« 静かにしているのは、菅? | トップページ | 『怪人二十面相』 »

2010年8月 6日 (金)

広島市平和宣言の変遷

 「ああ やれんのう、こがあな辛(つら)い目に、なんで遭わにゃあ いけんのかいのう」―――で始まる2010年広島市平和宣言。この全文をネットで探したが容易に出てこない。マスコミのニュースとしても出てこない。ようやく広島市の公式HPで見ることができた。(新聞は夕刊に掲載した)

 なぜそれを探したかというと、2003年に上梓した拙著、『海と周辺国に向き合う日本人の歴史』の「あとがき」の末尾を次ぎのようにしめくくったからである。

 孫文は大正十三年(一九二四)神戸で講演し、「日本は世界文化にたいして西方の覇道の鷹犬となるか、はたまた、東方干城となるを浴するか」と、選択を迫った。背景は全くちがうが、今まさにそのいずれを選ぶか、あるいは第三の道を求めるのか、日本は重要な岐路に立っている。

 二〇〇三年の広島平和宣言がいう「国連憲章や日本国憲法さえ存在しないかのような言動が世を覆い、時代はまさに戦後から戦前へと大きく舵を切っている」というだけに、本題を掲げスタートに立ち返ってみたい、これが著者のねがいである。

 この年を振り返ってみた。正月には小泉純一郎首相が何度目かの靖国神社参拝を繰り返し、3月20日、ブッシュ米大統領はイラク戦争を開始した。6月、有事関連3法案が成立し、8月25日には首相が山崎幹事長に憲法改正案作成を指示した。

 また、広島では全国から寄せられた折りづるが放火され、慰霊碑にペンキをかけるといったいやがらせも起きた。広島の秋葉忠利市長が抱いた危機感にいたく共鳴したのは、「日本の重要な岐路」で「戦前へと大きく舵を切っている」と指摘したことで、当時、このように警鐘を鳴らすマスメディアを見かけなかったからである。

 今年も当時と同じ秋葉忠利市長の名で宣言された。来年の市長選に4選出馬がなければ、最後のアピールになる。さすが7年前とは大きく様変わりしている。

 核兵器のない未来を願う市民社会の声、良心の叫びが国連に届いたのは、今回、国連事務総長としてこの式典に初めて参列して下さっている潘基文閣下のリーダーシップの成せる業ですし、オバマ大統領率いる米国連邦政府や1200もの都市が加盟する全米市長会議も、大きな影響を与えました。

 また、この式典には、70か国以上の政府代表、さらに国際機関の代表、NGOや市民代表が、被爆者やその家族・遺族そして広島市民の気持ちを汲(く)み、参列されています。核保有国としては、これまでロシア、中国等が参列されましたが、今回初めて米国大使や英仏の代表が参列されています。このように、核兵器廃絶の緊急性は世界に浸透し始めており、大多数の世界市民の声が国際社会を動かす最大の力になりつつあります。  

 と、広島への世界の関心がこれまでになく高まったことをうたいあげた。そして、「今こそ、日本国政府の出番です」と続け「核兵器廃絶に向けて先頭に立つ」ために、非核三原則の法制化や「核の傘」からの離脱などをうながした。

 菅総理大臣は記者会見で、非核三原則の維持継続は明言したものの、「核の傘」については、核抑止力云々の古ぼけた論理をあげて世界の潮流に背を向けた。日本人として「戦前への舵」は回避できたとしても、輝かしい未来への希望を閉ざされた失望は大きい。

 岡田外相はかつて、南北朝鮮と日本による北東アジア非核兵器地帯宣言の起案をした。外交能力の限界もあってそのままお蔵入りである。潘基文国連事務局長は、核廃絶に日本政府以上に強い核廃絶の意欲を披瀝し、小学生の頃、朝鮮戦争の悲惨さを体験したこともあって、出身国の平和構築には、並々ならぬものがあると察せられる。

 ここに、北東アジアを平和と繁栄の地域とするか、ことさら緊張をかきたて、軍事優先の不毛な時代を続けるか、日本が大きな舵を切らない限り、平和への主導権は他国にゆずることになりかねない。その点では、7年前と何ら変わるところがないのである。

|

« 静かにしているのは、菅? | トップページ | 『怪人二十面相』 »

反戦・軍縮」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/36053090

この記事へのトラックバック一覧です: 広島市平和宣言の変遷:

» 八月六日に思う [老人党リアルグループ「護憲+」ブログ]
暑い。こんな夏は初めて。ここ数年、「涼風派」で過ごして来てクーラーの電源を入れたこともなかったが、この夏は連日の出番を強いている。当然のことながら、その暑さにかかわることなく、時々刻々、様々なニュースは飛び交う。口癖めいて言い淀むが、それぞれのニュースに「人さまざま」を感じ、これらの人たちの考えを集約するという難儀を背負う立場の人たちのご苦労に、思いを馳せる。 言うまでもなく、今日八月六日は、広島に原爆が投下された日である。 国連事務総長や駐日米国大使が、初めて式典に参列し、市長は「核の傘からの... [続きを読む]

受信: 2010年8月 7日 (土) 04時56分

» 広島原爆の日 65回目 [王様の耳はロバの耳]
核廃絶、一日も早く実現を=米国大使らも出席―65回目原爆の日・広... [続きを読む]

受信: 2010年8月 7日 (土) 09時47分

» 広島原爆の日 平和記念式典にルース駐日米大使らが初めて参列 [しっとう?岩田亜矢那]
あの暑い朝がまたやって来た。 アメリカという国家が 20万人もの民間人を一瞬にして殺害する為に そして、その新兵器のデータを収集する為に 65年前のこの日、広島の空に原爆を投下した。 試したくて、試したくて、たまらない新兵器の...... [続きを読む]

受信: 2010年8月 7日 (土) 20時14分

» 広島原爆の日 平和記念式典にルース駐日米大使らが初めて参列 [こちら、きっどさん行政書士事務所です!]
あの暑い朝がまたやって来た。 アメリカという国家が 20万人もの民間人を一瞬にして殺害する為に そして、その新兵器のデータを収集する為に 65年前のこの日、広島の空に原爆を投下した。 試したくて、試したくて、たまらない新兵器の人体実験出来て 憎くて、憎くて... [続きを読む]

受信: 2010年8月 7日 (土) 20時15分

» 65回目の『広島原爆忌』に思う事。「思わなくてはならない」事。 [晴れのち曇り、時々パリ]
又今年も、『平和の鐘』が鳴る。 そして、『平和』は一向に訪れる気配はない。。。。 そして、『原爆ドーム』に続いて、『ビキニ環礁』も世界遺産に登録された。 喜ばしいと、慶賀すべきか。 恥ずべき事、との思いを新たにするべきか。 ビキニ環礁、世界遺産に=核の威力伝える「証拠」―ユネスコ(時事見出し) >国連教育科学文化機関(ユネスコ)は1日、ブラジルで開かれた世界遺産委員会で、冷戦期に米国が核実験を行ったマーシャル諸島のビキニ環礁について、世界遺産(文化遺産)への登録を決めた... [続きを読む]

受信: 2010年8月 8日 (日) 03時55分

» 8月6日付け『ル・モンド』社説/「今までと異なるヒロシマからのメッセージ」 [晴れのち曇り、時々パリ]
発行部数わずか70万部そこそこの『ル・モンド』は、夕刊紙である。 何処やらのゴミ扱いされている新聞と違い、しっかりとした哲学のもとに、旗幟鮮明に発言する、やや左派よりのリベラル紙として、ヨーロッパ中から認知されている。 世界の隅々の出来事を、簡潔に報じる事でも、情報源として高く評価されている。 そのル・モンドの6日付の<社説>が、ヒロシマの原爆忌に関しての事であった。 この事は、この新聞の<知性>を良く表していると、思いを新たにさせてくれた。 題して『これまでと違ったヒロシマからのメッセ... [続きを読む]

受信: 2010年8月 8日 (日) 03時56分

« 静かにしているのは、菅? | トップページ | 『怪人二十面相』 »