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2008年11月18日 (火)

反戦・護憲論の行く手10

しめくくりにかえて
 このシリーズも遂に10回を数えました。仮に1回から辛抱強く読んでいただいた方があるとすれば心から感謝します。と言うのは、護憲というと、自衛隊を肯定的に書くだけで反発される方が多いからです。地球上からあらゆる紛争がなくなり、戦争をする国がなくなれば、当然自衛隊はいりません。

 だからといって、それを夢見てるだけでは憲法を守れません。改憲の国民投票は、国会議員の3分の2で決まります。したがって3分の1を大きく上回る味方が必要です。現状で民主党を100%あてにできないとすれば、公明党はもとより自民党の一部まで味方に引き込む必要があります。

 そのためには現実を認め、そこから一歩ずつ歩を進めていかなければなりません。現実というのは世界そして日本のおかれている現実です。高い障害をもうけてそれを一挙に飛び越えろといっても無理です。私は護憲論者の結集も大事ですが、改憲論者に本当にそれが必要なのか、疑問を抱かせることが大事だと思います。

 2008_11090001 最近刊行された本で、フォーラム平和・人権・環境=編『平和基本法』というのがあります。執筆者は軍事専門家の前田哲男・平和学の児玉克哉・ピースボートの吉岡達也・憲法学の飯島滋明の各氏です。その前置きは私と全く同意見で、そのまま書き写しておきたいほどです。

 ところが後半は、そのために「平和基本法」作ろうという構成になっています。法案の内容は前置きとややちぐはぐな点があり、にわかに賛成できません。巻末に触れられていますが、構想が最初に生まれたのが1993年で、05年から執筆者4人で本格的な討論を始めたとあります。

 そのせいか、基本法に盛り込む原則としてはやや古すぎるのではないか、という点と、4人それぞれの立場を反映した主張がこなれないまま残っているように見えるからです。この「基本法」では、改憲派にとってやはり高いハードルになりはしないかと思うのです。「基本法」に盛り込む基本政策として次の8項目があげられています。

1.非核3原則 1967年 佐藤内閣
2.武器輸出3原則 1967年 佐藤内閣
3.宇宙の平和利用限定原則 1969年 国会決議
4.集団的自衛権の禁止 1972年 内閣法制局
5.攻撃的兵器と軍事戦略の不保持
6.文民統制および市民監視の徹底
7.非軍事的国際貢献の積極的推進
8.「人間の安全保障」の具体的展開

 以上、過去にとりあげられ現在につながっている護憲の精神を、これからも確固として維持・継続していくことは論を待ちません。私の立場は、自民党などの改憲提案に対しこちらも、9条補強改憲案を提案して対抗し、武器使用等の制限は別の法律で定めるというものです。

 それがあれば、安倍、小泉元首相が画策したような解釈改憲は、最小限度この先へ進めないようになり、憲法の規定に基づいて自衛隊の活動が別の立法で合法化されることになります。また、上の諸原則も時代や状況の変化にもとずき、柔軟に解釈することが許されるでしょう。

 これまでのエントリーで「武器輸出3原則」や「宇宙の平和利用」などについての私見を述べてきました。時代の変化により言葉の定義に変化が出たり、技術革新で予想外のことが起きたりすることは往々にしてあります。「基本法」にするということは、それを硬直化し、あれも駄目、これも駄目という自衛隊がもっとも嫌う法律になりがちです。

 さらに、基本法などの恒久立法を持ち出すと、改憲論者はこれを利用して解釈改憲にお墨付きを与えるような対抗案を考えるかも知れません。これならば過半数の賛成でいいことになります。また、非核3原則の「持ち込ませず」など、日米間の密約があるとかないとかで、事実上空文化している既成事実まで合法化してしまうおそれがあります。

 これからの問題として、専守防衛の範囲や国際貢献のありかたなど、個別法に関するアイディアがないわけではありません。しかし、カンボジアやチモール、イラク、アフガンなど、あまりにも事情が違いすぎます。基本法や恒久法でひとつにくくるというのは無理があります。またこれからどんな事態が起きるかも知れません。よほど叡知を絞って考える必要があります。

 護憲・反戦論の行く手を決めるためには、強い意志と柔軟性、そしてチャンスを生かす順応性が必要だということを結論に、ひとまずこのシリーズを終わらせたいと思います。最後まで見ていただきありがとうございました。また、ご意見は、明日の飼料として大いに歓迎いたします。

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コメント

武器を持たなければ誰も襲ってこないほど人類の社会は安全ではなく、常に武器を構えていなければならないほど人類の社会は危険ではない。その意味で
「護憲・反戦論の行く手を決めるためには、強い意志と柔軟性、そしてチャンスを生かす順応性が必要」であり、人権を守る不断の努力と同じ努力が必要なのだと思います。
お疲れ様でした。

投稿: 飯大蔵 | 2008年11月18日 (火) 18時55分

飯大蔵 さま
 コメントありがとうございます。
 すこし大上段に構えすぎたかな、という気持ちです。一昨年の今頃は安倍「美しい国へ」路線ばく進中で、こんな余裕はとてもなかった。周辺状況の変化も大きいですね。
 日記は毎日、2年に一度ぐらいの「まとめ」をしておかないと、どうも落ち着かなくて、というより不安になって、かな……。
 まあ、今後ともよろしく。

投稿: ましま | 2008年11月18日 (火) 20時38分

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