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2010年6月29日 (火)

アメリカは世界の警察官

 アメリカは世界の警察官です。東西冷戦終了後、世界でただひとつ、飛び抜けた軍事大国になりました。最近はやや鼻息が弱くなりましたが、米国民はもとより、世界でもそれを認めています。軍事費で見ても09年は6610億ドル(ストックホルム国際平和研究所・SIPRI調べ、以下同じ)と、全世界の半分近く43%を一国で占めています。

 2位は、このところ急増している中国で1000億ドルとされていますが、アメリカの6分の1以下で、ブッシュ前政権から増え続けているアメリカには、とても追いつけるわけがありません。中国もアメリカの世界の警察官にとって変ろうなどと思ってもいないでしょう。

 ついでにいうと、フランスの639億ドル、イギリスが583億ドル、ロシアの推定533億ドル、日本は510億ドルで、年によって順位が変わり得る第3位グループといえましょう。アメリカに守ってもらっている国にしては、決して少なくない日本の水準です。

 このようにアメリカは、世界の警察官としてイラク、アフガン、パキスタンとひとりで頑張っくれています。アフガンはNATOに手伝ってもらっていたのですが、参加国は早く抜けたくてうずうずしています。日本は、インド洋の給油から頃を見計らって「1抜けた」を実現しました。

 アメリカのアフガンの戦死者は1000人を越え、世界同時不況に原油流出など不測の出費かふえる中、世界の警察官を続けることに飽き飽きしていると普通は思うでしょう。しかし、そんなことを考えるアメリカ人は「腰抜け」であり、「愛国者」ではありません。

 アメリカ国民は、この世界の警察官を誇りに思っています。開拓魂、多民族の団結、そして自由と民主主義を世界に普及させるため、星条旗のもと命をかけるのがアメリカ人です。世界の警察官をやめるわけにいきません。膨大な軍事費は、国内軍需産業の命綱にもなっています。

 世界の先端を行くコンピュータ技術も宇宙船開発も、もとはといえば軍事開発からスタートしています。アメリカの繁栄のもとになってるようなものです。世界ナンバーワンを続けるためには、苦しくとも世界の警察官を続けるしかありません。

 そのため、軍事費負担を一部でも肩代わりしてくれる国、本当は戦場まで行って血を流すことまで協力してくれる国を「友好国」とします。議会の感謝決議など出すことなど、おやすい御用で何でもありません。だけど、深い悩みもあります。世界中に悪者がいなくなり、警察官の必要がなくなったらどうしたらいいんでしょう。

 このところ国民国家の戦争というのはすっかり影をひそめてしまいました。だから、国ではなく、テロリストを名指しして戦争をはじめたものの、国ではないので「降伏しました」といって手を挙げてくれる相手がありません。こうして遂に泥沼から抜け出せなくなってしまいました。

 これは、この先大きな教訓となると思います。ただ、警察官はなにも現行犯逮捕だけが仕事ではありません。交通違反や窃盗防止のため目を光らせていることも仕事です。その際、当然犯罪者の気持ちになって訓練を繰り返す「仮想敵国」が必要になります。

 日本と韓国は、アメリカが中国・北朝鮮の「抑止力」になってくれることを期待しています。安保ただ乗り論というのがありました。ソ連健在の頃はたしかにそういったことは理解できます。「抑止力」とは、相手をなぐろうと思うけど、相手になぐり返されるのがこわいからやめておこうという、そういう気を起こさせない力です。

 相手をなぐろうと思っていない国に対しては意味がありません。アメリカは、同盟国が折角そう思っているのだから、あえて否定せず、恩を売っておければいいわけです。アメリカの国内にもアメリカの軍事戦略がこのままでいいと思っていない人が大勢いるはずです。

 日本は、何も古い「世界の警察官」観にただつき従うだけでなく、いろいろ知恵をしぼったり助け船をだしたりできるはずです。それが菅さんが考える新しい「日米同盟の深化」なら、塾頭はその「深化」に心から賛成します。

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安保」カテゴリの記事

コメント

この記事のタイトルですが、『世界の警察官』はアメリカが自分で言っているだけで事実であるかどうかは調べてみないと確かな事はいえない。
そして、世界で起きている事実は『警察官』とは縁遠い、
世界で一番破綻した悲惨な国家はソマリアであり、次にアフガンやイラクが続く。
アメリカの近くの中南米で一番治安の悪い破綻寸前の悲惨な国家はコロンビアなのですが、何れも共通点はアメリカが介入した国々です。
多くの日本人が、裏付けなく考えている様に『アメリカに守ってもらったら安心』は世界の常識ではなく、事実は正反対。
日本人のこの『錯覚』の原因は、
戦後の目覚しい経済発展であり、明治憲法下では有り得ない65年間もの長期の平和の恩恵を全ての人が受けているからでしょう。
その原因が1951年からの日米安保などではない。
この日米安保条約の5年前に公布された日本国憲法(特に9条)が、日本国を色々な軍事介入から守ってきた。
今のソマリア、アフガンやイラクを見れば、この事実は間違いようの無い事実です。
アメリカですが、あれは警察官ではなく地回りですね。
何故なら日本の警察が、人々から信頼されているかの理由は、身内(同盟国)に対して贔屓せず公平に接するからであり、縁故で扱いが違うことがないからです。
ですから同盟国だから、いざと言う時に『世界の警察』に守ってもらうとの発想自体が、根本的な間違いでアメリカが本当に世界の警察官なら同盟を理由には守らない。
(守っては警察の名前が泣く)
そして安保条約でアメリカには日本防衛の義務は何処にも書いていないのです。
日米安保の第五条に『共通の危険に対処する』とあるだけで、米軍が日本を守るとは書いていない。
この問題は今回のG8の宣言の天安関連での曖昧表現と同じで自分にとって都合の良い様に、『その様にも解釈できる』程度ですね。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年6月30日 (水) 15時01分

警察は、法の番人と勉強しました。国際法がまだ、暴力団の掟ぐらいの水準なので、世界の警察といっても、暴力団一の馬鹿力くらいの意味しかないと思います。国内の警察と同じようなイメージでは痛い目を見る、いやねすでに多くの国が痛い目を見てますね。

投稿: カーク | 2010年7月 2日 (金) 07時10分

逝きし世の面影 さま
カーク さま

「アメリカは世界の警察官」のネーミングは、そう思っている人向けに書いたからです。揶揄するつもはないのですが、そもそも日本の警察はまだ信用できる方で、世界の警察官はワイロづけだったり、人種差別をしたり、ごろつきに民間委託したりで、日本人より信用されていませんよね。

 韓国は、気の毒に天安艦事件があって米軍からの指揮権移譲を5年延期したり、人質事件があって引きあげていたアフガンの派兵を復活、もう砲撃に見舞われるなど、安保政策の大転換です。

 この「世界の警察官」へのすがりつき様は、国内世論(太陽政策派)封じ込め対策と思われますがどうでしょう。しかし、日本はこういった深刻さも持ち合わせていません。

投稿: ましま | 2010年7月 2日 (金) 09時35分

横レス失礼です。

憲法9条のお陰で日本は戦後平和だった。ということに対してです。

私はそういうことではないと思います。

歴史を見も、特ア諸国に関しては、武器を持っていないなら攻撃しない、ではなくそれなら楽に攻略できると考える国々と認識しています。

軍事力の後ろ盾がなければとっくに侵略、あるいは次々と中国のいいようにされていますよ。鳩山媚中政権が永遠に続くようなものです。

アメリカの後ろ盾のない日本の国防は中国に対してあまりに頼りないです。

>多くの日本人が、裏付けなく考えている様に『アメリカに守ってもらったら安心』は世界の常識ではなく、事実は正反対。

もしも在日米軍が撤退したら、中国北朝鮮と対峙する術は日本にはありませんよ・・・むしろ、

多くの日本人が、裏付けなく考えている様に『憲法9条があれば安心』は世界の常識ではなく、事実は正反対。

と思えるのですが・・・

投稿: ととちん | 2010年7月 3日 (土) 21時31分

ととちん さま
まず2つのことをはっきりさせておきます。
当塾は、9条の意味するところは他国を侵略しないということで、日本は自ら強い自衛意識を持ち専守防衛の備えは必要という立場です。
2番目に、アメリカとの安保条約に効果は認めるが、それだけに頼るのはむしろ危険だということです。
アメリカが日本と中国を天秤にかけている事実を、はっきり認識してください。そして中国が、危険をおかして意味もなく日本に攻撃してくることはありませんからご安心下さい。

投稿: ましま | 2010年7月 4日 (日) 21時27分

誤解のある書き方でしたらすみませんが、管理人様の仰ることには概ね同意なのです。

私は、逝きし世の面影様の書かれた「憲法9条のお陰で日本は戦後平和だった。」ということに対して疑問を投げかけたのです。

9条がもたらす自衛力などないに等しいと思ってるのでw
理想主義者によるの平和主義ではなく、現実として以下の2点が必要と考えています。

1.日米同盟の強化
2.日米同盟に頼り切らない国防力の強化

日米安保は、それなしでは日本の国防はありえません。それくらい必要不可欠なものと考えております。

その上で、(特に中国に対して)有事の際の日米安保など全くあてになりません。意思決定上の仕組みですが。それにより憲法9条改正や軍事力強化しておくことが国防上必要。

仰るようにオバマ政権では中国寄りになってきているので、ますます中国と対立した時にアメリカが頼りにならなくなっている。尖閣諸島におけるアメリカの対応を見ても分かります。

また中国、北朝鮮などと対等に外交するためにも必要と考えています。彼らは軍隊のない日本をなめきっていますので。。

長文失礼致しました。

投稿: ととちん | 2010年7月 5日 (月) 02時03分

ととちん さま
ご主旨了解しました。

ちょっとつけ加えさせてください。
自衛隊の防衛能力ですが、まず対潜水艦哨戒能力ですがソ連時代に充実させたP3C態勢があり、世界1、2位を争います。

沿岸防衛能力も陸海空の自衛隊が固めており他国の軍隊の侵攻を許しません。ただ不足するのは外国攻撃能力と、ようやく軍事衛星を持つところまで来たが、まだアメリカに多くの情報を頼っていることです。

中国は、軍事費を急速にのばしていますが、長い国境線や旧式装備の更新などを考えると、まだまだ日本や台湾のレベルにほど遠いと言えましょう。

日本の防衛をどう考えるのがいいか、一番警戒すべき事は何かと、米軍が直面する世界戦略とは明らかに違います。日本は日本に合った方策を立て、アメリカの言うなりになるのではないという日本防衛の気概が必要です。 

投稿: ましま | 2010年7月 5日 (月) 09時49分

管理人様
度々失礼いたします。

幾多の紛争をしてきており、軍事費世界二位の中国に対して、実戦経験に非常に乏しい自衛隊。

有事の際の円滑な命令系統に関しても疑問が残ります。
戦時中ならまだしも、そんな中国の軍隊と自衛隊を対等と考えるほど私は今の政治家の能力を信じることができません。

日米同盟をひとまず堅持しつつ、米国中国の言いなりにならない真の独立国となるために軍事力を強化する、核を持つなども一案と思います。

国防という観点から各党がどのような政策を打ち出していくかが見物ですね。

投稿: ととちん | 2010年7月 5日 (月) 17時41分

ととちん さま
まず核の問題から。

核兵器を持とうとすれば短期間に実現可能、ただし実際には所有しない、そういう核武装「寸止め論」というのがあります。

核兵器は所有するメリットがないので所有しない方がいいでしょう。しかし、核抑止力と、核軍縮交渉の主導権をにぎる上で「寸止め論」への研究はしておいた方がいいかも知れません。

実戦経験のあるのは、アメリカぐらいで中国も国民党との内戦や朝鮮での義勇軍ぐらいしかありません。中国の軍隊は、国の軍隊ではなく、いまだに党の軍隊であることなど、研究しておかなければならないこともたくさんあります。

>円滑な命令系統 これは法的にははっきりしているのですが、内部統制では、実戦経験のあるアメリカや韓国でも最近は混乱気味ですね。つまり、国民の支持を本当に受けているかどうかです。

投稿: ましま | 2010年7月 5日 (月) 19時53分

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