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2009年9月30日 (水)

続・遺跡発掘

 まず、いささか長い引用となるが、以下は拙著『海と周辺国に向き合う日本人の歴史』の冒頭書き出し部分である。

 宮城県上高森遺跡は、約七十万年前の石器が発見されたところとして有名になった。ところが、それは藤村新一東北旧石器文化研究所副理事長があらかじめ埋めておいた石器であることが発覚し、2000年十一月五日の毎日新聞に一面トップで報道された。その後同所副理事長が関与した遺跡は四十二カ所にのぼることがわかり、同県座散乱木(ざざらぎ)遺跡以来二十年間にわたる前期旧石器発見はすべて空中分解してしまった。

 これで国内で発見される石器は、確実性のある三、四万年前の旧石器という線からスタートの切り直しということになった。

 事件報道の十日前、私は同研究所の理事長である鎌田俊明氏のセミナーに参加をした。鎌田氏は、僧職で二カ所の幼稚園を経営する一方、NPO団体である同研究所を創設し、考古学の専門知識を生かして精力的な活動をされている篤志家である。

 同氏は東北地方の前期旧石器発見の概略を説明する中で、藤村氏のあいつぐ新発見に「神の手」という表現を用いていた。ということは、すでに「ある、いぶかしさ」が内部でささやかれていながら、アマチュアである新聞記者に指摘されるまで、身内を疑うことができなかったということである。

 それならば、他の学者のチェックがあってしかるべきだが、03年五月に発表された日本考古学会の最終報告によると「旧石器は旧石器、縄文は縄文という時代割り、東北は東北、関東は関東という地域割りの細分化された専門領域の谷間に落ちている研究者の現状を反映」しているのだという。

 これほどだとは思わなかったが、考古学に限らず、他の学会や官僚の世界に巣くう積年の病弊の現れで、もって他山の石とすべきであろう。

 なぜ引用したかというと、今日(9/30)、島根県出雲市多伎(たき)町の砂原遺跡で、約12万年前の前・中期旧石器を発見したという各紙の報道があったからである。

 これは、上記の03年におこなわれた後期旧石器時代以前の遺跡を全面的に否定してから、初めての《最古の石器》発見発表である。ただし、捏造事件発覚以前に発見されていた金取(かねどり)遺跡(岩手県遠野市、約9万年前)が、再調査の結果間違いなさそうだ、という判断をその後に得ているということはある(岩手日報)。

 毎日新聞が、捏造事件スクープの時は1面トップだったが、今回は24面の第2社会面4段抜きで、「慎重な意見も」というサブタイトルをつけるなど、慎重さが目立つ。これは捏造事件で受けた考古学会のショックがあまりにも大きく、マスコミにはくどいほどカッコ付きであることを強調するからであろう。

 しかし、事件を受けて発表前のフォローアップは万全を期しているはずだし、学会もマスコミも「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」になってはいないか。このことは、縄文時代以前に日本に人が住んでいた確たる証拠になる。

 その石器を作った人がネアンデルタール人か、新人(ホモサピエンス)か、あるいはそれらの混血なのか、さらにまた日本人の先祖としてつながるのか、それともいったん途絶えたあと、4万年ほど前大挙して渡ってきた新人なのか、大いに興味を引く問題である。やはり学者は元気のいい方がいい。

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» 12万年前の石器発見 [王様の耳はロバの耳]
国内最古、約12万年前の石器発見…出雲の砂原遺跡(読売新聞) - goo ニュース 出雲市の砂原遺跡で約12万年前の地層から石器20点が見つかったそうです。 {/usagi/} 出雲ですからこの石器を使っていた人たちは土着の日本人で大国主の尊達より前から住んでいたのかもしれません。 或いはネアンデルタール人の様に直接我々の先祖に繋がらない人たちなのか(日本は酸性土壌なので)人骨が発見されにくいのでよく分かりません。 {/hiyo_shock2/} 若い頃長野県の野尻湖の近くでは約2万年位前の石器が... [続きを読む]

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