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2010年3月16日 (火)

神武天皇

 一百七十九万二千四百七十余歳、これは中国伝来の漢文。やまとことばでは、「ももよろづとせあまりななそよろづとせあまりここのよろづとせあまりふたちとせあまりよほとせあまりななそとせあまり」と読むのです。

 神武即位から2600余年なんてなものではありません。神武の曾祖父ニニギの尊は、まだ原人すら現れていない時代に天から雲を押し分けて南九州の高千穂野峰に降り立ったのです。そうすると一代あたり60万年ですか。考えるだけでもバカバカしいですね。

 本塾では、津田左右吉史学のように、『日本書紀』が官僚のでっちあげ、捏造のかたまりではなく、なにがしかの史実を反映している可能性があるとする考えで、神武が全く架空の人物と断言しかねています。『日本書紀』は、味わって読むとなかなか面白いのです。

 神武東征は、軍隊を引きつれた日本で最初の戦争の物語です。最初に難波から生駒山を越えて大和に攻め入ろうとしたら、長髄彦(ながすねびこ)軍に反撃され、神武の兄・五瀬命(いつせのみこと)が矢を受けて戦死します。これが双方相対峙するもっとも戦争らしい戦争です。

 神武はその後正面攻撃でなく、遠回りして背後を突くことを考えます。それを漢文で「神策」と書き、「あやしきはかりごと」と読ませました。本当に「あやしい」のです。ここからは、呪術が中心の神がかり物語が多く、カラスとかトビなど動物か神か人か正体不明の活躍が目立ち、正攻法はほとんど消えてしまいます。

 さらに陰謀、知略、だまし討ちが中心で、無力な土着民を征服したり懐柔したりして足場をかため、また相手の内部分裂を画策したりします。最後に「神祇」という言葉を挙げておきましょう。これは「あまつやしろくにつやしろ」または「あまつかみくにつかみ」とも読み「天神地祇」と書くこともあります。

 天神は、神武の先祖、つまり「天が原」出身の一族で、通称「天孫属」の神々です。それに対して、地祇は、もともと地上の各地にいる神々で、その最大勢力は大国主命でしょう。いずれも神ですから、神武もそれらを怒らせてはなりません。ちゃんとお祀りし機嫌を損ねないようにしています。

 そうすると、神武らが土蜘蛛とかエミシ(蝦夷)などと呼ぶ種族、これらにも神がいるはずですが「地祇」に入るのでしょうか。神武や景行などは○○戸畔(とべ)と呼ばれる女酋長を何人も殺しています。彼女たちは多分巫女(ふじょ=みこ)だと思われますが、そっちの方の神はあまり気にしていないように思えます。

 そうすると土蜘蛛やエミシは縄文以来の先住民族で、天神地祇の系統は、水稲耕作や金属などを持ち込んだ弥生文化人なのでしょうか。しかし、時代がくだって660年(斉明5)には、「即ち船一隻と五色の綵帛(しみのきぬ)とを以て、彼の地の神を祭る」と『日本書紀』にあります。彼の地、つまり日本海沿岸の蝦夷地の神に敬意を表したのです。人種差別、神種差別かな?をなくした瞬間かも知れません。

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