田母神と2・26連想
最初は「なんと軽率な」という程度にしか感じなかった。しかし、その後続報が入るにつけ、「これは2・26事件に似ているな」と思える点がいくつもでてきた。それは、田母神前空幕長が02年12月から04年8月まで、統合幕僚学校長を務めていたという報道がヒントである。
2・26事件の事実上の主導者は、陸軍皇道派で参謀次長から教育総監に転出した真崎甚三郎である。その前にも士官学校に長く、最後は校長を務めて皇国思想・天皇機関説排撃などを、若手にさんざんたたきこんでいた。
田母神も、空自幹部学校の機関誌に「航空自衛隊を元気にする10の提言」を執筆し、さかんに、日本は戦争で悪いことをしていない、むしろ数々の優れた施策をしてきたなどと、自衛官に国粋的優越感を持たせる提案をし、それに基づき統幕学校に「国家観・歴史観」の講義が開設されたという。
これは、なんとなく2・26事件の決起趣意書に見る、神権優越・国体発揚という発想と相通ずるものを感じてしまう。毎日新聞によると、田母神は「私の考えは理解されている」と2人の元首相の名を挙げ、防衛省幹部をあわてさせたとある。
元首相の一人は森喜朗氏で、同氏は幹事長時代「村山談話」のとりまとめにかかわったことがあり、森周辺からは否定的な声があがっていることを同紙は伝えるが、もう一人の首相名は伏せている。まあ、フツーの人なら言われなくてもわかるけどね。
これも2・26決行の青年将校が、軍の幹部や天皇ならわかってくれているはずだと信じていたことに似ている。結局、田母神は黒幕・真崎と青年将校を兼ねているように存在で、周辺に共鳴するような空気があったり、自らの上部組織を破壊する行為をしておきながら自説を曲げないというのもそっくり、やはり一種のクーデター未遂である。
明日、国会の防衛委員会で田母神の参考人質問があるようだが、文民統制無視や規律の乱れを議員から徹底追求して欲しい。2・26はこれで国がひっくり返ったのだ。内閣がひっくり返るだけのことは十分にある。
こういった隊員教育が組織的に行われ、それに何人かの学者やジャーナリストが講師として協力していたそうだが、そういった常連メンバーも大体見当がつく。それに対して公然と過ちを指摘し、論戦を挑む学者が見あたらないのはなぜか。あるいは、いてもマスコミが取り上げないのか。
2・26で敢然と直言批判を展開した河合栄治郎東大教授、朝日・毎日など大新聞の記事自粛を尻目に最後まで筆鋒鋭く迫った『時事新報』の存在こそ、今日、求められているのである。
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コメント
2・26事件当時の1930年代はアメリカ発の世界大恐慌の影響で不況の嵐がふき荒れていた。現在のアメリカ発の金融崩壊不況と経済情勢が酷似。
軍事情勢もダラダラ続く出口の見えない対中戦争と現在のダラダラ続く勝ち目の無い対テロ戦争との類似性。70年前との同一点は多いですね。
当時軍の類似行動(5・15事件)での甘い処分が結果的により重大な2・26事件を引き起こしたともいえる。
今回のような懲戒免職ではなく円満退職扱いでは必ず将来に禍の種を残すでしょう。
田母神論文を読んでみたんですが中学生程度のレベルで、別な意味で恐ろしさを感じました。
出来の悪い中学生が大量殺人兵器の使い方をを日々訓練しているんですよ。こんな恐ろしい事が他に有りますか。
『日本は正しかった』と言う田母神論文の主張が正しいとしてですよ、田母神史観は根本的に間違っていますね。
『正しい国(大日本帝国)』の『正しい軍隊(皇軍)』の行った『正しい戦争(大東亜戦争)』が、何故か正しくない国(連合国)に負けてしまい勝者による東京裁判(正しくない裁判)が行われた。(正しくない結果)
何であれ正しい者達が負けたままで、有耶無耶に済まして其のままで済む筈がない。
正義は幾等時間がかかろうと勝たねばならない。
正義が勝って物事は初めて治まる。
間違った結果(敗戦)は何十年かかろうとも正しい結果(戦争の勝利)になるように努力するべきです。
田母神史観が一欠けらの真実でも有るのなら、今からでも遅くない。
我々日本人もイラクやアフガニスタンを真似て占領軍に対する抵抗運動を続けるべきですね。
田母神氏のように軍事組織関係者は特にそうです。
今の日本が戦後63年間も戦争をしないで済んでいるのは悪い国(大日本帝国)の悪い戦争(大東亜戦争)が負けた(正しい結果)と納得したからで、狂気の田母神史観なら今でも戦争を続けるしか方法が有りません。
投稿: 逝きし世の面影 | 2008年11月10日 (月) 09時54分
■前空幕長問題 組織上の課題も検証必要-組織が判らなくなっている日本人?
こんにちは。田母神氏の行動について、報道している内容などみていると、多くの日本人の組織に対する認識がずれていることを感じます。特にマスコミのずれは激しいです。組織論的な立場からいえば、田母神氏の行動や発言に関して、右翼的的だとか左よりだとか、論文の内容の水準など全く「関係ねぇ!!」のです。組織には規律と序列があります。特に軍隊のものは厳しいです。組織にはきつい、ゆるいは別にして、その組織の中での序列、規律、禁忌(してはならないこと)があります。自由な日本国の一市民としては、誰もが自由に考え発言できますが、それが、特定の組織の序列や規律に反していたり、禁忌にあたるものであれば、その組織内では処罰されるし、はなはだしい場合は放逐されます。そうでなければ組織は崩壊します。田母神氏の今回の行動に関しては、旧大日本帝国の天皇が定めた「軍人勅諭(軍人の規範を定めたもの)」に照らし合わせても間違いです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
投稿: yutakarlson | 2008年11月10日 (月) 10時10分
逝きし世の面影 さま
昭和初期の世界恐慌や農業の荒廃、エロ・グロ・ナンセンス、田母神論文の前から気になっていた類似点ですが、マスコミなどの自主規制などと共にえがききれません。
いつものように、兄独特の切り口で補強していただきありがとうございました。
このさき、第2のローズベルトが現れるのか、ヒトラーが現れるのか、ガンジーが現れるのか、スターリンが現れるのか、毛沢東が現れるのか、チャーチルが現れるのか。
日本では、最高で能吏、現実にはスネ夫かノビ太程度の指導者しかいないので、がっかりです。
投稿: ましま | 2008年11月10日 (月) 11時33分
yutakarlson さま
TBありがとうございました。
ブログにお伺いしました。基本的な組織論ですね。サラリーマンをやっているとき、あまりにも自分と違う考え方を押しつけられ、給料は「我慢料」だと歯を食いしばったことがありました。
自分を政治家やジャーナリストや評論家と勘違いしているんですかね。それなら自衛隊などに入らなければよかったのに。
投稿: ましま | 2008年11月10日 (月) 11時46分