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2010年3月 9日 (火)

安保議論素通り

 毎日新聞は9日付1面トップに「安保議論素通り」という大見出し(昔はこういうのを「板活字見出し」といった)をぶつけてきた。まさにその通りで、当ブログも先週そのことを「普天間移転先乱舞」で言ったばかりだ。

 ただ、辺野古陸上案、うるま市の海上案などの政府(官房長官)案が、地元へは何の連絡、打診もなく進められているとは知らなかった。昨8日に名護市議会は「陸上案」に絶対反対の意見書を満場一致で可決し、沖縄県議会は先月24日に県外移設を求める意見書を決議している。

 前述のエントリーでは、4年後(国民新党の15年後案とは違う)に「常時駐留なき安保」を実現するという保証があれば暫定案受け入れもやむを得ない、ととられかねない書き方だったが、平野官房長官の、一般論として地方議会の決議に拘泥されないという沖縄無視発言を聞いて、あらためて沖縄県内暫定案に強く反対する方向に修正する。

 「安保議論素通り」……、実は当の毎日新聞もそうではないか。社説で「……北朝鮮の脅威がより深刻なのは自明である。膨れ上がる脅威のもとで、日本が米国の『核の傘』に頼るのは不合理でも矛盾でもない」(3/7付)としたり、防衛省幹部の「中国と台湾で紛争が起きれば、米海兵隊が急派される。それが在沖縄海兵隊の存在意義」という、アメリカでは軽視されている「意義」を紹介するだけで、みずからその反対意見を提起しようとする形跡はない。次のような、素人の素朴な質問に答えられるように、議論の素材を紙面で提供してもらいたいものだ。 

台湾有事
 台湾と中国の関係改善、アメリカの中国重視の姿勢から、かつての米・中緊張関係はない。オバマ大統領も「冷戦思考脱却」が方針だ。しかし、あり得ないことでも対処できるよう備えをするのは、軍事の常識。仮に、台湾独立戦争が起きたとしよう。

 アメリカは、一体どっちに味方するのだろう。日本もそうだ。昔なら共産国中国が敵だっただろう。ソ連もそうだが、「革命の輸出」ということがあり、「弾圧される日本人民を救うため」、という名目で攻撃されるかも知れなかった。

 しかし、そんなアホウなことを考える人が今でも実際にいるから困る。世界では、稀少種で一番多いのが日本だろう。アメリカにも進化を否定する伝統派が存在するのは事実だが、ソ連・中国に備えていた在日、在韓米軍は、ロードマップ見直しで大幅縮小の方向に再編が進んでいる。

 沖縄の海兵隊が任務とする敵前上陸を中国大陸、または台湾に対して行うには、安保条約の規定で日本と事前協議をする必要がある。日米密約で「朝鮮有事はのぞく」とあるから、中国の場合は日本から協議を申し入れることができるわけだ。

 その時日本は何と答えるだろうか。普通なら日本の安全に直接関係がない。むしろ米軍が沖縄から出撃するなら、沖縄は中国の攻撃目標になり、ミサイル攻撃を覚悟しなければならない。当然「おことわり」だ。もし日本の安全に関係ありとしてOKすれば、米軍を傭兵したと同じで憲法違反にもなる。

北朝鮮脅威
 密約により事前協議がいらないとされる北朝鮮向けでは、米海兵隊の存在が抑止力である、という説もある。これははっきり言うが、アメリカは北朝鮮に負けるし、北も勝てると思っているはずだ。北には、人口の5%といわれる訓練された100万の陸上兵力があり、また若者を総動員できる体制もある。

 いかに装備が違うと言っても、タリバンやベトナムより北の方が上だ。山岳地帯のトンネルに立てこもれば、万そこそこの海兵隊で歯が立つはずがない。アメリカは、自国の利害と無関係にそんな危険をおかすはずがない。ただし、日本の島が占領され、それを日米共同で奪還するというのならあり得るだろう。

 そもそも日本国土を守るのは自衛隊と役割分担が決まっており、米軍が抑止力というのは筋が通らない。韓国も防衛は韓国軍の指揮下に移ることになっており、アメリカは朝鮮有事に日本ほど重きを置いていない。

核の傘論
 核戦争に勝つためには、①核弾頭を多く備えている。②運搬手段が発達していて数も多い。③国土が広い。が必要条件として考えられる。①では米ソの数の競争で、両国だけで地球が破滅するほど作ってしまった。②も米ソ甲乙付けがたい。ただ開発費用はアメリカが豊富に出せた。③は発射基地や目標を分散できるということである。

 結局どう工夫してみても多く作りすぎ、使えない兵器であることがわかった。だから相互に制限する協議が始まり、核軍縮の筋道が作られ始めた。また南アやリビアのように費用対効果の面で所有をやめる国もでてきた。現に広島・長崎以来一度も使われたことがない。

 結局、「核の傘」は、米ソ対立時代に核競争で均衡均衡がもたらされた時代、どちらかの大きな傘に入っていれば核攻撃を受けない、という安心感が得られた頃のものだ。その後中国が遅れて保有国となったが①の点では米ソに対抗できず「先制攻撃はしない」というしばりを自分でつけた。また、インド、パキスタンは両国だけに通用する抑止力である。

 核の傘も、核廃絶に動き出した世界の潮流ら逆らう時代遅れの概念になっている。自分は核の傘にいて、北朝鮮の核実験は断固制裁、というのでは筋が通らないだろう。たしかに北も「傘」を一本持ったが、ぼろぼろの破れ傘である。

 一番いいのは、日・韓・北による東北アジア非核兵器地帯宣言である。そうすれば米・ロ・中の3本の傘を無償でさしてもらえる。しかし、前にエントリーした「核を手放せない北朝鮮」でも言ったとおり、北は、後継者擁立、韓国との対等合併の目途がつくまで破れ傘は捨てないだろう。

  

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コメント

鳩山由紀夫首相が考えている、殴りこみ部隊である海兵隊が抑止力というのは、余りにもアメリカ海兵隊の歴史を知らない妄言に限りなく近い日本政府の『願望』にしか過ぎないでしょう。
突然の武力侵攻をされた事を覚えている国々では、『海兵隊の抑止力』とは、『武力により威圧、恫喝』以外の何ものでもない。
それなら日本国憲法で何重にも禁止している種類の『軍事力の行使』『武力による紛争解決』になる。
海兵隊には日本から出て行ってもらうのが正しい。
実はアメリカ海兵隊も出て行きたがっているとの報道もあります。
現行合意の米政府代表ローレス元米国防副次官が鳩山政権が現行合意以外の選択をした場合には、米国は海兵隊の撤退を考える可能性もあると指摘。
また、元もとの計画である米軍再編に伴う在沖米海兵隊のグアム移転は第三海兵遠征軍司令部だけでは無く全ての部隊を含んでいたが、これを何とかしてひき止めようとしたのが自民党です。民主党政権は止めた方がアメリカには喜ばれる
航空機の無い100年も前の第一次世界大戦前の軍事常識でも紛争地の近くに大部隊を配置するのは挑発行為で危険であるとされていたのです。

投稿: 逝きし世の面影 | 2010年3月 9日 (火) 17時30分

逝きし世の面影 さま
 コメントありがとうございます。
 もう、兄の補強で言い尽くされています。
キャンベル次官補でさえスキを作ってくれているのに、日本の方が勝手な理屈をこねて引き留めている。そうして、思いやり、移転費、原状回復、共同研究、次世代新兵器などなどの名目をつけてはたかられている。
 まるで、暴力団とチンピラの関係ですね。

投稿: ましま | 2010年3月 9日 (火) 19時46分

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