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2009年11月19日 (木)

安保条約事前協議

 これまで何度か安保条約について書いて来ましたが、今回は60年安保の事前協議に関する交換公文(条約の付属文書)を確認しておくことにします。日本からの確認を求める書簡とその内容を確認するアメリカ側の文書双方があるわけですが、下記はアメリカ側の文書で、日本が確認を求めた内容をそのまま了解する形をとっています。

 色づけした部分が日本からの文書の内容で、そのうち茶色の部分が実質的内容です。

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 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

  合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。

 本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 本長官は、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解であることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

   千九百六十年一月十九日
    アメリカ合衆国国務長官
     クリスチャン・A・ハーター

  日本国総理大臣 岸信介閣下
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 安保条約第六条で、米軍が日本に基地をおくことを許される(「許される」ですよ!)条件としてふたつあげられています。それは、日本国の安全と、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するということです。

 ところがその前、第五条に「日本国の施政下にある領域」内における攻撃に対し、「自国の憲法上の規定及び手続きに従って」共同して対処することが定められています。そこで上の付属文書で第五条以外、つまりそれが極東の範囲内であろうとも、日本の基地を使って第三国に戦闘作戦行動を起こす際は、事前に協議の対象とするということになっています。

 もうすこしかみ砕いていうと、日本の領土、領海、領空で日本またはアメリカの基地、艦船が武力攻撃を受けたら共同して対処する、しかしそれ以外の目的でアメリカが基地を使って(例えば中国に)戦闘作戦行動を起こす場合は、事前協議が必要だということです。

 ところが、これまで事前協議は一度もされたことがありませんでした。核兵器を持ち込むとか持ち込まないとか、基地にミサイルを配置するとかの装備の変更、沖縄から海兵隊をイラクに向かわせるなどがあっても、条約や公文は抽象的で勝手に解釈され、また軍事機密優先で公にされません。

 そのほか、政権交代で暴かれようとしている「秘約」があります。核兵器もそうですが、上の協議事項には「朝鮮有事」は含まない、といったようなこともあるようです。つまり、言葉は悪いがほとんどアメリカのいうなりになってきたということです。

 条約があるから、交換公文があるからといって安心できません。どの戦争を見ても、いろいろなところに相談して、あるいは国連や国際間の手続きをすませてからなどという悠長なことはしていません。ことにブッシュ流の戦争への暴走は、世界に不信の種をまきました。

 現在、普天間基地移転問題が騒がれています。海兵隊の飛行場を普天間から名護市の沿岸に移そうということです。そもそも海兵隊とは外国に敵前上陸するなど「殴り込み部隊」といわれる機動部隊です。冷戦時、ソ連、中国、ベトナムなどに囲まれた日本は「極東の防波堤」とか「浮沈空母」などといって、アメリカとしての存在価値は高かったと思います。

 しかし、今となれば日本にいる海兵隊をどう使おうというのでしょうか。もちろん海兵隊の出動は上の協議事項に入ります。国内でも沖縄基地の縮小は日本の安全に脅威だとか、アメリカの機嫌を損ねるなどの意見がありますが、海兵隊の基地をどこに置くなど、もはやアメリカにとっては小さな問題です。

 また、日本にとっても海兵隊がいたからといって安全に寄与するという証明はありません。アメリカが計画通りの早期決着を主張するのは、保守的な議会への対策や予定変更に対する事務的な抵抗が強いというだけです。外交というのは一筋縄ではいきません。しかし紆余曲折があっても、自民外交に風穴をあけるには、今しかないと思います。

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