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2009年7月20日 (月)

核の(やぶれ)傘

 アメリカの核の傘で北朝鮮の核攻撃から守られている、と思うおめでたい人が大勢いる。おそらく日本人の大部分と言ってもいいだろう。今のところ、やぶれ傘でどうにか間に合っているので「ない方がいい」とまでは言わないが、風の吹き方や傘の指し方によっては邪魔になる。

 この前、北朝鮮はテポドンを人工衛星だと言って日本上空を越え、数千キロ離れた太平洋上に打ち込んだ。日本政府は大騒ぎをして「爆破命令」をだした。もしコースをはずれて日本に落下するかも知れない、あるいは破片が飛んでくるかも知れないという口実だった。

 人工衛星やイージス艦の探査で、打ち上げ後直ちにコースがわかり、そのような危険物ではないことがわかる。弾道ミサイルだったとしても、もともとはアメリカを狙いとするものだ。日本を攻撃するならもっと安い1ランク下のノドンで充分。この前の大騒ぎは、アメリカ防衛のために日本が撃墜するMD(ミサイル防衛)システムの実地訓練だったとする説がある。

 一口で言えば、これは現在禁じられている「集団的自衛権行使」に当たる。つまり、北朝鮮の脅威を利用して、憲法解釈に風穴をあけるためのならし運転と思われても仕方がない。北朝鮮が彼らのいう「人工衛星」を打ち上げ、日本がそれを撃墜したら北の「自衛戦争のため」という口実が成り立つ。

 ただちに、200発はあるといわれるノドンを日本向けて打ちまくるだろう。「集団的自衛権」をいうのなら日本も立派な敵だ。核の傘のもとにある日本は果たして安全だろうか。アメリカはミサイル発射基地をピンポイント攻撃し、発射台は直ちに崩壊するだろう。しかし飛んでくるのは、そこからではなく、車台に積んだ移動式発射台や、山中の穴に隠した多数の発射台でいいノドンだ。

 これを沈黙させるまでに、日本は北の誘導技術不足なノドンの無差別爆撃で相当被害を受ける。その場合、なにも装着の難しい核弾頭でなくてもいいのだ。サリンのような生物・化学物質や放射能物質で充分。そこでアメリカの核の傘はどう働くのだろう。

 ありあまる核爆弾のじゅうたん爆撃?。それは絶対にない。死の灰は国境を越えて中国、ロシア、韓国を一瞬にして襲い、全面核戦争の誘因にもなりかねない。北の発射基地が国境に近いところにあるのは、それを意識しているからだとさえ思う。さらにアメリカは、原爆を日本で最初に使っただけでなく、2度目も使う不名誉を被ることになる。どこから見ても国益に反するのだ。

 結局、アメリカの核の傘はやぶれ傘というほかない。日米同盟はいいが、なにがあっても、ブッシュ流の先制攻撃だけはなしにしてほしい。イラクと違って、まっ先に被害を受けるのは、米軍が駐留する日本と韓国なのだ。また、すでに時効になったものは別として、非核3原則に密約があってもいい。何も抑止力となる軍事機密をさらけだす必要はない。

 さて、来月は選挙の年だ。防衛・外交方針で、「核の傘擁護論より、核軍縮(MDを含む)の推進」「単独主義的軍事行動より地域共同防衛の尊重」「憲法厳守・先制攻撃拒否」「日米同盟・地位協定、ガイドライン等の見直し、再検討」等を具体的に盛り込む党があるだろうか。

 ベルギーは、アメリカとの軍事同盟・NATOの一員でありながら、非核3原則に相当する議員立法の準備が進められている。同国内にはアメリカの戦術核兵器が配備されているが、成立すれば撤去を求めることになるだろう。また同じNATOのドイツ・フランスもイラク戦争でアメリカを支える有志国となることを拒否した。

 日本は、そこへ一歩でも近づきたい。アメリカはオバマの政策変更があるものの、中東・アフガンなど他の重要案件の見通しがつくまで日米関係に手をつけたくない心境であろう。民主党のマニフェストも将来を展望するには、どうやら不足のようだ。結局、政界再編で強力な指導者が出現するまで待たなければならないのだろうか。

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コメント

日本人が有効性が有ると信じている『核の傘』は、相互確証破壊(核に因る抑止戦略)の同盟国版の拡大抑止論のことですが、これは議論の初めから自国用の『相互確証破壊』より、いざという時に本当に役に立つのか立たないのか、数段信頼度が落ちるとされています。
ところが60年代にこの戦略の産みの親でもあり育ての親でもあったマクナマラ国防長官は、其の後この相互確証破壊を間違いであったとして有効性を否定している。

核の傘が、無駄で有るばかりでなく国家を危険に曝す事が判っているが、ところが一度動き出したら日本の無駄に大きい意味の無い公共事業と全く同じ理由で、誰も止められない。
オバマは20年前の学生時代から相互確証破壊(核の傘)の危険性や無駄使いについて学内誌に論文を書いている筋金入り。
此れが4月のプラハでのヒロシマの道義的責任や核廃絶演説に繋がっている。
多分マクナマラの論文を読んでいるのでしょう。
ところが日本の麻生太郎は漫画しか読めず間違ってもマクナマラ戦略論なんか読まないので核の傘の有効性を心底信じ切っていての、核の傘確認の親書(公表されていないが)をオバマに送ったらしい。
此れならホワイトハウスの異例の日本国首相に対する馬鹿にした非礼極る仕打ちも有る程度理解できる。
オバマは本気で麻生を嫌っているのですよ。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年7月20日 (月) 18時16分

逝きし世の面影さま

『相互確証破壊』……。むつかしい言葉ですね。
アソーさんにはとても無理でしょう。
アメリカはキャンベル国務次官補というような、ぐっとレベルを落とした調教師クラスの使いを日本に送ってきました。
それで首の根っこを抑えておけば、費用負担などなにかと使いみちがあると思われているのですね。
情けないことです。

投稿: ましま | 2009年7月20日 (月) 21時22分

アメリカ領にアメリカ軍の海兵隊基地を建設するのに日本が大金を出すという。
何故これほど日本人がアメリカを信頼しているのか不思議でならないがマキャヴェリの『君主論』のなかの言葉の、
『人間というものは、危害を加えられると信じた人から恩恵を受けると、恩恵を与えてくれた人に、より以上の恩義を感じるものだ』
と、いうのが有るが第二次世界大戦敗戦後のガリオア基金の成果なのでしょう。
アメリカは実に上手い金の使い方をするものです。
しかし君主論では、
『勝ちたくないと思う人は、せいぜい外国の支援軍を利用するといい』とか、
『他人の武器というものは、あなたの背中からずり落ちるか、重荷になるか、それともあなたが窮屈を我慢するか、いずれかになるものだ』というのも有るが何となく今の日米軍事同盟の事を言っているように思えますね。


投稿: 逝きし世の面影 | 2009年7月21日 (火) 16時46分

 私のは思いつきですが『君主論』がでてくるあたり、さすが年期が入ってますね。ヨーロッパの長い抗争の歴史から生まれたものって磨き上げられていてスゴい。

 中国でも生かし切れていないものの、その歴史の重みはあります。歴史の短いアメリカでさえ比較的敏感に反応する……。

 それにひきかえ、当時の人しか知らない余剰農産物にいまなお恩義を???。

投稿: ましま | 2009年7月21日 (火) 19時38分

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