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2009年11月20日 (金)

外交を動かす世論

 政権交代から3か月を過ぎようとしている。その変化を国民に印象づける試みは、ほぼ成功したと見ていいだろう。しかしさまざまな変化が、この先国民に迎えられるようなものになるかどうかは、はなはだ不透明というほかない。

 さまざまな変化が混乱を招き、閣内不一致や首相の指導力不足が露呈し、不景気が二番底に向かうようなことがあれば、内閣支持率は一挙に下降線をたどるだろう。問題は、自民党路線から抜け出した外交・安保政策でどれだけの成果が得られるかだ。

 日常の事務局レベルで行われる外交折衝ではなく、オバマ宣言にみられるような国家の体質に変化をもたらすような事案には、強い国内そして国際世論の支持が必要だ。またそれを定着させるためには、忍耐強い反対者への説得が必要で時間もかかる。

 アメリカの外交史家アーネスト・R・メイは、世論が外交政策に関心を持ち、それがどのように変化するかについて次のように述べている。『歴史の教訓』(進藤栄一・訳、岩波現代文庫)

 調査資料によれば、次のような常識的仮説の正しさが――すなわち、人々がある問題に関する意見を出す場合、自分独自の分析によることはほとんどないという仮説の正しさが――確認されている。実際彼らの意見は、自分たちが信頼を寄せている人々の判断から借用して作られている。

 国際問題に関する意見を指導していく人々は、通常少数者中の少数者で、それは、官僚や政治家、実業家、それにこれまで政府の仕事をした経験があり、要人と交際があり、数多くの出入国スタンプを押したパスポートを携行し、『ニューヨーク・タイムズ』とか『エコノミスト』のような定期刊行物を購読する習慣のある専門職業人(プロフェッショナル)たちである。

 ――つまり支配階層に属する人々――から成っている。

 わが塾頭は、飛行機はおろか最寄りの駅から電車に乗ることも月に一度あるかどうかの身分である。とても支配階層の仲間には入れない。支配者・被支配者という分類はあまり好きではないが、アメリカではそれがより顕著に見られるのであろう。  
    
 ルイによれば、画一的な外交政策を変化させる要因は、支配層の意見の分裂から始まるとする。それは、海外の暴動、革命、戦争などのショッキングな事件の影響や、支配層の一角を占める取材記者などがもたらす意見や情報によるだろう。

 さらに、世論が政治に寄生する実業家などと利害をともにする議員や、現状維持に固執する官僚を動かせるかどうかを見通すことにより、大統領の大きな指導力が発揮できるようになる。ルイの著作の最大の失敗は、ベトナムからの撤退をうながす世論の背景が「歴史の教訓」とはならず、予測がはずれたことにあった。

 それはともあれ、現在、日米ともに支配層の意見が割れている状態には違いない。ブッシュの過ちを繰りかえさせないようにするには、とかく戦争指向に傾きがちな政治勢力に対抗できる世論形成が必要だ。そのためには「被支配階層」としての最低限の海外情報、国際問題の知識、さらにはシビリアン・アウェアネス=文民の軍事知識がどうしても必要になってくる。

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