物になりかかっているのだ。

 「防衛白書(要旨)」(9/11毎日新聞による)を見るとひどいことが書いてある。

 わが国に対する武力攻撃に際しては、相手国が自衛隊に加えて米軍と直接対決する事態を覚悟する必要が生じることとなり、在日米軍がわが国への侵略に対する抑止力になる。

 要するに在日米軍を人質にしようということではないか。逆に相手国の目標が米軍基地である場合、日本はとんでもないとばっちりを食うことになる。自衛隊が日本国土を守ってみせる、という気概が全く見えてこない。こんな腑抜けた抑止力は、もう「虚構」どころでなく、同盟国に対しても失礼ではないか。この防衛白書は、与野党を問わず、徹底的な論戦を仕掛けて葬って欲しい。日米同盟の深化はそこからだ。
 

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