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2010年7月17日 (土)

仮想敵国

 一度このテーマで書いてみたいと思っていた。現在日本政府は、露骨かつ公然と北朝鮮と中国が「脅威」であるあると名指しにしている。多くの国民もそれを疑っていないだろう。ところが塾頭の考えは違う。「仮想敵国=日本の脅威」ということになると、第一がアメリカ、次いでロシア、第三は南北一体化した朝鮮で、中国はその次ぎにくる。

 別に反米・媚中でも、気が狂ったわけでもない。国家の歴史的な関わり合い、国力、軍事力、外交戦略などを勘案するとそういうことになるので、安全保障を考える上で、古今東西ごく普通に採用されてきた発想である。1907年(明治40)の帝国国防方針では、ロシア、アメリカ、ドイツ、フランスの順序に仮想敵国を設定した。

 日露戦争が終わり、日本に好意的であったアメリカのルーズベルト大統領が間に立って、日露講和条約をまとめてくれた。日本もその時、戦争継続の余力が全くなかったのである。前述の国防方針は、わずかその翌々年のことである。時期を同じくして日米の角逐を危惧する論文『日本之禍機』が発表されており、福田康夫元首相座右の書ということから当塾でも紹介した。

 たまたま、前回のエントリーで取り上げた『平和の代償』の中で、永井陽之助教授がこのテーマに触れている。そこでもやはり、脅威の第一位を米国としているのだ。ただし、現在の「北朝鮮の脅威」のように、韓国に天安艦沈没事件が起きると、調査に携わってもいないのに、先に立って国連の制裁をうながしたり、沖縄に米海兵隊存続させる理由づけにすることなどとは、全く違う意味を持っていることに、ご留意いただきたい。(引用のうち《》部分は傍点)

 ごく簡単に、日本の安全保障と防衛の基本問題を要約すると、「意図」の点は別として、その潜在的な脅威と「能力」という点からみれば、明らかに、第一に米国、第二にソ連、第三に中国が、日本にとって「脅威」である。したがって、論理的には、その優先順位にしたがって、外交による友好関係を持続し、なんらかの相互の安全保障体制の確立によって、相手側を《無害化》する外交路線が、国防費を削減し、日本に、行動選択の大きな幅をゆるす道なのである。

 塾頭は、東アジア共同体に《無害化》を位置づけていた。したがっていきなりASEANやオーストラリアなどまで念頭に置く経済ブロックを作ろうという発想とは違う。例えば、東シナ海における資源開発権益の共同体に主権移譲をするようなことや、北東アジア非核地帯宣言などへの着手を探るということだ。民主党のマニフェストにこういった項目だけはあるが、全く手つかずと言っていい。その《無害化》を実現することが、即、米・露の《無害化》を意味することになるという観点に早く立って欲しいものだ。

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