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2009年12月12日 (土)

米国とオバマの限界

 オバマ米大統領は12月11日、ノーベル平和賞受賞式で演説をした。その内容は、これまでの世界に向けた演説の中で最も言い訳がましく、格調を欠くものだった。マーチン・ルーサー・キングやガンジーの非暴力主義を評価しながら、「しかし」と次につなぐ。

 しかし国民を守り保護することを誓った国家のトップとして、彼らの例だけに導かれるわけにはいかない。私は現実の世界に対峙し、米国民に向けられた脅威の前で手をこまねくわけにいかない。誤解のないようにいえば、世界に悪は存在する。

  非暴力運動はヒトラーの軍隊を止められなかった。交渉では、アルカイダの指導者たちに武器を放棄させられない。時に武力が必要であるということは、皮肉ではない。人間の欠陥や理性の限界という歴史を認識することだ。

 ブッシュのそれと全く変わらない。イラク戦争の反省もない。増派を決定したアフガンにはアルカイダの指導者もいない。それどころか、タリバンとの和解や武器引き渡しを困難にし、新たな民間人殺傷の機会を増やそうとしているのだ。

 同じ1987年のノーベル平和賞受賞式で、アメリカの足もとで軍隊を廃止した中米コスタリカのオスカル・アリアス・サンチェス大統領は次のように演説した。

 平和は平和的手段でのみ達成できるのです。平和的手段とは、対話、理解、寛容、自由、そして民主主義です。……中米の将来は中米の手にまかせて欲しい。

 中南米の中では最も親米的で、米州機構の傘のもとにあるとはいえ、長年の中米各国に対する大国の干渉や内戦にさらされてきた同国が、暗にアメリカの「正義感」に懸念を示したともいえる。それに対してオバマの次の一句は、オバマとアメリカの一国主義を抜けきれない限界を示したものといえるだろう。

 第2次大戦後の安定をもたらしたのは国際機関や条約、宣言だけではない。いかに過ちを犯したとしても、その国民の血と力で60年以上にわたり、世界の安全保障を支えてきたのは米国なのだ。

(演説内容は共同通信および小出五郎『戦争する国、平和する国』による)

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コメント

このときの演説は、日本や世界の反応とは裏腹に、アメリカのメディアには好評だったようです。
こういう国の大統領ですから、彼も心の葛藤が耐えないでしょうね。

投稿: 金木犀 | 2009年12月14日 (月) 18時06分

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