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2008年9月18日 (木)

アメリカからの距離

 リーマン・ブラザーズ証券破産の報道を発端とする株式市場の大混乱が続いている。経済を論ずる器量は全くないが、私は大地震のあとのように、しばらく余震が続き、いずれはあるべき位置に収斂していくだろうと思っている。

 過去の記事で、上昇を続ける原油価格についても、やがては下落が始まり現在の需給を反映した価格になるだろうということを書いた。この春から夏にかけて、原油はあがり続けると言っていた論者は、100ドルを切った現状をどう見ているのだろうか。

 原油については、考えにそれなりの定量的観測があったが、株式については、日本経済がすでに向米一辺倒を抜け出し、アメリカとのつきあいに一定の距離をおいていたこと、もう一つは急成長の魅力がないと見越した海外投資家の日本離れ現象があり、すでに他国にくらべても割安な水準にきている、という二つの感触からである。

 リーマンに対する日本の金融機関からの投融資額が、損害を内部処理しきれないような額ではなく、不良ファンドの組み入れも1~2%程度ということのようだし、最大の懸念材料だった保険会社AIGの危機も、当局による緊急融資でとりあえず日本への波及は限定的になるようだ。

 日本はすでに土地バブルの崩壊による金融危機の経験を持っており、その教訓もある。各金融機関の政策は知らないが、アメリカの投資金融や信用格付けの不透明性などから、あらかじめなにがしかの距離を置いていたのではないか。

 製造業などではアメリカに片足をかけながらも、中国、東南アジア、EUまた最近はロシアにまで目を向けた展開をしている。日本経済は、すでにアメリカの一極支配から脱出している。また同時に一国依存が危険であり、この先多極化しなければならないことも自明の理として受け入れられている。

 このように、各国との経済的・政治的距離をはかりながら最善を尽くすということこそ、外交・安全保障の真骨頂でなければならないのだ。ところが小泉外交はこの潮流に背を向けたものだった。好んで(としか思えない)中国など隣邦の反感に火をつけ、アメリカのイラク政策や世界軍事戦略にすり寄って歓心を買うことに専念した。

 この流儀は福田内閣で修正が試みられたものの、まだ水面下でその復活を目論むすくなくない政治家がいる。麻生自民党総裁候補は、日・米・中の関係は正三角形でなく、よくても二等辺三角形だ、といった表現をした。

 つまり、最初から距離を決めてかかった柔軟性を欠く外交を目指しているということにつながる。その姿勢は、戦後の日本外交を引き継ぐというより、明らかに後退させているようにも見える。吉田外交、岸外交、田中外交などとくらべてみても明らかに国益を損じているとしか言いようがない。

 総裁選での議論はもとより、各党政治家のホームページなどを見ても、この点はまことにお粗末だ。せめて民間の世界戦略並みに、「各国間の距離をはかりながら」外交・安全保障問題に最善をつくす議論からまずはじめてもらいたい。

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投稿: ましま | 2008年9月19日 (金) 13時38分

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