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2009年1月 2日 (金)

朝鮮・韓国 21

日露戦争
 前回述べたように日清戦争は明らかに失敗でした。なぜならば朝鮮を清から開放したのはいいが、清の弱体化でロシアの満州進出を許し、朝鮮宮廷も日本の行政改革要求をかわすのにロシアの力を利用しました。日本の安全確保に必要な「利益線」はむしろ後退したと見ていいでしょう。

 国内で、ロシアとはいずれ戦争を避けられないという空気が強くなったことは、自然の勢いかも知れません。しかし、兵力といい装備といい世界屈指の強国で、常識的には対抗できる相手ではありません。伊藤博文をはじめ、井上馨、山県有朋、大山巌など維新政府を支えてきた元老などには、なんとか衝突を回避したいと考えていました。

 一方で、主戦論の先頭に立ったのは、右派政治家と結びついた右翼団体、一部の東大教授、若手・中堅の軍人と官僚などであり、日清戦争後に高まってきた「愛国心」を支えに、「膺懲(ようちょう)」などちいう言葉が吉野作造から飛びだすなど、太平洋戦争前の構図の原型を見るような気がします。

 日本をそこまで追いやった原因はやはり朝鮮の不安定さが第一です。この祖国の惨状を見て、一般の朝鮮人の中から自主的な改革と独立を目指す運動も起きましたが、宮廷勢力からたちまち弾圧されてしまいました。日露間の交渉が行き詰まった翌1904年はじめには、ロシア、アメリカ、イギリス、イタリアなどの軍隊が京城に入るなど騒然とした状態におちいります。

 日清戦争と同じように、戦争の経緯は箇条書きにしました。

明治37年年表より(『20世紀年表』小学館・準拠)。

2.6 日本政府、日露国交断絶を宣言。
2.8 陸軍先遣部隊仁川に上陸開始。連合艦隊、旅順港外の露艦隊を攻撃。
2.10 日本、ロシアに宣戦布告
2.23 日韓議定書調印。日本は韓国皇室の安全ならびに領土保全を図り、軍事上の便宜を獲得。
2.24 第1次旅順港封鎖失敗。3.27 第2次封鎖失敗
5.1 陸軍第1軍が鴨緑江を越え、九連城を占領。
5.3 第3次旅順港封鎖実施。
5.5 陸軍第2軍が遼東半島上陸。
5.26 第1軍、金州を占領。日本側の死者4287人。旅順包囲を開始。第2軍は南山を占領。
5.30 大連を占領。
6.20 満州軍総司令部を編成、総司令官に大山巌参謀総長、総参謀長に児玉源太郎参謀総長山県有朋を任命。
8.10 露艦隊旅順を出撃し黄海で連合艦隊と海戦。露艦隊敗退、戦力の半数を失い旅順に逃げ込む。
8.19 乃木希典率いる第3軍、第1回旅順総攻撃、24日までに1万5860人の死傷者を出して失敗。
8.22 第1次日韓協約調印。韓国は日本推薦の外交・財政顧問を雇用。外交は日本政府と事前協議。
8.28 遼陽で開戦以来最大の会戦。9.4 一進一退の死闘の末占領。日本軍の死傷者2万3533人。
9.29 徴兵令改正公布。陸軍後備兵役を5年から10年に、補充兵役を3年間延長して12年4カ月に。
10.10 日露の大軍が沙河で会戦。
10.20 日本軍、弾薬不足で砲撃中止し、両軍対峙。日本軍の死傷者2万497人。
10.26 第2回旅順総攻撃失敗、31日までに死傷者3830人。
11.26 第3軍、第3回旅順総攻撃を開始。
12.5 203高地を占領、日本軍の死傷者1万6935人。旅順港内の露艦隊に砲撃開始。

 明けて明治38年。
1.1 旅順の露司令官ステッセル将軍、降伏。
1.28 竹島を島根県に編入。
3.1 奉天に向けて総攻撃開始。
3.20 日本軍勝利、日本側死傷者7万28人。
5.27 日本海海戦で露バルチック艦隊を破る。
6.8 米、ローズベルト大統領、日露講和会議を呼びかけ。
9.5 日露講和条約調印。

 この戦争による死者・廃疾者は11万8千人、死傷者にするとその約倍にのぼります。民間人の死傷者は不明ですが、その十分一にも満たないでしょう。現在のイラクでは米軍の死者がこれまでに4200人、イラク民間人はその10倍を越えても不思議ではありません。昔と今は逆ですね。

 日露戦争のような兵員消耗戦は、だんだん過去のものになりつつあります。しかし、それだけに新たな戦争は民間人に犠牲を強いるものとなるでしょう。日露戦争は、前述のようにそれまでになかったナショナリズムの昂揚と、その対極にある反戦の言論が公然と叫ばれた非常に示唆に富む時代でした。

 そして帝国主義的な野望を隠さない列強が、東アジアでどう覇権を争い合ったのか、それが後の時代にどんな影響をもたらしたのか、またそこから何を学ぶかについて、特に韓国をふくめ真摯な検討が必要な時期に来ていると思います。

一と足ふみて夫思ひ ふたあし国を思へども

三足ふたたび夫おもふ 女心に咎ありや
                   (大塚楠緒子) 

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