抑止力議論を表に出せ
30日付の毎日新聞(東京・朝刊)によると、鳩山首相が行った29日の施政方針演説で、日米同盟に関して原案に盛り込まれていた「抑止力」の語句が削除された経緯が報道された。それによると25日に首相官邸で開かれた基本政策閣僚委員会の結果らしい。その模様が簡単に伝えられている。
基本政策閣僚委には首相、社民党党首の福島瑞穂消費者担当相、国民新党代表の亀井静香金融・郵政担当相の与党3党党首らが出席した。席上、福島氏が「抑止力」の語句を外すよう要求し、民主党側は「東アジア共同体を日米関係より前にもってきており、(対米配慮から)日米同盟を評価する言葉として外せない」と反論。意見交換のほとんどがこのやり取りに費やされた結果、外すことになった。
それだけなのか、もっと安全保障の根幹に迫る議論が交わされたのか知るよしもない。当塾でもたびたび主張しているが、公開の場(国会、パネルディスカッション、論文なんでもいい)で、政治家同士の突っ込んだ議論になったのを聞いたことがない。
塾頭のひが目で見ると、民主・自民・公明は党内の意見統一がなされていず、ことに民主は党内対立の危険をはらんでおり、社・共は、非武装中立または日米同盟の否定、そして自衛隊違憲状態の原則論から抜け出せずに議論をさけているせいではないか。閣僚委でもその先に進めず、お茶を濁したことがうかがわれる。
当塾も不用意に「抑止力」という言葉を施政方針演説に入れることに反対である。それは「抑止力」の定義がなされておらず、現在までもっぱら米軍海兵隊や核の傘の存在、そして最近明らかになりつつある在日米軍の朝鮮半島進軍事前協議不要密約などを根拠としているからである。
この際、「抑止力」について国民的議論を巻き起こそうではないか。政治家もマスコミも「民意に従う」ことだけに没頭せず、オピニオンリーダーという言葉を思い起こしてほしい。安保50年の見直しの議論はそこから始まる。そう思いながら当塾の「抑止力観」を次ぎに述べておく。
第一に、自らの郷土は、外敵からの侵略に命がけで守る、という自覚と信念を共有するということである。例は悪いが、さきの戦争で「日本は本土決戦で竹槍を持っても米軍に立ち向かう」という傾向にあった。アメリカは、空前の人的被害をおそれ原爆投下の口実にしたのだ。これもひとつの抑止力である。また、自衛に無関心または事大主義から、植民地支配をほしいままにされた多くの過去の例も教訓にしなければならない。
第二に、憲法9条の厳格な遵守である。上述したように、これは自衛権の放棄を意味するものではない。日本が戦争を仕掛け、または侵攻してくることがないと外国が認めれば、その外国が好んで日本に攻めてくる理由がなくなる。これも抑止力となり得る。暴力装置を海外に持ち込まない限り、憲法違反にはならないと解釈すべきだ。
第三は、第一であげた理由により、日本を敵視(口先では北朝鮮)する国があれば、その軍事力からの防御に可能な装備を持つべきである。ノドンが不安なら迎撃ミサイルPAC3の増設やアメリカとの連携協力もあっていい。侵攻をふせぐための領域内制空権、制海権のための装備は、必要な範囲で充実させることだ。日本を攻めても損害が大きく効果が得られないと思わせるのが抑止力である。
このように「抑止力」には、先制攻撃・核兵器・海兵隊など外国攻撃用の「恫喝」に用いる「抑止力」と、9条に立脚した平和指向の「抑止力」に大きく分かれる。また前者は、歴史的価値観となった軍拡競争を再燃させ、後者は国連など「集団的安全保障」と軍縮につながる。
ここらから「抑止力」の仕分けをはじめたらどうだろう。
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コメント
社民党の福島瑞穂が普天間基地のグアムへの移転を主張しているのは日本のためとは考えられない。
福島瑞穂が決して語ることのない真の意図は、祖国・北朝鮮から遠くへ米軍を移し、抑止力及び祖国への軍事的な脅威を無くすことである。
北朝鮮とグアムの距離は、普天間との距離の2倍以上ある。
鳩山政権は連立なしでは、参議院で過半数を取れないという弱みに付け込んでいる。
鳩山政権とオバマ政権の間に亀裂が入っており、彼女は小躍りして喜んでいるだろう。
彼女の政策は、夫婦別姓、外国人参政権、生まない選択(少子化担当と矛盾)など、およそ日本人なら到底考えられない政策であるのが大きな特徴である。
投稿: 福島瑞穂の隠された意図 | 2010年2月 2日 (火) 11時31分
31日のサンディーモーニング、田原惣一朗が岡田外相に迫ったが、肝心の秘密協定問題はスルー、どうして海兵隊が抑止力になるのか、事前協議と憲法の問題、触れませんでした。体制派インタビュアーの*限界*というべきでしょう。
>自衛隊だけでも良い
そうですね、災害復旧などに陸上自衛隊は必要だが米陸軍はなくてもいい、ということになれば、誰かさんのように米第7艦隊があれば、ということななるかも知れませんね。
投稿: ましま | 2010年1月31日 (日) 13時00分
> この際、「抑止力」について国民的議論を巻き起こそうではないか。
賛成です。今の自衛隊だけでも良いという結論になるのが、いやだから議論がされないのかも。
投稿: カーク | 2010年1月31日 (日) 11時41分