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2010年6月11日 (金)

天安艦沈没は迷宮入りか

 天安艦事件発生直後、韓国政府は犯人北朝鮮説を否定するような反応を示していた。私も国家的危機を招きかねない冒険をしておきながら、金正日が平然と国をあけて訪中旅行をするはずがないと思っていた。そのうち韓国政府は、欧米のメンバーを含む調査団の結論として、北の攻撃が濃厚とする調査結果を発表した。

 魚雷の推進部を回収したが、それが北朝鮮製と見られることから、他の状況証拠とあわせ「北朝鮮による攻撃と推定するしかない」というものだった。北はこれを否定し、韓国の強硬姿勢を強く非難、それを上回る好戦的な反応を示した。

 韓国は地方選挙を控えていたため、国際緊張で与党有利の体勢をつくるいわゆる「北風が吹く」ことを期待したといわれ、北はこれに協力したような形になったが、結果はかつて太陽政策を推進した野党の方が勝利したといわれる。

 私は、李明博大統領は南北間の緊張を望んでいないと見ていたので、韓国自作自演の陰謀説には疑問を持っていた。また、米原潜とのあいだの誤射・同士討ち説は、仮説に仮説を重ねるなど話が面白すぎて信じかねる。ここへきて出てきたのが、当初政府発表不信のもとになっていた、事件発生の頃、砲撃音を聞いたという証言に対する軍部の監査報告である。

 中央日報によると「天安艦が沈没した直後、束草(ソクチョ)艦が追い討ち、発砲した標的物と関連し、束草艦は『北朝鮮の新型半潜水艇と判断される』と報告したが、海軍2艦隊司令部がこれを『鳥の群れ』に変えて上部に報告するように指示していた事実が監査院の監査結果で明らかになった」とし、関連した軍幹部など25人を懲戒処分するよう勧告したという。

 半潜水艦は、北朝鮮が韓国に工作員を潜入・脱出させる専用艦として開発した特殊のものだ。完全に潜水はできないが船体部分を水面下に沈め、電波や目視を逃れやすいようにしてある。そして海流に沿って漂流したり、浮き上がって逃げ足を早くしたりできる忍者船で、逃げ損ねた場合の自爆装備も備えているという。

 それが実際にやってきたのかどうかわからない。しかし、合同参謀議長を含む25人を処分しようというのだから、上記の理由だけでは大勢すぎる。韓国軍部になにか大きな失態があったことは間違いがなさそうだ。仮に北の仕業なら察知できなかったこと、逃亡を許したことになるし、そうでなければ通常なら起こりえない同士討ちだった可能性も残されている。

 とにかく、天安艦があっという間に46人も犠牲者を出して沈没した事実は厳存する。昔の日本海軍なら「轟沈」ものだ。犯人は突き止められなくてはならない。これについて、新たな合同調査の提案が中国からあったと「ハンギョレ」が伝える。

 それによると、かつての軍事停戦委員会という枠組みを活用し、当事者だった北とUN司令部(米国)に、中国と韓国が参加して4ヵ国が共同調査を行おうというものだ。米国がこれに同意したというが、北の「検査団」派遣を拒否した韓国も、受け入れざるを得なくなるだろう。

 しかし、それが実現したとしても結論は出ない。北は海底からどんな新証拠が出ようと、北が実行したという証拠が示せない限り攻撃は認めないだろう。たとえ北の犯行であっても、忍者隊が無事帰還したことでシラをきり通せる自信を持っている。

 そんなことで、迷宮入りすることに利益を感じるのは、北と中国はもとより、国連安保理で得られる効果が限定的で、国内世論も平和指向に傾いた韓国、中東・アフガンで手一杯のアメリカである。その中でひとり制裁強化を叫ぶのは、日本だけになりかねない。結局、問題解決や拉致被害者救済をするには6カ国協議にしか道筋がないということになると、それを狭める外交は全く意味をなさなくなるということだ。

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コメント

哨戒艦天安沈没事件ですが、実際に南北の海軍の軍事衝突が報告書どうり、あったのか無かったのか実に興味深いですね。
先ず調査結果が正しい(南北軍事衝突)があったとして、何故沈没当時は『北』と『南』とアメリカの三者が口裏を合わせたかの如く沈黙したかの謎が、矢張り一番の問題点でしょう。
(この問題でアメリカは軍が軍を攻撃したのであればテロとは言わないと発言しています)
特に『北』が攻撃が成功して何故黙っているのか。?
これが最大の謎です。
今回『南』だけは監査報告で韓国軍の信じられない不手際と情報の隠蔽が言われているのですが、失敗した方(南)が隠すのは動機として有りえても、成功した方(北)が隠すのは矢張り動機が成り立たない。
今韓国の国会は、例の韓国軍合同調査団報告書が大問題に成っています。
一般に公開されている調査結果は日本語に訳したら前文を入れても3100字A4用紙で4枚に納める程度なのですが、
クリントン国務長官が訪中した時には韓国側から『400ページからなる徹底して専門的な報告書を受け取った』と語っているのですよ。
ところが韓国政府は今でも国会答弁で4ページが全部だとの態度を崩していない。
韓国政府の言葉が正しいならクリントンの受け取った調査報告書とは何だったのか。?
謎は深まるばかりです。
時事通信によると、
韓国外交通商省の千英宇第2次官は8日、哨戒艦事件の国連安保理での対応で北京入りしたが、
『哨戒艦沈没事件に関する国連安保理の追加的な制裁決議は実益がない』、『制裁を含まない非難決議を求めていく』と記者団に語っているのですが、日本の鳩山由紀や、今度の管新総理とは大違いです。
完全に幕引きを計っていますが、なるべく穏便に制裁にならない様に北朝鮮に気を使っているのですよ。
韓国軍も政府も今回の監査報告で幕引きしたいのでしょうが、野党側はそれでは済ますはずが無い。
もうミステリー以上に面白い展開で、これから益々話は拡大するでしょう。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月12日 (土) 11時22分

逝きし世の面影 さま
 問題は日本の政治ですよ。各国の実情を知っていて国民の前で強がりをいっているのか知らないのか、
防衛・外交の役人の指示通り動いているのか。
 第一、マスメディアの情報量が南アのサッカーなどにくらべて少ないんですよね。それで海兵隊の抑止力だとか東南アジアの安全だとか中味のないお題目だけに終始している。
 基礎的な知識がなく、とても東大だとか京大だとかで勉強してきた人とは思えない。

投稿: ましま | 2010年6月12日 (土) 13時10分

事件当時の鳥の影に76ミリ艦砲を百数十発発射とは、
鳥の羽音に怯えて敗走した平家の故事を連想させる話で、当時から信憑性は疑われていた。
発表どうりの本当のことなら軍隊としては物笑いです。
今度の監査の報告ですが、北の半潜水艇との発表ですが、この潜水艇は工作員を秘密裏に運ぶ為に二重のハッチを持ていて浮上せず潜水状態で工作員が出入り出来る特殊な構造になっていて戦闘艦ではないので武装はしていないのですよ。
韓国の日本海岸側で座礁した潜水艦は前方に元々あった魚雷菅を溶接で塞いでいて、工作員の運搬など隠密行動に特化した構造です。
発見して哨戒艦が砲撃して取り逃がしたとしたら大失策で、通常は考えられない。
何故なら潜水中のこの半潜水艦は極度に船足が遅く、高速の哨戒艦には太刀打ちでず、到底逃げ切れないのです。
運動性能が違いすぎて、勝負にはならない。
亀に追いつけないアキレスと同じですから、今度の監査が正しいとしてもやっぱり韓国海軍は世界の物笑いですね。

日本の関東軍と同じで、何か大事な事を隠しているのですよ。
日本の今の自衛隊でも、政府に報告発表した事実は自分に都合の良いことだけで不味い事は意識的に伏せられている。
中国艦隊の艦載ヘリの異常接近のマスコミ報道ですが、
起こった場所は中国本土の艦隊母港の直ぐ側で、中国側は駆逐艦二艘と潜水艦が二艘。後は補給艦などの非戦闘艦です。
これに対して日本側はP3C哨戒機や世界最強のイージス艦が2艘も数キロの至近距離ピッタリと張り付いてストーカー(嫌がらせ)行為を働いていた。
この事件はマスコミ発表は悪質なプロパガンダで、自衛隊の自作自演の緊張状態の演出です。
本当に監視対象に異常接近する、これが自衛隊の通常の監視行為であるしたら日本の海自は全員が極度の老眼だった事になるが大笑いですね。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月12日 (土) 15時03分

今度の韓国軍監査の報告も、信憑性は低すぎる。
何故なら一次資料を韓国軍は全く出さないのですよ。
当時の鳥の影の方が正しいのか、?今回の半潜水艦が正しいのか、?
何れであるかは、当時の艦隊本部との通信記録を出せばいっぺんに判明するのです。
天安沈没も天安艦と本部との通信記録の開示が全く無いのですが、事件当時の第一報は『座礁した』だったのです。
航路の記録も操船記録も何にもなし。全てを隠して誰にも見せない。
追求されて国会議員に船体を見せたが、専門家の随行は禁止する徹底ぶりで、これでは韓国軍は疑われても仕方がないでしょう。
もともとの軍民合同調査団の発表が4ページ程度のお粗末極まる代物で、到底事故報告書などではなく、単なる軍の宣伝広報ですね。

この海域は境界線が双方の言い分が食い違い年間20回程度の領海侵犯騒動が何回も発生し、それ程珍しい事ではないのですが、今回のような武力衝突になって犠牲者が出るのは、3回で、実に少ない
全てが、韓国民主化の後です。
よくご存知の様に韓国軍は『北』程ではないが国の大きさに比べれば異常に肥大化して大きすぎるのです。
日本の自衛隊にも言えることですが、南北の緊張緩和されれば間違いなく整理縮小の対象になる。
これを防ぐ為には一定程度の緊張状態は『望ましい状態』なのです。
1回目の海戦(軍事衝突)は1999年の事で北の魚雷艇と哨戒艇の二艘が沈没しているのですが、今の韓国ではこの6月15日は戦勝記念日とされています。
当時は金大中が何とか南北会談を実現させようと努力していた時期と一致する。
南北首脳会談が実現すれば劇的に緊張緩和が進むが、北が激怒して対抗処置をとれば幾ら寝業師に金大中でも実現は不可能だったのです。
2回目は2002年でこの時は南の警備艇一艘が沈没、北の警備艇一艘が大破したが、大きさが今回の天安の10分の1程度の小さな船です。
この時には金大中の後継の人権派ノムヒョンの末期で半年後には大統領選挙を控えていた。
韓国大統領は絶大な権力を持ていて任期が5年で途中での辞任することは無いので15年も軍事政権後継政党のハンナラ党が政権に就かないと、韓国政界のでの影響力はほぼ無くしてしまうし、ノムヒョン政権が進めるかっての軍事政権時代の色々な謀略事件の解明が進めは都合の悪い人が大勢出てくる。
前二回の海戦は何かの仕掛けが有ったとしても不思議ではない政治背景なのです。
今回の事件ですが、今でも『事件』のままで『海戦』ではないし、『沈没』のままでで北朝鮮の魚雷攻撃だと言うのに『撃沈』ではないのですよ。
多分この事件報道の最初の報道が正しい可能性が一番高いでしょう。
当時は『事件』ではなく『沈没事故』と呼んでいたのです。
普通に不注意で起こった海難沈没事故を政府や軍が悪用したのが今回の事件の真相でしょう。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月12日 (土) 15時51分

この事件と日本の政治の話ですが、
韓国政府は一見強行に見える様に操作していますが、実情は今や南北の経済交流は戻れない地点にまで達していて日本の様に完璧な断絶などは、したくても出来ない。
緊張がこれ以上強まれば為替相場や株価にも影響して仕舞い、政権基盤を危うくする。
ところが日本は大違いです。
早速制裁を強化している。これでは纏まるものでも纏まらないでしょう。
日本にとっては普天間にも直結していて、米軍の『抑止力』宣伝の絶好の口実になっているのですが、
この事件を単に日本政府が利用しているだけなのか。?
最悪、この事件は韓国と日本との合作の可能性があるのですよ。
日本側マスコミですがほぼ韓国軍と政府の発表をそのまま事実であるとして発表するだけで、韓国国内の民主勢力や野党の主張はけっして流さない。
ところが韓国軍はたったの4ページの調査報告でお茶を濁しているだけで、全ての一次資料を隠蔽して、まともに疑問に答える気が無い。
だから日本側マスコミとして発表したくても(自分の思惑に都合の悪い野党側の見解を絶対に報道したくないので)何にも材料が無いのです。

中米の某国で偶然見つけた北朝鮮製魚雷の設計図の話ですが、あれは韓国ではなく日本側が提供した資料であるとの意見があります。
商談用のパンフレットに性能を詳しく書く事はあっても、軍事機密である精密な設計図を添付することは無い。
あの魚雷図面は商談用のパンフレットには添付されておらず、なんと、後から韓国軍がパンフレットから想像して書いた者であると記者会見で認めているが、図面には意味不明の日本語のカタカナの表記があるのです。
この魚雷のパンフレットの本体ですが、表紙と中身の一部は公開されていますがそれ以外は何も公開していないのですよ。
本当にこのパンフレットが北朝鮮製である可能性よりも日本人製作で有る可能性の方が高いでしょう。
これは想像ですが、多分鳩山由紀夫のブレーンの軍事アナリストの小川和久氏辺りが作ったのではないでしょうか。?

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月12日 (土) 16時38分

逝きし世の面影 さま
 詳細をありがとうございました。北朝鮮も被害者として安保理に要請を出すようです。事務総長は韓国人、どういう采配をふるうか。
 北の外交はしたたかですね。熱い戦争になるよりは結構なことだと思います。

投稿: ましま | 2010年6月12日 (土) 17時32分

この記事の題名にもなっているように『迷宮入り』させたいのはやまやまなれど
どうも韓国は引き返せない危険な地点まで危機感を高めてしまったようです。
今回の国連安保理への逆提訴など一連の北朝鮮の言動ですが、今までとは大きく違い西側先進国水準に達していて今までのように『どうせ北朝鮮だから』との対応では上手くいかないでしょう。
ロシア単独の調査団の正式発表はまだですが、『合同調査団の結果が正しければ海軍ではなく穀潰しだ』と調査員は発言したそうですが、
監査院で戦闘艦束草が砲撃したのは半潜水艇だとの報告が1週間以上たってから上に報告されたとなっています。
国連安保理ですが協議が行われれば中国提案の4カ国合同調査が採決される可能性が高いが、
今回のアメリカの態度が分かりませんねえ。
不思議すぎるのです。何故態度を変えて証拠がいかがわしい魚雷説になってしまったのか。?
韓国の主張が受け入れられる見込みはありません。
何故なら普通の海難事故なら必ず在る筈の全ての一次資料を韓国軍が隠蔽して出さない。多分出せないのです。
しかし、出さない限り調査報告の信憑性は無いので、第三国の調査なら誰も韓国軍の言い分を信用しない。
ですから有耶無耶に迷宮入りを狙う韓国(アメリカ?日本)とそれ以外の国々との駆け引きがこれから続くが、必ずどちらかが勝ちます。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月13日 (日) 12時18分

逝きし世の面影 さま
 日米同盟も結構ですが、イラン経済制裁につきあえ、辺野古沖合の滑走路以外にないという押しつけっられぱなし。

 それならば北朝鮮の制裁を、などという日本の排外主義者達の感覚が気になります。公海上の船舶立ち入り検査はその国の領土上で公権力をふるうのと同じ、つまり戦争状態をつくるのだから、ミサイルで報復されても文句はいえない。

 そんなことを、どこまで真剣に考えているか疑問ですね。

 

投稿: ましま | 2010年6月13日 (日) 18時09分

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