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2008年8月23日 (土)

漂流する安保11

 前回、ソ連崩壊により全く背景が変わったにもかかわらず、冷戦の落とし子である岸安保の条文をそのままにして、アメリカ主導のナイ・リポートの線で「新・ガイドライン」に安保体制をすりかえてしまった橋本安保の話をした。

 もちろん、そのままでは自衛隊や海上保安庁の行動が憲法違反になりかねない。また、法の不備で実際の安保活動に支障をきたすおそれがある。そこで、苦し紛れの「特例法」や「特措法」を続発させることになった。周辺事態法などというのがそれである。

 リチャード・アーミテージ米国防副長官といえば、イラク開戦の際にパキスタンに「協力しないと石器時代にもどす」とか、日本に「ショウ・ザ・フラッグ」と言ったとか言わなかったかとか問題にされた元軍人であるが、果たせるかな2000年に「アーミテージ・レポート」を作成、日本の有事法制の整備を要求してきている。

 そういった中、「日本は天皇中心の神の国」という問題発言などで人気のなかった森首相のあとを小泉内閣が継いだ。小泉安保橋本安保の延長線上にあるが、明らかな違いがある。それは、アメリカの9.11同時多発テロの発生により、ブッシュ大統領のテロとの戦争にいち早く加担、海外派兵に筋道をつけたことと、改革開放と郵政民営化を旗印に衆院解散を行い、劇場型選挙で3分の2の与党勢力を確保し強力な地歩を手にいれたことである。

 その中で、アメリカの世界戦略である米軍再編計画に基づき、日米共同作戦実現を目指す基地再編計画(ロードマップ)に合意、自衛隊との一体化をより進めることになった。国民保護法など懸案事項の有事法制もそれまでに日の目を見た。

 安倍内閣はさらに最後の仕上げに取りかかろうとした。「美しい国へ」という教育改革を含む復古路線である。長らく違憲とされてきた「集団的自衛権行使」の解禁も画策したが、功を急ぎたかったのか07年参院選の争点に改憲をかかげ、国民投票法案も成立させた。

 ところが、参院選は生活重視を掲げた民主党に惨敗し、与党議席は過半数を割った。さらに閣僚などの不祥事や自身の健康問題で2か月後には辞任に追い込まれた。後を受けたのが福田内閣である。参院のねじれ現象を前に、小泉・安倍路線の見直しを進めたものの、これまでのような強行突破はできなくなった。

 また、外交でもアジア重視で小泉首相時代の靖国参拝による中国との軋轢はほとんど解消するに至った。就任以来1年を経過し、本来なら福田色を鮮明にしなければならない時期である。しかし支持率のあがらないまま、おそくとも来年には衆院を解散しなければならない。

 小泉安保は安倍退陣でブレーキがかかったようには見えるが、「福田安保」といわれるような政策転換ができるだろうか。内閣改造では安倍を支えた麻生を幹事長に起用し、これまで何度も外相を経験して安保の手あかがついた高村を留任させるなど、政局優先の人事しかできない基盤の弱さからほぼ絶望的と言ってもいい。このうえは、憲法9条保持を明言している「小沢安保」に期待をかけざるを得なくなるかも知れない。

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