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2009年3月10日 (火)

北朝鮮敵視社説に異議

 「他紙はともかく朝日新聞、毎日新聞までが、北朝鮮嫌悪、バッシングの雰囲気あふれる社説を書いている。中国やロシアが北朝鮮に理解ある態度を取ろうとしているのは、理の当然だ」という批判を、当の毎日新聞に堂々と披瀝した人がいる。

 拉致被害者一部帰国以来、わが国は北朝鮮不信、蔑視、制裁強硬論一色に覆われた。そしてそのような風潮を増幅するような報道はされても、水を差すような論調を新聞紙上に見いだすことはできなかった。それは、「拉致被害者家族の心情をさかなでするもの」という批判をおそれてのことと思われる。

 それをおして勇気ある論陣を張ったのは、元外交官で広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文である。問題としているのは、「同国が準備を進めているミサイル発射計画は、同国が主張する通信衛星打ち上げロケットであったにしても認められない」という、強い非難を込めた両紙の社説についてである。

 両紙は根拠として、安保理決議1718が北朝鮮に対して「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」停止を求めていることを上げる。しかし一方には「宇宙条約」があり、「すべての国がいかなる種類の差別もなく・・・自由に探査し及び利用することができる」のである。わが国をはじめ、各国は宇宙利用を当然の権利として享受していると指摘する。

 ロケット打ち上げとその制御がミサイル発射技術に共通するものであることは、否定しようがない。アメリカでも前回、「ごく小型の衛星を打ち上げようとして失敗した」という観測があった。同国が衛星打ち上げだといっているのに、一部の軍事筋が迎撃撃墜するなどといきまき、北朝鮮が、即宣戦布告で反撃すると反応するなど、平和にとって何の実利ももたらさないという考えである。

 ついでに、前にも触れたことがあるように記憶しているが、北朝鮮に関する私見をつけくわえておく。まず、北朝鮮は日本を戦争の重要な相手国と位置づけていた事である。現在、「えっ?戦争などしたことないよ」と思うだろう。

 しかし、金正日の父金日成は、朝鮮が日本の領土だった時代からソ連や国境山岳地帯を根拠とする対日バルチザンとして日本軍を相手に戦闘を続けてきた……(とされているが実は神話・伝説の類らしい)。その後ソ連軍の一員として終戦直前、日本軍掃討作戦に加わったことはあり得る。こういった金日成の生い立ちは同国存立の基礎に位置づけられている。

 したがって、日本との戦争は朝鮮戦争までずーっとつながっているのである。この戦争はアメリカ・韓国を相手に戦ったわけだが、米軍は日本の基地から発進しており、日本は後方支援・軍需物資供給を受け持って特需にわき戦後復興の基礎を築いた。そして、海上保安庁が米軍上陸作戦のため掃海任務を引き受け、戦死者まで出しているのだ。

 だから立派な戦争当事者といわなければならない。それならば、韓国各地に送り出したように工作員を潜入させたりスパイ工作に必要な人を拉致したりすることは、戦争行為として許されることになる。韓国もそのようなことをしていただろうから、日本のような反応は見られない。

 しかし、子供を含む拉致や工作船の不法行為など、国交回復をしていないとはいえ、戦闘行為がなくなってからもそれを続けていたことは合理化できない。その点について金正日は「詫び」を入れたのだ。これは同国のように首脳の権威で団結を維持させる国にとっては、よほどのことと思わなければならない。

 私は、北朝鮮の恫喝外交とか数ある不法行為を弁護する気は全くない。弱い犬ほどよく吠えるの類だ。本当は独裁体制を維持したまま、他国との交易や援助で国民生活の改善をはかりたいはずである。そこを見極めてやたらに制裁強化を叫ぶだけでなく、関係改善の糸口をさぐるべきである。

 その糸口を、米・中・ロは辛抱強くさぐっている。各国は日本の要望に無関心で妥協を急いでいるのではなく、解決に向けた外交テクニックに道を閉ざさないようにしているのである。これまでのようにアメリカに強硬策を頼むだけでは、拉致問題解決の前進をたぐりよせる手がかりにはならない。

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コメント

スターリンは北海道まで領土化し、オホーツク海を内海にしたかったようです。
金日成は極東ソ連軍戦車大隊大尉だったようですね。日本とずっと戦ってきたというのは朝鮮支配の正統性を国内むけ宣伝するためのでっち上げですね。韓国の李承晩も似たようなことを言っています。日本人は関係ありません。彼らの事情でやっていることです。
外国人のあなたが、肩入れする必要はないし、有害です。

戦争というものは、片方が国境を越えてから始まります。宣戦布告手続きは必ずしも必要ありません。そして、休戦協定の成立で終了します。戦闘行為がなくなったから、戦争が終わるのではなく、戦場にいる敵味方双方の野戦軍司令官が休戦を申し合わせることで終了します。現在の南北朝鮮は休戦協定以後、一応平和になりました。

そして、朝鮮戦争の場合、侵略したのは北朝鮮側です。つまり、陸軍の動員を先にかけ、南北の境界線を最初に突破したのは、朝鮮人民軍です。これは、歴史学的に決着がついていて、これについては左右の論争はありません。また、朝鮮戦争勃発時、日本は占領下で、独立国ではありませんので、日本と戦争していたというのは、どう考えても、理屈に合いません。言いがかりというやつですな。また、民間人を拉致することなどは戦争中でも許されない犯罪です。戦時国際法に違反しています。さらに北朝鮮の金正日が詫びたのは、目先の利益のためで、それ以上のものではないでしょう。結果として朝鮮が犯罪国家であることを自白することになってしまいました。

管理人さんは、どうも朝鮮の肩を持ちたいようだが、真に反戦家なのかと、こういう所見をみると疑ってしまいます。反戦を隠れみのして、共産主義を唱える輩は”未だに”一杯いますから。社会主義者の特徴は、国際法を守らないということです。ブルジョワの作ったものに従えるかということなんでしょうね。

投稿: ツーラ | 2009年3月11日 (水) 05時51分

>日本は占領下だから・・・
それならば、即アメリカで日本は敵地でしょう。

>北朝鮮の肩を持つ
向こうの言い分を聞いてやるぐらいの度量がなくて、どうして解決の糸口を見つけるのでしょうか。喧嘩ばかりしていたり戦争になったりでは拉致被害者救出は絶望です。

あなたは、国際法をよく言うが、国際法と国内法では性格が全く違います。国内法のように法整備がきちんとできているわけではないし、各国で都合のいいように解釈します。

厳密に言えば最近までのアメリカには最も国際法違反が多いのではないですか。

投稿: ましま | 2009年3月11日 (水) 09時55分

毎日新聞の社説を批判して意見を、其のまま自分の毎日新聞に掲載した編集方針には敬意を感じました。
なかなか普通(の新聞で)は出来そうで出来ないことですよ。
でも、この方針はエントリー記事の趣旨とは正反対の意見の、最初に掲載されているコメントでも明らかですが、ブログでは,これが当たり前。
しかしニュースの殆んどが真実なのかどうかの検証がなされていない脱北者による北報道(北朝鮮バッシング)が、マスコミの北朝鮮問題だった数年前なら考えられない事です。
北朝鮮が戦時体制を半世紀も維持しているのは異常で、その事で周辺国にも色々と迷惑をかけている。
しかし戦争は一国では出来ないので、北朝鮮一国にだけ100%の責任にするわけにもいかないし、特に半世紀前の朝鮮戦争の後始末をしていない原因は、今までは冷戦構造を維持したいアメリカの思惑が大きかった。

しかしミサイル問題は悩ましい問題ですね。
喧嘩が大好きな人物がスポーツだと言ってボクシングを習っているようなものです。
(喧嘩は違法で駄目だが、ボクシングは立派なスポーツ)
過去に殺人とか傷害とかの前科のある喧嘩早い人物が、真面目に一生懸命ボクシングを練習している。
周りが駄目だと簡単に言えるのか。いえないのか。悩ましい。
タイの女子刑務所の服役囚がボクシングの世界タイトルマッチに出場する為に刑務所内のリングで練習しているのをテレビニュースで見ましたが、あれは微笑ましい良い話でした。
この話とは一緒には出来ないでしょうが、北朝鮮問題の基本は朝鮮戦争の完全終結で有ると思っています。
戦争が終結していないから、今のような金正日の様な戦時下特有の軍事政権が続いているのではないでしょうか。?
戦争が完全終結すれば、軍事政権が存在る正当性も失われます。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年3月11日 (水) 10時12分

逝きし世の面影さま
おっしゃるとおりですね。宇宙開発であろうがコンピュータであろうが膨大な開発費に軍事目的がないとはいえません。

 しかし実際には、戦争に使われるのはごく稀でほとんど民生利用です。北朝鮮が純国産の軍用機を持っているなど聞いたことがありませんが、必要なら中古であっても他国から買うでしょう。

 同様に、メンツがどうのということがなくなれば衛星も他国のものを使うでしょう。しかし、核兵器とセットで考えれば、軍事目的と考えられても仕方ありません。

 核拡散防止条約にある、核保有国の核軍縮を劇的に進め、イスラエルなどかくれ保有国を公正に扱わない限りイランも北朝鮮も納得しないでしょう。

 それらの解決は、交渉以外にあり得ないということですね。オバマもそのことに気づいています。

投稿: ましま | 2009年3月11日 (水) 11時10分

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