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2010年6月30日 (水)

最大の抑止力、憲法9条

 「米軍の存在が抑止力」、その言葉を考えれば考えるほどわからなくなります。自爆テロの犯人は、米軍が存在するから攻撃を自制するなどということはありません。むしろ逆に最大の攻撃目標にしています。

 台湾の独立阻止のために中国が侵攻してくるのを、米軍の存在で防いでいる、これも「はてな」ですね。中国はアメリカがいるから軍事行動をとらないのではなくて、最もいい形で平和統一するにはどうすればいいか、そのためには、台中双方にとってウイン・ウインの解決方法をさぐるという方向性はがすでにできています。犠牲の大きい戦争をするメリットは何もありません。

 北朝鮮は困った存在です。金正日の健康と権力の動揺次第で何が起こるか混沌としてきたからです。自壊、暴発、内乱、順調な世代交代、その行方をもっとも心配しているのが中国です。とりあえずは4番目の線でおさまってほしい、すべてはそれからだと思っているでしょう。

 北に鉄の統制力が維持されていればともかく、今は米軍の抑止力が北の動向を左右するような事態になっていないように思えます。ミサイル発射など最悪の事態、暴発を抑えるのは米軍の抑止力なんかでありません。中国の影響力が利くかどうかにかかっています。日米韓の連携は大切ですが、韓国は国境を接し、同じ民族の問題だということで、現在の日本政府と立場に微妙な差があることも意識しておくべきです。

 ちょっと前にグルジア紛争というのがありました。ロシアの介入に対して、アメリカが黒海に軍艦を派遣して牽制するというような事態もありました。前回の記事「アメリカは世界の警察官」的な動きですが、ロシアに対する抑止力効果をねらったともいえます。

 しかし、ロシアは自国民の安全と権益は守り通す意図があっても、アメリカの抑止力を無視して、かつて自ら放棄したソ連衛星国を奪還したいなどとは、思っていないでしょう。どうもこう考えてくると「抑止力」というのは、現実離れした架空の概念として利用されているように思えて仕方ありません。

 そもそもこれは、かつての「軍事バランス論」から生まれてきたものではないでしょうか。最初に比較の対象にしたのは、陸上兵力です。国境を接する2国間では、陸軍2万人より3万人の方が強いという計算をしました。また、第一次大戦後は海軍の軍艦のトン数が軍縮の対象になりました。

 古典的な戦争は、単純にその数で強弱を競うことになります。数のシーソーゲームが限りなく続きます。そして、その数のバランスがとれている間は戦争が起きないという論理もありました。第二次大戦後は核兵器の開発と保有数の競争です。そして、核を持つことが持たない国への抑止力となったことは否定できません。

 冷戦中は、もっぱらアメリカとソ連の核競争となりました。相手の持つ数を上回ることが至上命令です。それが遂に地球全体を廃墟にするほどの量にもなりました。最初は爆撃機で爆弾を運んだものが弾道ミサイルになり、どちらが最初の攻撃を始めても際限のない報復戦となって、最後の勝利者はいないということになりました。

 事実、広島・長崎以降は一発も使われていません。また、米ロ以外の国が使うようなことがあれば、その国は全世界を敵にして袋だたきにあうことを覚悟しなければならないということになります。核保有数で飛び抜けた米ロ2大国は、核弾頭削減の条約を結びどんどん減らしています。

 ただし、両国内には、まだ他の核保有国から見ると断然優位にあるためこれを温存し、そのハンディキャップを国際政治に生かすことを考える勢力が依然として存在します。核の傘に期待をよせる同盟国を引きつけておくメリットもその一つです。核廃絶には遠い道のりがあるわけです。

 長くなりましたが、抑止力や軍事バランスというのは、帝国主義戦争時代の発想に始まり今日まで続いて来たものです。またそれが即「国力」と解された時代もありました。しかし、陸軍兵力だけで計られていた国力は、国土面積、人口、科学技術、経済、環境そして外交能力と、あらゆる要素がからみあって決まるようになりました。

 だから、抑止力とか軍事バランスなどというのは、「もう古い」と言いたいのです。それぞれの国に必要な自衛能力は必要ですが、それがどういう形でどうあるべきかは、それぞれ自国民が選べばいいのです。日本は幸いにして島国で、安全保障上恵まれた環境にあると思います。

 憲法9条を厳守し、自国の防衛はするが、他国に出かけて軍事行動はしない、という国是は第一番の抑止力になると思います。なぜならば、日本国民に強い自衛の意志があり備えがあれば、9条の存在を無視し、大きな損害を覚悟してまで攻め込んでくる国があるでしょうか。

 日米安保条約そのものは、条文として良くできていると思います。問題は、基地問題にかかわる地位協定、集団的自衛権の解釈変更、あとで付け足された条約の精神を逸脱したガイドラインとかロードマップという協定類です。ここでは詳しく触れませんが。本当は安保条約締結50年を迎え、当初の線まで立ち戻って日米関係のありかたを考えるべきではないでしょうか。

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 別に北海道新聞の宣伝マンではないのですが、「全面可視化 これで冤罪防げるのか」との28日の社説を読んですっかり嬉しくなってしまいました。捜 [続きを読む]

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