« チャップリン | トップページ | 「戦中・戦後」断片① »

2010年8月20日 (金)

鳩山の火遊び?

 「ワシントンと北京の間でもっと中立的な立場を取ろうとした鳩山前政権の火遊び」と論評したのは、アメリカ・ネオコンの代表的論客であるロバート・ケーガンである。彼は、ブッシュ路線を肯定し、共和党候補のマケインの外交顧問に就任、バマ外交をことごとに非難するコメンテーターである。その彼に、日本で反民主党政権色の濃い『中央公論』(9月号)から、お呼びがかかった。

 題して「さよならオバマの〝勘違い外交〟」で、披瀝しているのは、トルーマン大統領以来続いてきた世界戦略の三本柱、つまり「アメリカの卓越」、民主主義諸国の同盟拡大、それに「開かれてた経済秩序」という冷戦時代の「封じ込め政策」を依然として有効なものとし、バスクアメリカーナを普遍的なドグマに位置付け続けていることである。

 さらにオバマが、理想主義的な色付けで独裁的政権とも中立的関係を築こうとしたことを誤りとし、今までの路線(ロシアと中国に改革を迫り続けるような)を放棄するのは、「民主主義の重要性を格下げ」するもので、「封じ込め」政策に協力した同盟国を傷つけるだけだとしている。

 当然のことながら、パレスチナ紛争の長期化、イラク進攻の不正義な戦争、国内の厭戦気運そして国連やNATO諸国内での威信低下、リーマンショック以来の国際経済におけるドルの権威失墜など、新しい情勢の変化や失政に対する検証・反省は一切ない。

 それどころか、オバマ新政策に目立った進展が見られないことから、「世界はそう簡単には刷新できない」と断じて、ウイルソン大統領が第一次大戦後に世界平和を構築しよようとしたような野望は、リセットするべきだとした。

 日本の右派陣営でも似通った、というより産地直輸入のような主張が最近になって強まってきている。なんといっても、鳩山前首相の変節と、それを継承した菅首相の「現実路線」がそういった傾向を勢いづけた。さらにそれは、中・米関係の軋轢報道を中心にマスコミ内部にも浸透し始めている。

 こういった動きの中で、冒頭の「鳩山・火遊び発言」が飛び出したわけである。火遊びといえば、未熟な幼児が大人のいうことを聞かず、身を危険にさらすという感覚だ。つまり、アメリカから見て日本は幼児扱いされ、親の保護下にあるのが当然といった意識だろう。

 自民党勢力の中で60年続いてきた幼児のようなアメリカ追随から、はじめてささやかな一歩踏み出そうとして発足した民主党政権が、どうして「火遊び」であろうか。日米同盟堅持、深化は言っても、どこかの党のように「解消」などとは言っていない。

 「どっちにつくのだ」と脅かされて、遠い国のイラク戦争につきあわされ、北朝鮮を威圧する米韓共同演習に参加する米原子力空母が横須賀から出航し、沖縄核持ち込み密約があったことには目をつぶる。幼児に発言権を与えない――、この方がよほど日本人にとって恐ろしい「火遊び」であることをケーガンは知らない。

 それどころか、ケーガンを勢いづけているのは、日本の官僚を中心とする現状維持・事なかれ主義、それに日米同盟に巣食うロビー政治家である。日本には核抑止力が必要、とか米海兵隊が沖縄に不可欠な抑止力などと、ネオコンに恰好な理論構成の材料を提供していることである。

 たしかに鳩山首相は、5月に「ゴメンチャイ」では通らない変節をした。当塾も辞任に相当する背信行為であることを認めた。後を継ぐ菅内閣が、締結したばかりの日米合意事項を尊重し、その決着と民主党代表選を9月にひかえて内閣人事を最小限にとどめたことも一応理解できる。

 菅首相は、代表選で外交政策を表にだすかどうかわからない。それは他の候補についてもいえる。しかしここは、はっきり意思表示をしてほしい。それがアメリカや沖縄県民に対する最低限の責任ある行為だ。またケーガンから「火遊び」などといわれるような外交に終始するのか、アメリカの火遊びにどこまでもついていくだけなのか、まさに、日本の国力・威信が問われる場面である。

 菅首相が「外交現実主義」に逃げこむ可能性は強い。しかし前述した後者を選ぶようなことを避けるには、「去年の衆院選公約の原点にもどって……」という、小沢・鳩山ラインが力を持ち、その影響力のもとで第2次菅内閣が成立する方向が最も好ましい。

|

« チャップリン | トップページ | 「戦中・戦後」断片① »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

小沢一郎が民主党代表選に立候補すれば、守銭奴などの小沢ガールズを含むその党内勢力から総理になることは間違いない。発言は鳩山由紀夫や管直人のようには、ブレないと思われる。
しかし、小沢は政治とカネの問題を抱えており、支持率は急降下する違いない。その状態で衆院の解散総選挙をやってもらいたい。

投稿: 左巻き菅 | 2010年8月21日 (土) 08時23分

少なくとも鳩山さんは幼児以下だと思いますが。幼稚園児だって毎日のお小遣いくらい管理できますし、いくつの嘘をつき続けたのでしょうか。小沢・鳩山ラインて、あんな人がまだ政治家でしかも与党で影響力をもっていることを憂います。火遊びでこの国が火だるまにならないといいのですが。あの人は結局、金があればイタい人でも総理大臣にもなれる、ことを証明してしまっただけの人です。
コラムの趣旨から外れましたが、鳩山さん自身は火遊びと揶揄されても仕方のない政治家ではないでしょうか。

投稿: Herosu | 2010年8月21日 (土) 08時35分

左巻き菅 さま
Herosu さま

コメントありがとうございました。
小沢さんは以前「もし私が総理になったらその時点で解散総選挙をして政策の是非を問う」といっています。

だから、自ら代表選には立候補しません。勝てるだけの党議員、党地方組織、サポーターの支持がないからす。

菅さんは、仮免の路上実習中。のろのろ運転で危なっかしいが、事故でも起こさない限り続投でしょう。

小沢さんは、壊し屋ですが自爆したことはありません。ヤミ将軍の地力をつけて機をかがうことになりますが、いままでの旧式の手法では、チルドレンがついていくかどうか疑問です。

あまり、マスコミがつける新聞見出しにだまされないようにしましょう。

投稿: ましま | 2010年8月22日 (日) 10時52分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« チャップリン | トップページ | 「戦中・戦後」断片① »