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2010年5月26日 (水)

鳩山「友愛」の散華

 鳩山内閣発足当時、首相がモットーとする「友愛」について、本人はもとより、メディアでも盛んに取り上げていた。しかし、やがて首相の記者へのサービス精神や、「沖縄県民の《思い》を大切に」とか「誠心誠意ご理解をいただけるよう」といった、彼独特の言い回しもあって、ついには、彼自身の資質に結びつけ、軟弱な「お友達意識」や「仲良しクラブ」的な意味合いで批判的に使われることが多くなった。

 知られているように、「友愛」は祖父の鳩山一郎氏が、オーストリアの貴族・クーデンホーフ・カレルギー伯の『Totaler Staat, totaler Mensch』英訳版を翻訳し、そこから得た政治理念に共鳴して唱えたものだ。オーストリアは、西欧の長い歴史の中で2回の大戦を含み戦争に翻弄され続けてきた国である。

 「友愛」について、フランス革命の「自由・平等・博愛」の博愛に根源をさぐる意見があるが、伯は自由と平等は相反する理念であり、ちょうど今どきの、新自由主義が貧富の格差拡大を招いているような現象を指摘し、批判的だったという。「友愛」は現実離れした甘いキャッチフレーズではなかったのである。

 それは、ファシズムでもマルキシズムでもない、ヨーロッパから戦争の原因をとりのぞき平和を構築する共通の要諦として取り上げたものである。それが第2次大戦後、現在のEUを生み出す上で大きな影響をもたらしたことから、当塾は、鳩山外交政策に「東アジア共同体」構想と、日米安保60年の抜本的再構築を指向するものとして過大な期待をしてしまった。

 しかし、首相の「学べば学ぶほど抑止力」発言には愕然としてしまった。カレルギー伯と縁もゆかりもなく、そこからは何も学んでいないといっているのに等しいからだ。それ以後当塾は、あまりにも軽い総理の発言・行動に愛想をつかし、鳩山辞職論を展開していることはご覧のとおりである。小屋修一『欧州連合論』から次の一文を引用しておく。

 伯爵はその主著「パン・ヨーロッパ」のなかで欧州諸民族の結合、とくに仏独両国の和解によって、戦争の根源を絶つこと②欧州統合により、ソ連の欧州征服を阻止すること③共同市場を創設し、経済的競争力において、米国に対抗できる欧州を建設すること、を呼びかけていた。

 汎欧州運動の創始者で、汎欧州同盟の総裁でもあった伯爵はまた、『6カ国の欧州の記録』の発刊にあたって、以下のように指摘した。

 自由な欧州諸国民を打って一丸とした「欧州連合」のみが、われわれの大陸を米国、ソ連と新生中国に対し、平等かつ友好的な世界国家に変容させるだろう。それのみが、世界を脅かしている最悪の破局――核戦争――から世界を救うことのできる「世界連邦」の創設を可能にするものだと考える。

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