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2008年12月 1日 (月)

朝鮮・韓国 11

 シリーズ10の最後で、西郷隆盛の「征韓論」といいましたが、最初は「道義に反する」といって反対していた隆盛らが積極的になります。その真意がどこにあったのか、いろいろな説があってまとめきれません。パスさせてください。経緯は次のように進みました。右大臣岩倉具視をはじめ大久保利通、木戸孝允、伊藤博文など政権幹部一行が欧米視察に出発し、留守中のことです。

 留守を守る西郷や板垣退助、江藤新平など武断派が中心になって、朝鮮派兵を三条太政大臣のもと閣議決定にまで持っていくことに成功しました。しかしそこへ帰国した岩倉右大臣、木戸孝允、大久保利通参議らは「今の日本にそんな消耗は許されない、まず国力をつけなければ」という意見です。辞職をちらつかせるなど、猛烈な巻き返し運動を展開しました。

 結局明治6年10月に征韓論はひっくり返され、西郷は田舎にひっこむことになるのですが、全く奇怪なことに、海軍卿の勝海舟はまったく知らされていなかったようです。次の勝海舟の談話は、25年もあとのことですが、それだけに真相を突いている部分があるかも知れません。

 今の伊東[祐亨]ネ。この間も来たから、話して笑ってやったのだが、アレが、軍艦に兵粮まで積み、すっかり用意をして朝鮮征伐に行こうというのだ。もう五、六日で行くというようになった。すると三条[実美]から、「お前は知っているか、どうだか、こういう訳だ」というから、『ナニ、私が海軍卿だから、安心して任せていらッしゃい』というてやった。

 それから、内へ五、六人呼んで、『お前達は、朝鮮征伐をやらかそうというそうだが、それは男らしくて面白い、お遣んなさい。だが、その跡はどうするのだ』と聞いてやると、みンな弱ってしまった。「それではどうしましょう」というから、『それよりまずシナから台湾の方へ行って見ろ』と命じてやった。

「それが出来さえすればありがたいが、どうでしょう」と言うから、『ナニ、己が許すのだから、構うものか、行け』と言った。その頃は、まだあの辺りへ行くことは出来なかったのだからネ。それでみンなが喜んで、行って、初めて外国を見て、驚いてしまって、朝鮮征伐は止んだよ。それから帰って来たから、みンな賞めてやって、官を上げてやった。すると、勝はどうひッくりかえるか知れぬというのて、大層嫌われて、己は引込んだよ。(巖本善治編『海舟座談』ワイド版岩波文庫)

 あとでも触れますが、富国強兵の明治新政権は、西欧先進国の実情や国際間のルールを学び取ることが第1で、他国への侵略・奪取など国際法に反するような行為はすべきでないという気持ちがあったことだけは確かのようです。明治政府が最初から侵略国家を目指していたという性悪説には、にわかに賛成しかねるのです。

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コメント

かねてより折りに触れ貴ブログを愛読してきた者ですが、
先だって塾頭様より御紹介いただくまで、こちらのシリーズ記事を見落としておりました。先だっての軽薄なコメント、何卒御容赦下さい。

非常に重厚なシリーズ記事の内容で、僭越ながら改めて塾頭様の広闊な知識と御見識に驚かされ、身の引き締まる思いです。全体的に納得のいくお話が多く貴重な勉強の機会とさせていただきました。ただ特に近代史のくだりで不肖の身にやや気になる箇所もあり、敢えていくつかコメントさせて頂きたいと思います。

まず明治政府の当初方針をめぐる今回のお話ですが、勝海舟の談話は例証としてどうかな・・・と疑問を感じます。勝海舟や元田永孚は日中朝の文字通り対等な連合を目指す立場で、江華島事件から日清戦争に至るまで、朝鮮や中国への内政干渉や軍事挑発に一貫して反対し続けましたが、そうした存在は明治政府の中ではむしろ異端の少数派でしょう。
明治外交の主流はあくまで大久保利通から伊藤博文、陸奥宗光らに至る、近代西欧化(ゆくゆくは列強帝国主義)路線で、そこに朝鮮を古代以来の蕃国として見下すような皇国主義的感覚が強く加わって拡張路線を後押ししたのだと理解しています。江華島事件後の日清交渉で日清修好条規違反を詰る李鴻章に対し、森有礼駐清公使は「修好条約など何の役にも立たず」、「(国家の大事は)只誰が、いずれが強いかと云うことによって決するもの」と啖呵を切ったといいます(芝原拓自『日本近代化の世界史的位置』)。私としては、こちらの方が当時の日本政府の外交政策を象徴するように感じます。

投稿: ちどり | 2013年4月 6日 (土) 18時03分

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