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2009年6月17日 (水)

ヒトラーと民主主義

 第2次世界大戦を引き起こし、大量虐殺であまりにも悪名高いヒトラー。歴史に「もしも」はないが、彼の存在がなければ日本も大戦にまきこまれることがなかってかも知れない。彼は偏執狂なのかあるいは変人なのであろうか?。

 また、どうしてドイツ国民は彼を指導者にしてしまったのであろうか。彼については知っているようで知られていない面が多いように思う。前回の「ヒトラーと歴史教育」に続き、彼の生い立ちや思想遍歴を見てゆく。

 彼の生まれ育ったところは、オーストリア帝国である。当時の帝国内には9言語を話す16の主要な民族グループ、および5つの主な宗教が混在していた(Wikipedia)。その中で彼はドイツ民族グループにいたわけだが、長ずるにしたがって、自らの位置をたしかめる意味から民族問題を深く考えるようになったのであろう。

 「議会制民主主義」や「政党政治」などは、現在なお日本ではキャッチフレーズとして健在だが、ヨーロッパでは第一次大戦前、すでに日本も憲法で手本にしていた立憲君主制度の中で確立していたのだ。ヴィーンで職探しをしていた若きヒトラーがそれらをどう見ていたか。まず、マルクシズムについては『わが闘争』でこう書いている。

 マルクシズムというユダヤ教的学説は、自然の貴族主義的原理を拒否し、力と強さという永遠の優先権のかわりに、大衆の数とかれらの空虚な重さとをもってくる。マルクシズムはそのように人間における個人の価値を否定し、民族と人種の意義に異論をとなえ、それとともに人間性からその存立と文化の前提を奪いとってしまう。マルクシズムは宇宙の原理として人間が考えうるすへての秩序を終局に導く。

 マルクシズムとユダヤを並列に置いた発想は論理性に欠けた粗雑なものだが、個よりインターナショナルな連帯性に固執する点を共通項として見たのだろう。その前に、欧州人が伝統的に持つユダヤ人に対する嫌悪感も隠そうとはしていない。そうして、民主主義や議会についてはこう見ている。

 民主主義のこの発明は、最近になって真の恥辱にまで発展した特性、すなわちわれわれのいわゆる「指導者たち」の大部分の卑怯な特性に、最もぴったりと応ずるのだ。いくつかの重要なことをすべて実際に決定するばあいに、いわゆる大多数というスカートの影にかくれることができるのは、なんと幸福なことだろう。(中略)

 実際、一つだけ決して忘れてはならないことがある。すなわち多数は、このばあい、決して一人の人間の代理ができない、ということである。多数はいつも愚鈍の代表であるばかりでなく、卑怯の代表でもある。百人のバカものからは一人の賢人も生まれないが、同様に百人の卑怯ものからは、一つの豪胆な決断もでてこない。

 ここまで見てくると、日本の現在の万年野党とか、総理大臣を言っているのではないかと錯覚しかねない。おまけに、民主主義は無駄な時間を費やし手続きが厄介で、決してカッコよくない。たしかにヒトラーは真相の一面をついているのだ。

 それでも、それでもなお民主主義がいい理由は何なんだろうか。今こそじっくりと考えてみたいことだ。 

(前回までのヒトラーのシリーズは、カテゴリ「歴史」で見てください)

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コメント

民主主義の良い点は、ただ一つ、非効率であるいうことだけです。
今回の質問に対する解答は、過去の私の書き込みの中にあると思います。
いちいち、議論せねばならないということは、重大な決定、例えば、戦争開始を決意などということに非常に時間がかかります。
ヒトラーのいうようにマルクシズムをやれば、効率的ですが、戦争も簡単に始められます。ポーランド戦、独ソ戦も、ドイツから始めています。

ヒトラーは、日本のデモクラシーのことを西洋の良くない影響とかほざいていたと思います。
民主主義国の場合、外国との条約を締結する前に議会に諮らねばなりませんから、秘密外交というのはできませんが、ヒトラーやスターリンはしています(独ソ不可侵条約)。そして、秘密ですから、簡単に破られてしまうんです。中国と北朝鮮の間にも我々の知らない秘密条約が存在すると思います。

指導者が神のごとく全知全能であれば、独裁のほうが国民にとって幸せでしょう。ですが、独裁者のたった一つの判断ミスのツケをその国民は支払わねばなりません。フランス占領まではよかったですが、ソ連との戦争でヒトラーは失敗しました。

投稿: ツーラ | 2009年6月21日 (日) 01時24分

ヨーロッパには「ヒトラー学」みたいのがあると聞きますが、内情やどの程度権威があるのかわかりません。
いずれにしても、ネオナチが幅をきかしているなど、歴史的評価が定着したように思えない面が多々あります。
日本でもタブーを設けずいろいろ議論したほうがいいでしょうね。

投稿: ましま | 2009年6月21日 (日) 13時05分

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受信: 2009年6月18日 (木) 08時58分

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