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2009年4月 6日 (月)

ミサイル騒動顛末2

 北朝鮮の「飛翔体発射」から一夜明けた今日の朝刊は、社説をはじめ各面さらに記事がおどった。それに触れる前に昨日の記事に言葉足らずの点があるのでつけ加えておきたい。

■世論誘導と現場情報誤認は戦争勃発の前兆である。
 国民に危機感や相手国への敵意をあおり、偏狭なナショナリズムを背景に軍事費増大や戦争準備をねらうのは、ナチスのヒトラー総統、戦前の日本軍部から、アメリカのネオコンとブッシュ大統領まで一致しており、北の金正日また然りである。

 軍末端の誤認、誤情報、独断専行はしばしば戦争の導火線になった。日本の過去の戦争(本ブログのインデックス参照)の多くがそれにあたり、近い例ではアメリカのイラク進攻も「失態」として明らかにされている。また、民間誤爆や同士討ちなどもあり「人間だから過ちがあるのは当然」ではすまされない。

■人工衛星でも国連安保理へ。
 このたび、本塾が発射失敗による日本本土への影響が万が一にもないと思ったのは、北が国際機関に危険地域を指定して通告したり、自国民にはやばやと予告していたことは、失敗が絶対に許されないという背水の陣のもとで、イランの打ち上げ成功の実績も加えた自信に裏打ちされたものと見たからである。

 人工衛星であるかどうかは、北朝鮮の成功発表とアメリカの失敗発表で真っ向から対立している。今の段階ではどちらが正しいとも判断ができないが国際的には1週間以内に真偽がはっきりするだろう。仮に成功ならICBM(大陸間弾道ミサイル)に道を開き、アメリカにとって無視できない存在になってくる。

 今のところアメリカは全く迎撃すべき対象として見ていないが、衛星成功であれば逆に日本が危険視する対象ではなくなる。このように各国で微妙な立場の違いがあり安保理の強硬な新決議はまず不可能だろう。ただ、日本が「対話と圧力」つまり対話のテクニックとして必要な圧力に位置づけるのならわかる。

 ただし、制裁としての効果が限られていることはすでに先方に見透かされている。それより、福田内閣退陣により拉致再調査などの外交ルートが閉じたままで、相手が言う「平和目的の人工衛星」に対する問い合わせすらできないようでは困る。要するに独自の外交能力を持っていないということなのだ。

 拉致被害・救う会の国民運動が使うブルーリボンバッジは、多くの共感を得るためには必要だろう。しかし、外交に責任を持つ総理や外務大臣が、国際外交舞台の席までそれを着用して出席する姿は、見る人によっては逆効果にもなり得る。いかにも政治家としての資質に自信がないようで違和感を禁じ得ない。

●安保理付議で一致の社説。
 次ぎに今日の新聞からである。大手各紙の社説は多少の表現の違いはあるものの、安保理付議で一致している。かねて当塾でも言及しているがICBMと衛星打ち上げの技術は一緒である。人工衛星と称して兵器の実験をしたといわれても仕方ないだろう。
 
 しかし、人工衛星であろうとコンピュータの開発であろうと、当初は、軍事目的を意識して膨大な国家予算がつぎ込まれてきたことは事実である。原子力発電は原爆より前からあるわけではない。つまり新技術開発は、多かれ少なかれ兵器がからんでくることは常識である。

 宇宙条約であろうが、核拡散防止条約であろうが平和を掲げて作られた条約でありながら、小国、発展途上国に対するダブルスタンダードが依然として現存することについて、どう考え解決するのかに触れた社説はない。

 政治部主導の社説で、アメとムチのムチを強調すべきだという趣旨なら賛成できる部分が多い。しかし朝日新聞の「(北朝鮮の)暴挙に深い憤り」というオピニオンリーダーの矜持をかなぐり捨てたような表現はいただけない。このところ低くなっている朝日の評価も底に達した感じだ。

●いまだからこそ冷静に。
 このほか、毎日新聞の外電で、青瓦台(韓国大統領府)関係者の話として、今回の発射費用が3億ドル前後と推定され、この金額が米100万トン分に相当、北朝鮮の1年間の食糧難を解消できる分量、という報道が目をひいた。また、社会面には社説とことなる標題の「社会部社説?」がのっており当塾の意見に符合する部分が多いので以下に紹介する。

 東京・市ケ谷にある防衛省の運動場に、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)の発射機2台が、満開のサクラの向こうにそびえ立った。東北地方の陸上自衛隊駐屯地などでも発射機が射出口を上空に向けた姿やイージス艦の船影が連日テレビで流れた。「ちょっとやり過ぎだった。ここまで部隊の運用状況をさらしていいものか」。統合幕僚監部幹部はぼやいた。

 ここ数日、北朝鮮のミサイルを巡る問題は、自衛隊幹部も戸惑うほどニュース番組を独占した。 もちろん、日本人の危機管理意識が今回の騒動を機に高まったことは歓迎される。核などの大量破壊兵器開発を意図し、その運搬手段を手にしようとしている国を隣に持つことがどういうことか、国民は考え始めている。各自治体が緊急情報の速報システムを構築、点検し始めた。防衛省の「誤探知」事件も長い目で見れば、国民に素早く伝えることの難しさを同省自身が身をもって体験でき、教訓となっただろう。

 しかし98年に北朝鮮がテポドン1号を発射し東北地方の上空を越えて三陸沖に落ちたことで、国民の不安感は急激に高まり、MD(ミサイル防衛)システムは国会審議をあまりすることもなく、導入が決まった。今回の状況も当時と似ている。国民は「国際社会の意向を無視した北朝鮮」のイメージを極度に膨らまし、憎み、ミサイルを恐れ、何を求めるのか。

 開発途上のMDシステムにさらに予算をつけて万全を期することか。さらには「力には力を」の声が強まってくるのか。「いまだからこそ、冷静に」の声は、ほかならぬ防衛省内にも根強い。【滝野隆浩】

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反戦・軍縮」カテゴリの記事

コメント

基本的にましま塾長の判断は正しいのですが、少しだけ追加と訂正。
11年前の98年の騒動とも共通する問題ですが、人工衛星搭載の射程が3000キロ以上のテポドンは、たとえ爆弾が搭載されていたとしても日本の脅威では有りません。
日本と北朝鮮の距離は約1000キロ程度で、3000キロでは飛び越してしまう。
日本にとっての本当に脅威と成るのは射程が1千数百キロのノドンで、報道ではこれは移動式で百基以上を北朝鮮は実戦配備しているらしい。
それに、日本の遥か上の大気圏外の宇宙空間(高度一千キロ)には日本の主権は及ばず領空侵犯にはならない。
まあ。何となく頭の上を跳び越すイメージですから不愉快では有りますが。
矢張り北朝鮮問題の核心部分は核問題ではないでしょうか。?
今度の日本のマスコミなどの過熱報道は海外から見たらどの様に思われるでしょう。
麻生内閣の支持率や自民党の支持率が大きく改善しているとか。
今度の国際的に見て異常とも思われる過激な対応は海外向けではなく国内向け(総選挙対策?)ではないでしょうか。?

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年4月 6日 (月) 15時40分

テポドン2号が失敗して2段目かブースターが日本に落下する危険という宣伝に対し、人工衛星であれば日本通過時には大気圏外にあり相当のスピードもついているので危険視する対象ではないという意味で特に兄の意見と違いはないと思います。
北に備えるのであれば本当はノドンですよね。ぼちぼち一般にも知られ始めてきたけど。
テポドン騒ぎはアメリカ向けのICBM迎撃と無天井といわれる開発費分担でシーハー前駐日大使要請の線でしょう。

投稿: ましま | 2009年4月 6日 (月) 17時23分

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