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2009年10月28日 (水)

宗教指導者と民主主義

 アフガニスタンの大統領選挙の決選投票が10日あと、11月7日に行われる。アメリカをはじめ関係各国は問題解決への第一歩としてこの選挙を注目している。そもそもこの決選投票は、さきの大統領選に大量の不正があったとされ、再調査の結果カルザイ現大統領の得票が過半数に達していなかったこと判明し、実施されるものである。

 全国の8割を支配しているといわれるタリバンの中でも、強硬派は前回同様選挙不参加を呼びかけるだろう。アフガニスタンの人は、今度もアメリカの傀儡政権を作るための選挙だからというより、こうして選ばれる政治家たちを全く信用していないからであろう。

 世俗の政治家は、権勢欲、汚職、腐敗がつきもので益より害が多いと思っている。いかに好意からであってもアメリカ式民主主義など迷惑千万なのではないか。それより宗教指導者による政治の方が善政がしかれると信じている人が多そうだ。

 人々に敬愛される宗教指導者であれば、それは絶対的になる。アメリカのお尋ね者オマル師が現在どれほど支持を保っているかわからない。しかし彼の指導下にあっ時代はイスラムの戒律には厳格だったが、平和で不正・腐敗もすくなくこんな苦労はしなくてすんだ、と思っているだろう。

 宗派が違い事情もことなるが、イスラム国のイランでも同様である。欧米傀儡の王制を倒してホメイニ師を熱狂的に迎えたエネルギーはいまだに生きている。アメリカが不倶戴天の適にしてしまったのはそれからである。欧米式民主主義だけが正義とする考えでは、永久にことは解決しないだろう。

 もう一人、宗教指導者をあげよう。チベットのダライ・ラマである。この指導者にも古来続いている政治指導の役割がある。中国共産党独裁の憲法から見れば、絶対受け入れられない思想である。ダライ・ラマは、独立を求めないということで妥協をはかろうとしているが、たとえ地方政府であろうと共産党の組織・仕組みを変えることは許されない。

 中国も欧米式民主主義のない国である。しかし、ダライ・ラマがいかにチベット人民の敬愛を受けていたとしても、彼を支援したりノーベル賞を与えたりするのは、欧米式民主主義のダブルスタンダードといわざるを得ない。

 さて、最後は戦前の日本。昭和3年に、現行憲法9条の根拠ともなるパリ不戦条約の批准の時の話である。原案に「人民の名において宣言する」とあるのにクレームがついた。「日本国の統治権は天皇にある、したがってこの部分は受け入れがたい」というものだ。

 一部議員の本音は「不戦条約など結びたくない」というものだったかも知れないが、結局この文言は日本において適用しないという付帯決議をつけて承認された。ちなみに「人民」という言葉は明治なかば頃までは普通に使われ「People」の訳語にもなっていた。今はすっかり追放され、すべて「国民」になってしまった。

 話をもどすと、戦前の天皇はどう見ても宗教指導者的地位にいたのだ。混乱なく戦争を終結させることができたのもその立場があればこそである。そして占領軍も敢えてそれを利用した。それが今の憲法である。したがって、厳密に観察すれば日本は、欧米式民主主義とはやや異質なのものといわざるを得ない。この先、この位置関係はもっと使えるのではないか。
 

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コメント

アフガンに対するアメリカン動きが良くわかりませんね。
たくさんの死傷者が出たアフガン大統領選挙があったのは8月で2ヶ月も前のことで、今頃もう一度選挙すると言っているが、アフガン市民には迷惑そのもの。
そもそも8月選挙はアメリカが言い出した事です。
本来は任期満了で何ヶ月も前にしなければならないが、米軍増派の完了する8月まで無理やりアメリカがアフガンの大統領選挙を延期させていた。
再選挙で半年以上も任期切れ大統領が居座る異常事態ですが、アメリカが言い出した戦争目的の『民主主義』にアメリカ自身が振り回されているのでしょうか。?

イスラム教でもアフガンで多数派のスンニ派はシーア派と違い聖職者の神格化、絶対化は教義上少ない。
チベットのダライラマとかイランのホメイニ師のような役割は無いようで、欧米マスコミの報道する『タリバン』とアフガン現地の『タリバン』にはニュアンスの違いどころか、根本的な認識の違いがあるようですよ。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年10月29日 (木) 11時46分

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