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2010年2月 6日 (土)

書生と秘書

 これから書こうとしていることは、ご想像の通り昨5日こう留期限が切れて釈放された小沢民主党幹事長の元秘書らにヒントを得ている。テレビのワイドショウなどを見ていると、建設業者が秘書に渡したとされるおカネは「元秘書と小沢氏の間でア・ウンの呼吸があって」通じ合っていたのではないか、つまり「限りなく黒に近い灰色」といったしたり顔のコメントが行き交っている。

 私は、それはチョット違うのではないかと思う。小沢氏も元秘書も「不正なおカネは断じて受け取っていません」といいきる。よほど強い自信があるのだ。それならば、「不正でないカネなら受け取ったんですか」と混ぜっ返したくなるが、それはそれで真相は保留にしておこう。

 両者の間に「ア・ウンの呼吸」のもとの合意があったとすれば、証拠はないが共犯関係ということになる。それを否定しきれる両者の間柄とは何か、それは先生の身近で「書生」として修行し、その後「秘書」として仕えた間柄で、そのいずれも職業としての対等な雇用関係とは違う。

 「書生」というのは、明治のはじめ頃勉学目的で上京し、政府高官などの私邸に寄宿して来客の取次など家事の雑用をしながら出世の手がかりを得ようとした風習からきているのだろう。「書生論」など未熟を言い表す言葉は残ったが、寮などの完備で身分そのものは消えた。

 しかしこの場合は、徒弟というより家僕、草履取りに近いような秘書修行を言うようである。うろおぼえだが、田中・元首相が若き日の竹下登議員に「まだぞうきん掛けが足りない」などと叱咤したという。政治家の場合は多分これだろう。

 ひとかどの秘書、政治家になるためには、まず人が避けるキタナイことツライことを、いとわずにやれるようでなければならない。同時に先生に対する絶対服従の忠誠心もたたきこまれることになる。一口でいうと、雇用関係ではなく主従関係である。

 「秘書」という語感は、昭和の中頃まで西欧から来たビジネスライクな仕事というより、「美人秘書」などという表現があるように属人的印象をもって語られる傾向があった。優秀な秘書とは、主人が口に出さないことでもすばやくその意向を察知し、仕事がうまくいくように、たとえツライことキタナイことであってもいとわず、完璧を期してお膳立てをしておく。

 しかし、その一方で法規に触れること、反社会的なこと、名誉を損ずることは一切してはならない、というきついお達しもある。そこで秘書は、塀から足を踏み外さない、しっぽをつかまれないぎりぎりのところをかいくぐって手柄を立てなければならない。それが秘書の器量のあるなしを決めることになる。

 大金の現ナマ授受は、特に警戒が必要でそういった古典的手法が取られるとはちょっと考えられない。橋本元首相への日本歯科医師会からの料亭での授受などあったが、かえってしっぽをつかまれやすい場面をつくることになった。

 キタナイ不法なカネの授受には受取りがいらない。出金の証拠を残さないためには裏金が使われる。裏金の収支は、通常記録も残さない。従って裏金を管理する幹部は、往々にして公私の区別をせずポケットに入れる。これを知っている使用人も、受け取りのいらない裏金を掠めることになんら罪悪感を感じなくなる。

 もちろん関係者で山分けということもある。いずれにしても大金の現ナマ授受はヤバイ仕事である。裏切り、タレコミがない保障はない。だから秘書の仕事である資金集めに苦労しなくてもいい鳩山首相の秘書は、主人の名誉のために別な苦労を味わったようだ。

 カネと票は多いほどいいという主人がいれば、あらゆる知恵をしぼってアクロバット的な仕事をすることになるのだろう。もう一度ことわっておくが、これは小沢幹事長とか石川知裕議員らのことをいっているわけではない。

 つい最近まであった「書生」とか「秘書」の古めかしい印象を再現してみただけである。その観点で小沢政治資金問題を観察するなら、「限りなく黒に近い灰色」ではなく、「白とはほど遠い灰色」という印象になるということである。検察が真っ黒にできなようなら、いさぎよく白旗をあげざるを得まい。

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