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2010年5月12日 (水)

第3金王朝はあるか?

 以下は、5月9日付東京新聞朝刊電子版の記事である。

 【北京=安藤淳】訪中した北朝鮮の金正日総書記に対し、中国ではインターネット上で「また食糧をもらいに来た」「金家王朝は世襲をやめろ」などの非難が集まる一方、受け入れた中国政府に対しても「納税者の金を(北朝鮮への)援助に軽々しく使うな」と批判の矛先が向けられている。このためか、大手ネット掲示板サイトでは金総書記関連の書き込みが削除されている。

 あるネット利用者は「金総書記が泊まった遼寧省大連のホテルの一日の宿泊料一万二千八百五十八元(約十八万円)は、北朝鮮の一人当たりの年間国民所得(約十万円)より多い」と指摘。「(土産の)米や小麦は特別列車十七両に入りきらないだろう」など皮肉交じりの意見もあった。

 これを見て、1994年金日成主席の死から16年続いた金世襲王朝が、3代目の正銀氏へ順調に受け継がれるかどうか、はなはだ疑問になってきた。というのは、中国政府の公式の立場は別として、初代金日正の時代との違いがあまりにも大きいことに気がついたからである。

 金日正が死ぬ22日前の94年6月16日には、カーター元米大統領と会談しており、7月末には金泳三韓国大統領との会談も予定されていた。核開発は進んでいたが、国際原子力機関の査察も受け入れており、北の国際環境は最も安定していた時機だったといえよう。

 中国は、天安門事件を経験し、ソ連もすでに解体してエリツィンの時代に入っていたが、金日正将軍が日本からの独立を勝ち取り、朝鮮戦争では中国の人民義勇軍の助けを得て劣勢を38度線まで押し返した「血の盟友」の関係と、中・ソの手厚い戦後復興支援が記憶として残っている時代である。

 金日正の葬儀当日、TV画像で正装した女性の群衆が手放しで大げさに泣き叫ぶ画面を記憶している人は多いだろう。もっとも朝鮮では「泣き女」という職業が成立するほど派手に泣くのが風習だというが、金正日にもしものことがあって、果たして同じ風景が再現するだろうか。現状でははなはだ疑問だ。

 金正銀を後継者とする噂はあっても、前代のような国際的な認知も、国民的英雄としての実績づくりも進んでいないようだ。仮に順調に世襲が実現したとしても、初代、2代よりさらに弱体化すねことは避けられないだろう。先軍政治といっても、核やミサイルなどの切り札にはどれほどの効果もなく、孤立を深めただけのことを朝鮮人民も気づいている。

 北朝鮮の脅威はすでにない。ただ暴発と瓦解に基づく混乱を恐れるだけである。

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