気になる「深化」の意味
昨日の「吹き飛ばない閉塞感」の続きです。民主党マニフェストには、外交・安全保障の項目の最初に「●総合安全保障、経済、文化などの分野における関係を強化することで、日米同盟を深化させます」と書いてあります。「総合安全保障」とは何でしょう。また唐突にでてきた「文化」とはどういう関係があるのでしょう。まさか、日本文化を同盟の深化でアメリカナイズしようということではないと思いますが……。
「深化」という言葉は、前のマニフェストにはなかった言葉ですが、首相の所信表明演説の中にはありあります。また、首相が決まる前に発表された5月28日の「日米共同声明文」にすでに出てきます。
SCC(日米安全保障協議委員会=岡田外相、北沢防衛相、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官)構成員たる閣僚は、日米同盟を21世紀の新たな課題にふさわしいものとすることができるよう幅広い分野における安全保障協力を推進し、深化させていくことを決意した
したがって「深化」は、首相の発案ではなかった可能性が強いのですが、「幅広い分野」の中に「文化」が入るとすると、安全保障に対する日本人の平和指向意識を変えさせる意味にもとれ、空恐ろしくなります。
60年安保の時、岸首相は「日米軍事同盟だ!」という野党の追及に対して「第2条に経済協力をうたっており軍事同盟ではありません」という主旨の答弁をしたことを覚えています。以来「同盟」という言葉は、敬遠され「日米安保」で通してきましたが、小泉政権の頃から意識的に「同盟」を復活させたのではないでしょうか。
同盟をたてにアフガンやイラクへの自衛隊の協力は「当然」、という雰囲気を作りたかったのでしょう。また、安倍内閣の頃には集団的自衛権の解釈変更とか憲法改正を強く言い出しはじめました。そのアフガンは先月末現在で米軍の死者は1000人を越えています。アフガンの民間人の死者は、最近は無人機の遠隔操作爆撃でうなぎのぼりになっており、パキスタンを含めとても何10倍ではすまないでしょう。
アメリカの「テロとのたたかい」は、いつ果てるこなく続いています。オバマ大統領もよく使う言葉で、日本では「テロ防止」のような感覚で受け止められていますが原文は War on Terror、つまり戦争です。1978年の米軍再編、新ガイドライン以後、米軍、自衛隊の合同訓練など一体化が進んでいます。
それを「深化」させて、即、憲法違反の「テロ戦争」に付き合わされるようではたまりません。50年続いた安保体制の中で育ち、それが当たり前のような感覚でいる強靱な官僚群がいます。内閣総理大臣の首さえすげ替えてしまいました。国民はよほど肝を据えて、場合によれば暴動を起こすぐらいの覚悟で「深化」の行く先を監視しなければなりません。
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