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2009年1月26日 (月)

オバマは期待できるか

 オバマ大統領就任式は、空前のフィーバーぶりだった。それもアメリカ国内だけでなく、これまで敵視されていた国を含む世界の各地から期待のまなざしを受けての登場である。オバマが大統領に就任した翌日の21日から3日間、ギャラップ社が全米のおよそ1600人の有権者を対象に行った世論調査によると、オバマの大統領としての働きぶりを支持すると答えた人が68%、支持しないが12%、どちらともいえないが21%だったそうだ。

 この支持率を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだろうが、日本の細川内閣発足時が75%、小泉内閣85%(毎日新聞)と聞くと意外に少ないと思う人がほとんどではないか。日本の識者の間でもお国柄からして過剰な期待は無理という抑制した論調が目立つ。

 その一方で、黒人大統領の出現をもって、「チェンジ」「イエス・ウイ・キャン」がアメリカの体質にまで及ぶ、また、及ばさなければならないとする意見も依然として根強い。率直なところ、この68%という数字は、アメリカの保守性と現状打破願望を加味したリアリティーを持つ数字ではないか。

 私が注目するのは、南米ベネズエラのチャベス大統領である。かつてはアメリカの裏庭であった中南米は、今世紀に入ってすっかり「反米大陸」に変貌した。チャベスは、長年にわたるアメリカ資本のあくなき浸食と、それを代弁するアメリカ政府の露骨な政治干渉に反旗をひるがえした中南米反米左翼政権の代表格である。
 
 2006年の国連総会で、ブッシュ米大統領を名指しで、8回も「悪魔」と呼んで非難した。それは、中南米で歴代繰り返されたような、卑劣で欺瞞にみちた力の政策が、ブッシュにより中東を中心に繰り返されていると見たからだ。そのチャベスが、一抹の警戒を解かないものの、オバマの出現に対しては歓迎の意向を示した。

 イランなどイスラム圏でも、オバマの出現による関係改善に期待を寄せている。オバマの公約に善意を感じているからであろう。しかし、中南米にふえた左翼政権各国は、身近な存在であるだけにもっと複雑だ。これまであまり世界に知られてこなかったが、CIAの暗躍、アメリカ軍学校によるクーデター要員の組織的養成、腐敗・買収、政治テロの繰り返しは、目に余るものがあった。

 アメリカのアメとムチによる過酷な干渉と搾取は、開国以来のものといってもよく、きのうきょうに始まったことではない。その手練手管をすべて知り尽くしており、また不信感も骨の髄までしみこんでいるのが中南米諸国だ。そして、近いからこそアメリカの国民性や政略がよく見え、分析も的確になる。つまり、アメリカの政権交代で劇的に変化したなどという歴史がないということだ。

 そのチャベスが、オバマから何を感じ取ったのだろうか。やはり、アメリカに変化の兆しを見たのであろうか。ロビーイストを排除し、軍需会社や石油会社、あるいは農業資本などの献金をあてにせず、大衆の零細な寄付で膨大な選挙資金を集めたオバマ、そのオバマ流の変化を高く評価したのだろうか。

 仮にそうだとすると、本塾からもオバマに期待票を一票投じたい気持ちになる。

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コメント

佐藤優が『オバマは1920年代のムッソリーニに似ている』と物騒な発言をしていますね。
オバマ演説を読んでみると、殆んど具体的な事を言わずに国家、国民の団結を主張している部分は確かに似ています。
特に、『われわれはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、そして無神論者の国だ。』から、
ヒンズー(インド)の協力を取り付けて、いよいよ本格的にアフガン戦争をやると分析。それなら危険か。?
しかしそれ以外の識者の受け取り方は、仏教(日本)ではなくヒンズー(インド)を今後重視していくとの方針であるとか、他の二つを入れて三大宗教の一つ(仏教)を完全無視した、とかも有りそれぞれ色々解釈できて面白い。

私の解釈は少し違います。
一般のアメリカ人にはヒンズー教と仏教の違いが多分分らない。
日本が仏教国だと知っているかさえ怪しいし、日本の位置を正確に知っているアメリカ人は半分以下との説も有る。
ですからヒンズーを入れた理由にはたいした意味は無く世界の主要宗教を全部入れたとオバマ(アメリカ人)一般は思っている。
それより演説に『無神論者』を入れたことのほうが余程重要ではないでしょうか。?
日本では何でもない事柄ですが、アメリカでは今までに無い画期的な出来事ですよ。

投稿: 逝きし世の面影 | 2009年1月27日 (火) 10時46分

イスラム教から見れば、経典の民(イスラム・キリスト・ユダヤ)とヒンズーの2種類しかいっていませんね。

仏教を、儒教と同じで宗教と見てない可能性もあります。または日本人を無宗教の分類に入れたか?。

 アメリカ人に多いZEN(禅)への関心とあこがれ、あれは宗教ではなくヨガ体操としてでしょうか。

 ヒンズーに頭がいったのは、単にインドネシアにいたから……かも。いろいろ妄想するほどの価値はないのでは。

投稿: ましま | 2009年1月27日 (火) 13時09分

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