地獄極楽図
浄玻璃にあらはれにけり脇差を
差して女をいぢめるところ
飯の中ゆとろとろと上る炎見て
ほそき炎口のおどろくところ
赤き池にひとりぼつちま真裸の
をんな亡者の泣きゐるところ
いろいろの色の鬼ども集りて
蓮の華にゆびさすところ
人の世に嘘をつきけるもろもろの
亡者の舌を抜き居るところ
罪計に涙ながしてゐる亡者
つみを計れば巌より重き
にんげんは牛馬となり岩負ひて
牛頭馬頭どもの負ひ行くところ
をさな児の積みし小石を打くづし
紺いろの鬼見てゐるところ
もろもろは裸になれと衣剥ぐ
ひとりの婆の口赤きところ
白き華しろくかがやき赤き華
あかき光りを放ちゐるところ
ゐるものは皆ありがたき顔をして
雲ゆらゆらと下り来るところ
【明治三十九年作『斎藤茂吉歌集』】
地獄図は小学生の頃、大阪の四天王寺の庭で見た。息子は幼稚園卒園式の日、経営するお寺の庫裏から本堂に行く渡り廊下で見たという。30年、70年の昔のことである。強烈な印象がいつまでも抜けない。しかし、最近はとんとお目にかかることがない。
教育上好ましくないとされているのだろうか?。もっと好ましくない画像が携帯の中まで入ってきている。昨今、親殺し、子殺し、放火、詐欺。地獄志願者が多いのはこれを見ていないからではないか。
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