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2010年4月 9日 (金)

核廃絶はできるのか

 チェコのプラハで行われた米オバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領の「米露新核軍縮条約」調印式が大々的に報道されている。世界をわかせた約1年前のオバマ「核廃絶演説」と同じ場所が用意され、計算され尽くされた舞台装置のもとである。

 新聞などでも「核兵器なき世界」への第一歩などと、手放しの評価が多く広島・長崎の市民の声もその線で拾っている。当塾は、これまでオバマ演説にしろ鳩山演説にしろ、ブッシュ・小泉、安倍のアンチ・テーゼとして高く評価しすぎ、その後幻滅を味わされていることを反省している。

 マスコミはもっと冷徹な目で見て、国民に変な幻想を抱かせない配慮が必要なのではないか。米・露ともにピーク時には7万数千発あったという核弾頭を、使いようのない兵器、維持費のかかる兵器ということで、自発的要素も含めながら徐々に減らしてきている。

 その一方で、世界の9割以上を保有する核大国としての抑止力を誇示する必要もある。だから保持数量はなるべく多く見せかけたいという本能も働く。オバマが言ったったひとつの正直な発言は、彼の生涯の中では廃絶が実現できないかも知れない、という言葉に尽きる。

 米・露交渉は、核兵器の数量カルテルのようなもので、決してそれをゼロにしようとする第一歩などではない。その点を平和主義者は甘く見てはいけない。ブッシュとプーチンが02年にモスクワで結んだ条約は、91年の湾岸戦争当時に設けた上限6000発を1700~2200発にするというものだったが、それを今回は1550とする自然減またはカウント誤差程度のものにしか過ぎない。

 交渉は「核兵器をなくしよう」という理想主義のもとで進められているものでなく、あくまでも、核保有国の既得権益と軍事バランスをどう維持するかのパワーポリティクス・ゲームの中で出た結論だ。アメリカは舞台にプラハを選んだように国外向けPR効果をねらい、ロシアは軍事費節減と大国意識保持という国内向け効果をねらった同床異夢の調印式だったということだろう。

 オバマには、共和党や保守主義者の多い天敵・上院が待ちかまえている。これまでも包括的核実験禁止条約を締結しておきながら、上院が批准を拒否したというような、後ろ向きなことが再々起きた。これがアメリカの現実である。

 核を持たない日本は核軍縮交渉の当事者にはなれない。唯一の被爆国として廃絶の理想論を持ち続け、国連など国際組織やNGOを活用しながら、単なる米国追随を卒業してパスクアメリカーナから多国主義への賢明な橋渡し役になる覚悟がなくてはならない。

◆核軍縮の年表、用語解説はこちらをご覧下さい。
http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-88c2.html

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