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2009年11月23日 (月)

密約暴露の先にくるもの

 日米安保条約改定や沖縄返還の際の4件の密約について、外務省の調査が進んでいる。もう文書などは見つかっているらしいが、有識者の第三者委員会とやらで検証し、来年1月に結果を公表するのだそうだ。そんなに膨大な量とは思えないがなぜ第三者委員会なのか、なぜ調べるのに1か月以上もかかるのかわからない。

 ワーキング・グループ(WG)大好きの民主党だが、公開されない密室検討会ならやめた方がいい。密約があったことはもう明白な事実なので、その先をどうするのか、WGは結論に対する党内反対論を封じ込めるためのおまじないに過ぎないのだろうか。普天間移転の結論を出すためのWGもその国際版だ。

 問題は、密約の存在を明らかにしたあと、佐藤首相以来引き継がれてきた「非核3原則」をどうするかだ。核兵器を持たず作らず持ち込ませず、の3原則をそのまま堅持するのなら、密約は破棄しなければならない。と同時にだまし続けた日本国民に対して、さらに佐藤栄作にノーベル平和賞を与えた選考委員会に対して、日本政府としての「お詫び」をしなければならない。賞金はどうするのだろう。

 外務省筋などでは、核兵器を積んだ軍艦の日本寄港は認めるが陸揚げは認めないとする2.5原則案、アメリカはすでに軍艦から装備をはずしていることを公にしているので、「情勢に大きな変化がない限り」という条件付き3原則案、核を積んだ軍艦入港の事前協議許可制などを模索しているらしい。いずれも密約より始末の悪い弥縫策で、恥の上塗りをするだけである。

 民主党マニフェストには、「核兵器廃絶の先頭に立ち、テロの脅威を除去する」という項目があり、その冒頭は「北東アジア地域の非核化をめざす」とある。ということは、3原則撤回、自民欺瞞政治の弥縫策は、取り得ない選択になるはずだ。

 オバマ大統領と廃絶に向けての協力も約束した。最善の策は「北東アジア非核兵器地帯宣言」である。北東アジア地域に存在する国は、日本、韓国、北朝鮮、中国、ロシアで、中国、ロシアは国際法上の核保有国である。すると非核宣言の範囲は日本と南北朝鮮3国ということになる。

 その宣言は条約化され、6カ国協議の構成国も直ちに条約に参加、批准することになるだろう。それは核保有国の米・ロ・中国は如何なる場合においてもこの地域への核攻撃をしないという保証を与えることにもなる。

 そういった非核兵器地帯宣言は、トラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約)をはじめ、世界で数カ所にのぼっているが、日本にはなぜかあまり詳しく紹介されていない。その実情は外務省のホームページで知ることができるのでご覧いただきたい。

 さて、この「北東アジア非核兵器地帯宣言」が実現すればどんなメリットがあるだろう。

【日本】①核持ち込み密約を破棄するだけで、どこの国(イスラエル、インドなどは参加しないかもしれないが)からも核攻撃を受ける心配がなくなる。②日米安保はそのままで、国の安全を損なうことにはならない。また日米間が緊密になっても摩擦の原因にはなることは考えられない。③域内加盟国相互の強力で超国家的査察機関が成立すれば、アジア共同体への第一歩にもなりうる。⑤拉致問題解決の糸口になるかも知れない。

【韓国】日本とほぼ同じで核の傘はなくなるが、傘の必要性もなくなる。そのほか南北統一への障害がひとつなくなる。

【中国】①6カ国協議を成功裡に終わらせることができ、議長としてのプライドが保てる。②北東アジアの安定が大いに改善し国内の不安要因がひとつ減る。③米・ロとともにテロ組織への核拡散の心配がなくなる。

【米国】①北朝鮮の核問題が一挙に解決し、アフガン、中東等他地域への対策に専念できる。②オバマ核廃絶政策、外交政策に力を与える。

【北朝鮮】①米国からの核攻撃がなくなることで核開発・管理が不要になる。したがってその費用も他に転用できる。②制裁解除や国交正常化で、経済状態が劇的に改善する。③開国の父・金日成の遺訓でもある朝鮮半島非核化が実現する。

 ロシアのことは書かなかったが、すべていいことづくめのように見える。だがそうはうまくいかない。以前にも書いたことがあるが、北朝鮮の最終目的は韓国との「対等合併」にある。これは金正日の代では実現しそうにないが、後継者にすこしでも高価な遺産をのこしておかなければならない。

 経済では到底太刀打ちできない。そこで「核」という大ダンビラが必要なのである。それは、アメリカと対等に交渉する、つまり韓国にはできないこともやってのけるという道具にも使える。それをむざむざ捨てるようなことはできないのだ。

 日韓を軽視し、6カ国協議参加にもったいをつけるのもその表れである。ということは、まず非核宣言は無理ということになるが、それを発案すれば、これまでの核開発をめぐる北の大義名分が消えてしまうおそれがあるということにもなる。金正日は必死で次の口実を探さなければならない。

 もうひとつ大難関がある。日本と朝鮮半島を一帯として考えることは、北朝鮮だけでなく韓国国民にも「日韓併合」の悪夢をよみがえらせることになる。これは歴史認識の差もあって、感情的な問題だけでは済まされない。日本からの発案には慎重を要する所以であり、日本は金正日以上に知恵を働かさなければならない。 

 以上は素人の憶測というより妄想に近いものである。日本やアメリカには冷戦思考や悪の枢軸思考から抜けきれていない人がいて、「とんでもない」といって反対する人がすくなくないと思う。是非そういった人たちのご高説も聞きたいものだ。

 

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コメント

此処に書かれている問題点のどれ一つも、今までの自民党では到底無理なものばかりですね。
自民党元幹事長の加藤紘一が冷戦終結で反共が目的の『自民党の使命は終わった』と言っていますが全く同感です。
消滅した超大国ソ連の後釜が貧乏たらしい北朝鮮ですが『北』では役者が小さく荷が重過ぎるし、肝心のアメリカに最早冷戦を続ける意思が無い。
オバマ来日時の演説でも『北朝鮮には十分な説明責任がある』としているが拉致犯の処罰も全員帰国もなしで今までの日本の要求とは程遠い内容で二階に上がって梯子を外された格好。

人類を絶滅する力がある核兵器とは維持管理するのに途方も無い注意と経費がかかるらしいですよ。
ところが半世紀の緊張状態が続いたので近頃はダラケ気味で台湾に核兵器の起爆装置を送ってみたり、B52が核兵器を搭載したままアメリカ本土を飛行する大失態が発覚する。
ですから、オバマが多すぎる核兵器を削減したいのは本気だと思います。今のままでは危険が大きすぎるし経費もかかりすぎる

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年11月24日 (火) 16時36分

コメントありがとうございます。
 >北朝鮮には十分な説明責任がある
……とオバマが言ったわけですが、自民のスタッフはそれを北にさせたくなかった。

 なぜなら、北の説明をそのまま留守家族にしたため、安倍にけんつくを食らわされ、嫌気がさして官房長官を辞任(表向きは年金未払い)したのが福田。

 そのあと、だれでしたっけ。めぐみさんの遺骨をDNA鑑定に出して、科学的に成り立たないレポートを真に受けて発表、国際的な大恥をかいた人。

 以来、北の説明というのは鬼門で、できればそおっとしておいて逃げたいのでしょう。その点、逃げのきかない韓国はさすがです。

投稿: ましま | 2009年11月24日 (火) 20時56分

朝鮮戦争の関係で駐韓米軍はずっと長い間、日本に駐留する米軍より多かったのですが冷戦終結以後に半減され首都ソウル近郊の米軍基地も撤収で、今では現状維持の駐日米軍の方が数が多くなる逆転現象が起こっている。
日本と違い、じかに北と直接対峙しているにもかかわらず駐留外国軍(米軍)縮小に成功した韓国政府のはたした役割を、今度は日本の鳩山民主党新政権が行えるのかどうか。
なにやら自民党とブッシュ政権の合意のままで進む可能性が出てきましたが、今後の普天間問題の行方が気がかりです。
殴りこみ専門で活動範囲が『世界中何処でも』であるアメリカ海兵隊ですが、幾ら軍人と言えども一年中戦争をしている機械ではなく人間なので休みの日には家族や友人たちと過ごしたい。
その他の3軍と違い海兵隊基地は基本的にアメリカ本土に置くのが一番良くて日本の普天間基地以外の海兵隊は本土にベースを持っている。
今の様に日本に展開する意味合いはないのですから、本土移設に繋がる可能性が高い岡田外務大臣の嘉手納移設案が結果的に一番妥当な解決策であると思います。
海外にある唯一の海兵隊基地(普天間)の米本土撤収は、東アジアの緊張緩和に対する大きなメッセージになりうるし、この地域の最後の冷戦構造の崩壊にも繋がるでしょう。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年11月25日 (水) 09時42分

わかているのが、鳩山、岡田、小沢あたりと有力外国識者。わかっていてもシラをきっているのがゲーツ、石破、一部マスコミ。わかっていないのがクリントン(女)、大衆、冷戦時代の石頭、ほとんどの国会議員……。

でしょうか?。

投稿: ましま | 2009年11月25日 (水) 12時02分

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