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2008年12月17日 (水)

核軍縮を輸出せよ

日本は変身できるのか

 世界の新潮流、アメリカ・オバマ大統領の出現などを前に、日本はこれから何をすべきかというテーマは、前回のエントリー「民主党の防衛政策」と同じである。空前の世界不況と麻生内閣の支持率凋落のなか、政治は解散含みの離合集散ばなしと小手先の財政措置に関心が集まるだけで、国民に訴えるものが何もない。

 自動車、電機といった日本の得意とする輸出産業が軒並み消費減退、リストラ、首切り、失業という暗いニュースばかりだ。そこでこれからの有望分野として、唯一の被爆国で平和憲法を持つわが国特産、核軍縮を輸出産業にしたらどうだろう。

 昨年10月、大統領候補としてオバマ氏は始めて「核前面廃絶」を政策として掲げる宣言をした。当時は、他の候補との差別化をねらった、などという観測報道が主だったが、オバマ氏は多くのアメリカ人に共感をもって迎えられるという自信に裏打ちされてのことだという。

北朝鮮が見た悪夢

 日本では、近い問題として北朝鮮の「核」がある。これをノドン・テポドンとセットにして脅威をあおり、片や拉致問題の膠着で制裁強化を叫んできたのが、小泉から安倍へと引き継がれた路線である。また、被害者家族会が脱退まで言いだした6カ国協議は、封印されたままオバマ就任まで持ち越されようとしている。

 6カ国協議が無能力状態になっているのは、米・朝の相互不信であるが、大もとは、悪の枢軸、ならず者国家などの表現を用い、テロ支援国家と北朝鮮などを名指ししたことによる。そして、そのような国には、先制攻撃(場合によれば核兵器を含め)をしてもいいというブッシュ・ドクトリンから発しているのである。

 イラク進攻は、国連の同意がないままそれを実行に移し、単なるおどしでないことを証明してしまった。北朝鮮も、なにかのきっかけでそうされる危険を感じただろう。もちろんアメリカの膨大な「核」がおどしであることは、北でも承知しているし対抗できるものではない。

 ブッシュ登場により冷戦後続いてきた核軍縮指向をストップさせ、戦術核兵器の開発や部分的核実験を復活させる動きにでて、世界に核大国として圧倒的優位を維持し続けることに専念した。だから核はこわいものと言い続け、信じさせておかなければならなくなる。

 しかし、相手がその手を使うならこっちも同じ手を使おうというのが北朝鮮の手口だ。まずテロ支援国家指定解除をして攻めてこない保障が得られることが第1、それから、査察をするならこちらも同じ査察するならともかく、イスラエル、インドは全く黙認、イラクがそうだったように隅から隅まで見て回ってスパイをし、それでなおかつ攻め込んだではないかというのが不信のもとだ。

 前置きが長くなったが、オバマが核兵器廃絶を目指すのは、「いい国」「悪い国」のダブルスタンダードではない、自国を含め世界をその方向に向かわせるのだ、ということになると局面は大きく変わってくる。

 北朝鮮にとってブッシュなら切れたカードがオバマには利かなくなるかも知れない。北朝鮮にとってこわいのは、世界から孤立し無視されることだろう。オバマが交渉相手として決して有利といえない由縁である。さて、ここでまた日本にもどろう。

核軍縮の先頭に立つ夢

 本塾ではこれまで、核開発、核兵器研究などに言及することさえ許されないという、いわゆる核アレルギー的反応を批判してきた。わが国は、世界唯一の被爆体験を持つ国であり、地震列島上に多くの原発をかかえ、放射能汚染対策にも一定の水準を維持している核先進国である。もはや核問題から逃げることは許されない。これを核軍縮や環境保護技術に生かさない手はないからである。

 わが国が核兵器を持つ必要はないが、そういった知識・経験が豊富にあることだけで、いつでも対抗できますよという隠然とした核抑止力になっているはずだ。また、これからオバマに協力して世界の核軍縮の先頭に立つことがあれば、ブッシュに協力するよりはるかに国際貢献になる。

日本進出のさきがけに

 天野之弥さん(61)という方がいる。外務省で軍縮不拡散・科学部長を経て、05年からウィーン国際機関代表部大使を努めた。この方は、ロシアの原潜解体や米国の宇宙開発など多くの現場に立ち会ってきた。また、ウクライナ・チェルノブイリ原発の現場を検証、事故炉は運転台のボタンが欠落、重要部品を使い回すという状態で、事故後も隣の原子炉が不安定で危険な運転を続けたため、先進7カ国(G7)原子力グループの議長として交渉にあたり、完全閉鎖を要求、00年に実現している。

 その外交経験と人柄に、日本政府が国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長候補に推挙した。核兵器の拡散を防ぎ、原子力の平和利用を促進するIAEAの使命は不変だ。核テロの脅威やエネルギー危機など「時代の変化に対応できる体制に」と説き、北朝鮮やイランの核問題に「力ずくでなく辛抱強く交渉を」と調整役に自信を示す。

 選出には理事国35カ国の3分の2の支持が求められ、来年秋の正式決定まで長く厳しい選挙戦が続く。唯一の被爆国、そして科学技術で最先端を行く日本を代表する思いはひときわ強く、「日本人は世界で活躍できると示したい」という。<この項、08/11/5毎日新聞より>

 核軍縮が軌道にのれば、核兵器解体をはじめ日本の核関連技術が立派な輸出産業として成り立つ可能性がある。環境立国とともに、その日の来ることを夢見たい。

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地に落ちたアメリカの威信 「靴で米打ちのめした」 イラク人、拘束記者を英雄扱い  【カイロ=井上道夫】イラクの首都バグダッドで記者会見中のブッシュ米大統領に靴を投げつけ、拘束されたイラク人記者について、「英雄」と称賛する声がイラク人の間で広がっている。 大物弁護士や政治家も記者を擁護する姿勢を打ち出した。 靴を投げたのは、エジプトの首都カイロを拠点とする衛星テレビ局アルバグダディヤのバグダッド通信員ムンタゼル記者(29)。 ブッシュ氏に「(米軍の攻撃で)親を失った子供たちからの贈り物だ」などと... [続きを読む]

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