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2010年2月 3日 (水)

米国防政策と新聞見出し

 米国防総省は1日、国防政策の指針となるオバマ政権で初めての「4年ごとの国防政策の見直し」(QDR)を発表した。これは、日本の各紙とも夕刊で報じられたが、今後の世界の安全・平和を見ていく上で欠くことのできない非常に大きなニュースである。

 同じ中味を報道するわけだが、3大紙の見出しを比べてみた(朝・読は電子版による)。
・米国防政策 対テロ重視に転換(毎日)
・在日米軍再編、世界戦略の一環に位置づけ
            米国防報告書(朝日)
・米国防計画、中国軍拡に深刻な懸念(読売)

 それぞれの新聞の性格がよく出ている。アメリカの世界戦略全体を表現した見出しは、毎日だけであった。1面トップで解説を含め紙面の半分以上費やし、予算教書の内容など関連記事で6面につないでいる。それにくらべ、他の2紙の見出しは日米、または米中日という狭い枠内でとらえようとしていることがわかる。

 アメリカの軍事力やヘゲモニーを、単に東アジア、日米同盟、普天間移転先というお家の事情にだけに矮小化してしまい、「アメリカは怒っている」キャンペーンに明け暮れすしたマスコミは、いまだにその先へ一歩も踏み出していない。

 日本にとって、基地移転先も北朝鮮拉致問題も政権の存亡をかけた大問題かも知れないが、アメリカにとってみれば無関心とまではいわないが、多くある諸懸案のひとつに過ぎない。日本が問題解決を図るには、世界全体の動きの中で、それをうまく利用しながら主体的に外交力努力を重ねることである。

 台湾問題を例にあげると、アメリカが台湾にミサイル防衛用のPAC3やヘリコプターの売却を決めた。しかしアメリカは、台湾から要望のあったF16戦闘機について売却を控えるなど、中国にそれなりの配慮をしている。

 中国もそれを知りながら、外交関係の正常化に支障をもたらしかねない強硬な姿勢で対抗している。双方とも関係悪化を懸念しながら、国内の強硬派に義理立てしなければならない事情があるからだ。この場合、日本は同盟国としてアメリカの代弁者として危機論に相乗りするのか、双方の緊張緩和に一役果たすのかが問われることになる。

 前者は、小泉首相から安倍首相と自民中心政権で受け継がれてきた。鳩山首相は、就任後の国連演説で外交問題を解決するために「かけはしとなる」という言葉を何度も繰り返した。目下、足下が定まらないためなにひとつ成果らしいものがないが、その理念には変化がなく、それが政権交代だと信じたい。

 ゲーツ米国防長官は、中東と東アジアでほぼ同時に発生する二つの大規模地域紛争に備える、という冷戦後の戦略を「時代遅れ」と切り捨てた。また、普天間移転問題なども含め、「今の我々の合い言葉は忍耐だ」と語っている。

 またアメリカの世論も、ニューヨーク・タイムズ紙が社説(1/28)で、普天間問題で強硬姿勢を続けてきた米政府を批判する記事を掲げるなど、決して一色ではない。このように、底流は明らかに変化しつつあるのだ。日本がアメリカの属国のようになっているのが日米双方の利益だと考える時代は、すでに去った。

 冒頭で、毎日新聞の報道姿勢を評価するようなことを書いたが、一夜明けて3日付朝刊では、「中国を強く警戒」とか「普天間、依然ネック」という大見出しの特集を記事にし、前日夕刊とのバランスを図ったようにも見える。 

 そして、社説では「アジアの変化に注目を」という見出しをかかげ、結語として次のようにいう。

 台湾への武器供給をめぐる米中摩擦も続いているが、米中が争ってはアジアは安定しない。G2とも呼ばれる両国の間で日本が関係を取り持つ選択肢があるのかどうか。QDRは日本の立ち位置や外交力、アジアの将来像も考えさせる。

  考え込むだけでは社説にならない。どうしてもう一歩踏み込めないのだろうか。オピニオン・リーダーの職務放棄でといわれても仕方がない。なお、同日付読売新聞の見出しは「重要性を増す日米同盟の強化」であった。
  

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