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2009年2月27日 (金)

日本的民主主義

 終戦後、日本を支配した進駐軍は、日本人に対して盛んに民主主義を教え込もうとしました。その当時、「日本にだって聖徳太子の十七条の憲法というのがあるんだ。そんなのわかってらい!」という気分がありました。

 十七条の憲法は、第一条が「和をもって貴しとなし、さからうこと無きを宗となす(以下略)」、最後の十七条が「大事は独り断ずべからず。必ず衆とともに宜しく論ずべし(以下略)」です。推古12年といえば西暦604年、西欧的民主主義などまだない時代です。

 近代になっても、明治維新の際天皇が宣言した五カ条の御誓文の最初は、「一、広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ」です。そして明治初年から明治憲法ができるころまで活発な自由民権運動が日本を覆い、その憲法のもとという制約があるものの、大正デモクラシーが世を風靡したこともありました。

 ここに大学の政治学の教科書に使われた、『概説現代日本の政治』(阿部斉/新藤宗幸/川人貞史著)という本があります。その中で、民主主義の日本的特徴を次のように解説しています。

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 民主主義という政治の原理は、もともと欧米で発展したものであり、日本の民主主義の発展は、欧米の原理を受容したことから始まった。しかし、それは日本の民主主義が欧米の民主主義と同じであることを意味しない。日本の民主主義には、欧米の民主主義にはみられない日本的特徴がある。それはいかなる特徴であろうか。

 まず第一に、欧米の民主主義は個人を単位として社会を構成する原理であるが、日本では、社会は個人が構成するものであるよりは、むしろ自然に形成されるものである。日本で集団の原型とされるのは、家族と村落であり、いずれも自然に形成された第一次集団であって、その中では人々は和気藹々(わきあいあい)となごやかに生活を送るものとされる。

 他の組織はこうした第一次集団になぞらえてとらえられるのであり、国家もその例外ではない。集団の指導者に要求されるのは、親心をもって構成員に接することであり、構成員に要求されるのは、「みんなで仲良く」集団の和を保つことである。(中略)

 第二に、欧米の民主主義はあくまでも政治の原理であり、政治が対立と紛争に決着をつける機能を持つ以上、民主主義も喧嘩に決着をつけるという働きを持たざるをえない。「民主主義は頭数を勘定する方が頭を叩き割るよりはよいという原理に立っている」(カール・ベッカー)といわれる所以である。しかし日本の場合、国家も家族の擬制において理解されてきた以上(家族国家観)、国家はそもそも対立や紛争を含まない集団とされざるをえない。対立や紛争がなければ、政治も存在の余地がなく、要するに日本の国家は非政治的国家とならざるをえない。
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 以上、やや長い引用となりましたが「そんなことはないよ」と思われる方も多いでしょう。現に「ショウ・ザ・フラッグ」といって戦争協力を迫ったアメリカのネオコン・アーミテージ国務副長官にならったのかどうか、「郵政民営化に賛成か反対か!」と絶叫して選挙に刺客まで送り込んだ小泉元首相のやり方は、決して日本式とは言えそうにもありません。

 日本式は、島国であり農耕民族というところから来ているのでしょうか。つい最近までアメリカ一国主導のグローバリズムが世界を覆い、イスラムやアラブ諸国にアメリカ式民主主義を押し込もうとする動きがありました。しかし「神の前ではすべて平等」というイスラム式の民主主義は、他の宗教では見られないほど徹底したものです。

 かつて、森元首相が「日本は天皇中心の神の国」といって、たいへん評判を落としました。しかし、日本の民主主義は、上から与えられたものが多く、案外日本式民主主義の本質をついているのかも知れません。その弱点が戦前の天皇制ファシズムを生み、軍部独走を生んだといえましょう。

 しかし、引用文冒頭にもあるように、日本人は、先進文化を取り込むことを非常に得意とする一面があります。聖徳太子の憲法も、いち早く伝来文化の仏教や儒教に指針を求めました。戦前の教訓、戦後の文化から得たものを巧に取り入れるのが日本人です。

 ところが、戦前の超国家主義や幕末・明治にできた皇国史観に先祖帰りするのが日本人だと思っている人がいます。その人がどう考えようが、思想信条の自由は戦後獲得した立派な日本文化で、尊重されなければなりません。ただ、「日本人」の勝手解釈だけは迷惑千万だといえましょう。

 日本式民主主義と世界の民主主義の多様性をアピールし、さらに、アメリカのオバマ路線であるスマート・パワーとうまくフィットすれば、世界の平和構築に大きく寄与できる、こんな夢を持ちたいものですね。 

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コメント

少し前の新自由主義万能の時代に、日本の悪弊として終身雇用や年功序列賃金、系列や談合、護送船団の日本式経済が槍玉にあがっていた。
今では殆んど潰れてしまった日本独自の特徴ですが、でもこれ等はみんな、日本の家族主義的な日本型民主主義だったのかも知れません。
欧米式民主主義の敵対的な討論形式と多数決ではなく、時間はかかるが「みんなが納得する」日本独特の『根回し』と満場一致を最良とする日本の伝統的民主主義。
欧米式民主主義の単純な多数決には多くの弊害があるのは、今世界中で問題に成っている少数民族問題や宗教問題を見れば明らかですね。
アメリカスタンダードの新自由主義が世界恐慌を引き起こしつつある今、日本式の昔からの良さと限界をもう一度考えてみる時期にきているようです。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年2月28日 (土) 13時56分

コメントありがとうございます。

明日から3月ですね。すこしは世界が明るくなるといいのですが。

新自由主義がすこしも自由でない。アメリカ民主主義も本当の民が苦しむ。

 アメリカはけっこう弾力的な動きをするが、日本はいつも一回り遅れてついていく。こんなところは反省すべき点でしょうね。

投稿: ましま | 2009年2月28日 (土) 17時06分

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