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2010年1月21日 (木)

観念右翼

  「観念右翼」という言葉は、右派無所属代議士・平沼赳夫の義父で、東京裁判により終身禁固判決(講和前に病死)を受けた長老政治家・平沼騏一郎につけられた名である。彼は、昭和のはじめから政変や事件などのたびに、枢密院や司法畑での権力をバックとして歴史に顔を出した政治家である。 

 なぜ戦争が起きたか、ということは当塾にとって切り離せないテーマである。ことに昭和に入ってからは、軍部・政治・右翼の3勢力が微妙にからみ合いながらその底流をなしてきた。右翼といってもいろいろあり、一人一殺の井上日召のような在野の「行動右翼」に対して、政治に影響力を持つ「観念右翼」ということになったのだろう。そういえば、戦後「観念左翼」という言葉もあった。

 平沼騏一郎もバイプレーヤーとしてではなく、系統的に調べたいと思ってはいたが、どうにもつかみにくいのだ。思想の源流は、戊辰戦争以前の攘夷思想を出るようなものではなさそうだし、彼の思い入れとは逆に、元老・西園寺公望や天皇からは毛嫌いされ、なかなか首相になれなかったらしい。

 日独伊三国同盟は天皇の意志に反し、陸軍と駐独・駐伊大使が先走りしたことから始まった。その時の首相であった平沼は重大な責任を負っていたわけだが、彼自身の態度がどっちを向いているのかもうひとつはっきりしない。

 さらに、太平洋戦争末期には、近衛文麿と組んで東条首相引きおろしに一役買ったり、支持基盤であった陸軍皇道派を裏切って終戦に導いたりするなど、「右翼だからこう」といった単純な発想とは結びつかないのだ。

 一度は書いてみたいと思った彼のことだが、こういったしまりのないことしか書けないのに取り上げたたのは、kojitakenさんの「きまぐれな日々」《検察官僚・平沼騏一郎がぶっ壊した戦前の「政党政治」》から前々回の記事にリンクをいただき、アクセス数がふえたことにもよる。

 いずれ、平沼騏一郎論が書けるような材料があれば改めて書いてみたいが、多分義父の騏一郎がこうだから右翼新党を画策する平沼赳夫もこうだ、という結論にはならないだろう。また、そういった遺伝(もっとも血縁はないが)的因子に重きを置くのは私の趣味に合わない。

 ひとつ言えることは、平沼赳夫が事業仕分け人を務めた民主党の蓮舫参院議員について、「元々日本人じゃない」と発言し、次世代スーパーコンピューター開発費の仕分けで「世界一になる理由があるのか。2位では駄目なのか」と言ったことを問題視するようでは、次元の低い国粋主義と偏見・差別意識を露呈したに過ぎず、「観念右翼」どころか「ネット右翼」の域さえ出ないということを発見できたことである。

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