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2009年7月28日 (火)

民主党・マニフェスト

不安な方向感覚
 7月27日発表された民主党の政権政策の感想を一口で言うとこういうことになる。ここでは「反戦塾」として、外交・安保を中心とするが、全体として腑に落ちない点もある。あげあしとりであるにしても、素人には素人の思考回路で考えることにしたい。

 まず、「国家戦略局」を新設するという。別にそれが悪いというわけではないが、政権を取ろうという政党なら、まっ先に掲げなければならないのが、国の向かう方向を示す「国家戦略」ではないか。あとで述べるが、外交・安保政策にはそれが欠け落ちている。

 次ぎに「歴史的転換」をいうが、それらはすべて「脱官僚」に集約されているように見える。「国家戦略局」新設を含む政策決定システムの改編から、不足財源の捻出まですべて「脱官僚」の大合唱である。これがなんとなく「郵政民営化反対勢力の一掃」の小泉選挙を思い出させてしまうのである。

 私は、基本的に官僚は政治家より政策にくわしく優秀であり、国民に対して公正公平な感覚を持っていると考えている。例えば、内閣法制局が打ち出した「集団的自衛権の権利はあるが行使は違憲」といった解釈を、自民党政治家が「不都合だから変えさせろ」といったようなことである。

 不正摘発や経済特権廃止は当然であるが、それを越えて官僚のやる気をなくするようなことまでやると日本の政治は成り立たなくなるし、結果として国民に被害を及ぼすようなことにもなる。さて本題の外交・安保政策である。

自民的改憲の否定
 マニフェストとは別建てだが、その文末に「国民の自由闊達な憲法論議を」と題して特記したものがある。その内容は目新しいものではないためか報道されていない。これこそまさに「国家戦略」の一部なので採録しておく。

「憲法とは公権力の行使を制限するために主権者が定める根本規範である」というのが近代立憲主義における憲法の定義です。決して一時の内閣が、その目指すべき社会像やみずからの重視する伝統・価値をうたったり、国民に道徳や義務を課すための規範ではありません。

民主党は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という現行憲法の原理は国民の確信によりしっかりと支えられていると考えており、これらを大切にしながら、真に立憲主義を確立し「憲法は国民とともにある」という観点から、現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを国民の皆さんに責任を持って提案していきます。(以下略)

 鳩山代表は、中曽根康弘会長の「新憲法制定議員同盟」の顧問になっている。この会は、現行憲法の改正ではなく「新憲法制定」を名乗っている。引用の最後の部分を見てもわかるように自民党の狙いとは全く違うことを公約にしている。鳩山代表は首相になっても、当然これにしばられる。

ユニラテラリズムかマルチラテラリズムか
 外交は、各論の最後に持ってきている。民主党にとって最も足をすくわれかねない、それだけに重要な項目と言わなければならない。これまでの自民党外交、特に日米安保条約が冷戦後新ガイドラインで変質を来たし、ブッシュ政権の元で従属国化した小泉外交とどこが違うか、それを明らかにすることがまっ先に必要である。

 それには、アメリカのオバマ大統領がブッシュのとったユニラテラリズム(単独行動主義)に決別を告げ、マルチラテラリズム(多国間主義)に転換したことをどう受け止めるか、日本の外交に生かしていくかの観点が欠かせない。

 日本自体はそのどちらをとるのか、また、米国についてさえいればいいというバイラテラリズム(2国間主義)からの脱却は、すでに安倍内閣当時から始まっているがまだ深い影を残したまま残っている。しかし、今回のマニフェストは、その基本的な立場「国家戦略」を避け、懸案事項の網羅だけに終わっている。

 「緊密で対等な日米関係」「アジア外交の強化」「北朝鮮への厳しい態度」「世界平和と核廃絶」、これだけでは、民主党の基本戦略が見えないために自民党との違いが出てこないだろう。一部で言われている、日米地位協定改定を「着手」から「提起」に後退させたなどというのは、どうでもいいことだ。

自民党との違いはどこ?
 相手のある外交問題で、具体的な手順や落としどころなどいちいち明記する必要はない。かといって、項目のタイトルに「東アジア共同体の構築をめざし……」という画期的な戦略目標を書いておきながらその説明が本文中になかったり、東アジア非核化をいいながら、核の傘や日米密約問題に言及がなかったりする。

 また、同日付けで発表された「民主党政策INDEX2009」に「自衛権は、これまでの個別的・集団的といった概念上の論議に拘泥せず、専守防衛の原則に基づき、わが国の平和と安全を直接に脅かす急迫不正の侵害を受けた場合に限って、憲法9条にのっとって行使することとし、それ以外では武力を行使しません」としている。

 これについて、アメリカとの同盟関係をどう調整するのか、例えばブッシュのとった先制攻撃論などをはっきり拒否できるのかどうか、また、地位協定以外に基地問題や防衛予算、通常兵器削減(軍縮)への言及がないことにも不満を感じた。
 

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コメント

>「歴史的転換」をいうが、それらはすべて「脱官僚」に集約されているように見える。

全く同感です。4年前の郵政選挙や、20年前の国鉄解体の為に仕掛けられた国労組合員叩きキャンペーンの時に感じたものと同じ種類の危惧を感じます。

>私は、基本的に官僚は政治家より政策にくわしく優秀であり、国民に対して公正公平な感覚を持っていると考えている。

これにも全く同感で、日本の官僚制度のお陰で、自民党政府がこれほどの無茶苦茶をしても未だに国家が破綻していないで辛うじてもっているのではないでしょうか。
ただこの話は、支持者があまり多くは有りませんね。
かなり見識の高い人でも『日本の最大の問題点は官僚制度』だと何の疑いも無く信じきっています。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年8月 3日 (月) 12時47分

ごく当たり前の常識をいうと異端みたいに言われる世の中って、なにか不健全な傾向があると思います。
逝きし世の面影さんが賛成の声を上げていただいたことで、一人じゃないんだなあ、とホッとします。
TBの街録などでこんな発言をすると編集の趣旨に反するといって没になるんでしょうね。
昔の巷のおじさんたちは、縁台でいっぱいやりながら自由奔放に意見を言い合い、それが結構的を射ていたように思います。

投稿: ましま | 2009年8月 3日 (月) 18時34分

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