« 5周年 | トップページ | ハードルを高める鳩山流 »

2010年4月12日 (月)

悼惜・井上ひさし

 井上ひさし氏が9日に75歳でなくなった。同氏とは会ったこともないし作品も読んでいない。ただ、夕食時のテレビが流す「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングを懐かしく思い出す程度である。氏との縁といえば、全国区の人気作家となったばかりの頃、私は彼の住宅から300mと離れていないところに移り住んだということがある。

 彼の家は、敷地いっぱいに建てた15坪あるかないかの平屋建てで、有名作家の住むような家ではなかった。当時自家用車を持つ家庭はまだ少なかったが、奥さんが子どもを乗せて近所の店に買い物に来ている姿を、妻がよく目にしている。その後より広い新築戸建てに移り、さらに地元から移住したようだがその先は知らない。

 これも彼とは直接の関わりがないが、このブログをはじめてから地元「9条の会」に名を連ねた。同会は知られているように、彼ら9人が呼びかけたものだ。その呼びかけ人も相当高齢化している。今後その趣意がどう引き継がれていくのかが気になるところだ。

 片や先週は、平沼赳夫氏などによる新党「たちあがれ日本」の旗揚げがにぎにぎしく報道された。これも高齢がキーワードになっている。発起人が石原慎太郎都知事だそうで、9条の会発起人と全く逆の発想であることは、両人とも隠そうとしていない。

 同じ戦中生まれながら、どうしてこんなに違うのだろうと思う人がいるだろう。早くいえば、その人にとって敗戦がプラスだったかマイナスだったかの差ともいえるが、そんな単純な問題ではない。同年代だから99%意見が違っても1%は話が合うことがある。

 それは、彼(平沼)らの目論見の「反日的行動が日本を駄目にする」という裏返しにした危機感である。同じ世代について横断的に世代論を説くことの難しさがあって、気にはなっていたがその違いを分析しかねていた。そこへ、宮島理さんという息子より若いフリーライターの方の「井上ひさし氏と天皇を暗誦できない右翼」と題するページを見つけた。

 戦後生まれの20歳と60歳にどれほどの違いがあるだろうか。今の60歳に、年齢に見合った伝統的価値観、土着的信仰心があるだろうか。単に生きている年数が違うというだけで、中身は大して変わらないように思う。戦後生まれはみんな「現代っ子」なのだ。

 この文化論的分析の中で「土着的信仰心」という言葉にひきつけられた。伝統的価値観というのは、史観として議論の対象になるだろうが、「土着的信仰心」は多分に井上氏の出自や作品を意識しながら述べられたのではないかと思う。

 かつての軍隊では軍人以外を指して「地方人」といった。その中には中央(権力)ではない、素朴な草の根のという意味合いがあるのだろう。「たちあがれ」グループは、まさに「土着的」ではない信仰心から生まれてきたものではなかろうか。

 追記:Wikipediaに戦中、小学生に歴代天皇の暗誦を強制したような記述があるが、どこまで言えるか知的競争のようなことはあったにしろ、強制された記憶はない。

|

« 5周年 | トップページ | ハードルを高める鳩山流 »

戦中・戦後」カテゴリの記事

コメント

5周年、おめでとうございます。
人生の先輩として、ましま先生を尊敬しております。
・・・こっそりですが(笑)

塾頭や井上ひさしさんたちのベクトルと、石原都知事のようなベクトルと、同じ戦争をくぐりながらなぜも、反対方向に行くようになったのだろうと内心、思っておりました。

先日、諏訪大社・御柱の木落としの神事のテレビ中継を見ましたが、神事への人々の高揚感も、ここでは感動的でありました。
土着的信仰心とは、こういうものなのでしょうね。

投稿: 金木犀 | 2010年4月12日 (月) 17時27分

井上ひさしさんの文章が実に軽妙なので75歳よりも随分と若いとばかり勘違いしていましたが死去のニュースでは、加藤周一の死の喪失感と同じものを感じています。残念です。

今では少なくなったが以前は元軍人との触れ込みでテレビの討論会などで『昔は良かった』などの発言をするプチ中曽根康弘モドキが良い居ましたね。
これ等の共通点は矢張り海外に派遣されて死線をくぐってきた水木しげるなどとは大きく違い、内地にいたか主計局など、軍人とは名前が付いているが自分が危険が無い位置に居て一般人よりも良い目をしている。
これ等の『昔は良かった』発言を聞くたびに私の老母が、『昔は、おんなには選挙権一つなかった』と怒っていたのを思い出しました。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年4月12日 (月) 17時29分

金木犀 さま
ありがとうございます!。
お会いしたら「こんなはずじゃなかったのに」とおっしゃりそうで戦々恐々。sweat01

 白状すると「土着的」も未消化のまま書いてしまいました。直感です。ただ、諏訪も出雲も土着には縁が深そうですね。

投稿: ましま | 2010年4月12日 (月) 20時31分

逝きし世の面影 さま

軍中枢に顔の利く大物のコネがあれば海軍主計中尉あたりをねらう。
庶民クラスでは、前線から一歩ひいた衛生兵が大当たり、うまいことをしたなとうらやましがられる。
都知事さんは、海軍兵学校の予備校的といわれエリートが集まる中学出のボンボンでした。

平沼騏一郎さんは、昭和天皇が右翼の大将できらっていたためなかなか総理になれなかった。しかし終戦の頃は長老扱い。土着信仰には縁遠い存在ですな。

投稿: ましま | 2010年4月12日 (月) 21時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/468248/34191071

この記事へのトラックバック一覧です: 悼惜・井上ひさし:

« 5周年 | トップページ | ハードルを高める鳩山流 »