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2009年11月11日 (水)

纏向のロマン

 奈良盆地の東縁、山の辺の道を天理から桜井に南下する。行灯山古墳(崇神稜)から渋谷向山古墳(景行稜)の後円部に沿った小道を抜けると、急に視界が開ける。まず目に飛び込むのが絵に描いたような端正な姿の三輪山。右手には、平坦部の池に姿を浮かべる最古の巨大古墳・箸墓。香具山など飛鳥をへだてる三山の先は、遠くかすむ二上山(大坂山)と難波を隔てる生駒の山並みだ。

 足下に広がる田園風景、何の変哲もないようだがここが今日11日、卑弥呼の宮殿跡発見か、と報道されている纏向遺跡のあるところだ。近く下った所に国道169号線があり箸墓の方に伸びている。その道を車が往来していなければ、古代と同じ展望だろう。

 そして宮殿跡かといわれる今回の発掘現場は、JRローカル単線のひなぴた巻向駅ホームの端がわずかにかかる位置だ。三内丸山や吉野ヶ里のような怪しげな復元建物など建てず、柱跡そのままで保存するようにしてもらえないか。

 日本人の心の古里といわれる飛鳥の風景も悪くないが、左右と南を山が囲む箱庭のような狭さを感じる扇状地より、ここの広々とした展望が利くこの辺りの方が好きだ。歴史の上でもここと飛鳥では3世紀ほどの差があり、謎が多いといってもすっかり歴史時代に入った聖徳太子の時代と、神話の時代に半分足がかかったような卑弥呼の時代では、空想の世界の広さでも断然纏向を中心とする山の辺一帯の方に軍配があがる。

 新聞などでは、もっぱら邪馬台国はここか、九州かを興味の中心にしている。まあこれは、決着がつかない方がファンの楽しみが続くのでいいのだが……。私は、ここに根拠を置いた大和王朝が今に続いていることの方に関心がある。

 とはいっても、神武即位も、2600年も、万世一系も全然信じていない。ただ、その系譜にあることを理由に世界最長の皇統システムを維持し続け、独特の文化基盤・アイデンティティを残したことについては、その価値を認めざるを得ないのではないか。つまり、世界文化遺産としての価値である。

 大君は神にしませば水鳥の
 すだく水沼を京師(みやこ)となしつ

 『万葉集』で大伴御行は天武天皇の時代をこのようにうたっている。ただし、埋め立て工事を神の仕業にするなど、どこか揶揄したような気分もあって、戦前の戦争に駆り立てるための天皇神格視・絶対化ではない。長い歴史の中で、一般にこのような天皇観を強制したのは戦前・戦中に限られる。

 また、最近はやりの週刊誌皇室論も相当いびつなものを感じる。ここは、古事記や日本書紀全文をすなおに読んで、エロチックでエッチな天皇や粗暴な天皇、臆病な天皇、嫉妬深い天皇など、古代天皇をいろいろな角度でロマンチックな想像も交えながら考えてみたらどうだろう。  

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