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2008年7月 7日 (月)

いつか来た道 2

 第2次石油危機は1978年、即ち第1次危機の5年後に起きた。同年1月、イランの宗教都市コムで起こった暴動が契機でイランの石油生産は次第に減少し、同年末には完全に停止した。親米パーレビー王朝が崩壊し、イスラム国家に変貌するいわゆるホメイニ革命である。

 原油はこの間に約3倍に値上げされた。第1次石油危機で石油価格が高騰したあとの3倍である。第1次の時と違って、この時は真剣に石油資源の有限性について議論する傾向が強くなった。世界の有識者を集めたローマ・クラブが資源の有限性と急速な人口増加、世界規模の食料不足、環境悪化を警告していたのは、2回の危機が訪れる前の1968年までさかのぼる。

 第2次の危機を迎えて、内外の識者がこれをどう認識したか、小山茂樹『石油危機は終わったか』(時事通信社、1984/10)でこう説明する。

 こうしして石油価格は今後もうなぎ登りに続騰していくであろうと思われた。日本でもほとんどすべての専門家はそのように語っていたが、欧米の専門家、専門機関も全く同様であった。代表的な例を引き合いに出せば、一九八五年の原油価格(名目)は高価格ケースで七一ドル/バレル(以下同じ)、低価格ペースでも五三ドル、もっともありうる中間ベースで六一ドルになろうと予測している(U.S.Dept.of Energy,1980 Annual report to Congress,1981)。
 またこれより先にイギリスのある予測会社(エコノミック・モデル社)によると、一九八五年の平均価格は五七・五〇ドル、一九九〇年には一一〇ドルになろうと予測していた。(AP=DJ一九八〇年一二月一一日)。

 ところがこれにより、世界経済は第二次大戦後最大と言われる深刻な不況に見舞われ、石油価格の割高感は石油離れ現象を引き起こした。この結果、一転して石油は供給過剰状態となり、1980年以降需要は年々大幅な減少が記録された。

 そのためOPEC加盟国の間でもダンピングに走るところが続出し、1983年3月には公式に5ドル値下げを決定、発表せざるを得なかった。この頃になると、石油経済界は原油価格のさらなる値下がりを予告する論者で満ちあふれた。ふたたび前掲書の引例を見よう。

 米国のエネルギー省をはじめ、石油アナリスト、欧米の金融筋は二五ドル以下への引き下げを予想し、なかには一八ドルを予測するものさえ出現した(米国の金融専門誌『バロンズ』によれば、何人かの石油アナリストは、一九八三年を通じて原油値下がりは持続し、間もなく一八~二〇ドルに値下がりすると予測したという――AP=DJ一九八二年二月二十六日)。

 以上長々と価格予測の話をしたが、実際は1980年代はほぼ30ドル前後で推移したものの、90年代は10ドル台で低迷し、湾岸危機の際を除けば30ドルに達することはなかった。したがって前述の強気見通しより弱気見通しの方が当たったことになる。

 過去の石油危機と現在の石油暴騰の違いは何だろう。何といっても大きいのは原油価格決定のシステムが変わったことである。石油危機以前は7大石油会社メジャーズがその決定権を握っていた。そしてその支配権を産油国の国営化政策や石油危機を通じてOPECが奪った。

 しかし消費の実態を無視した価格維持には無理があり、1985年頃より製品市場を勘案したネットバック価格を採用するようになった。これは製品需給を反映した安定かつ合理的な方法のように見えた。しかし、それらも世界最大の石油消費国であるアメリカでわずかに産出するWTY(West Texas intermdiate)という原油の取引相場が事実上の指標となった。今や原油価格の決定権は、生産者でも消費者でもなく、金融資本市場が握っている。

 それ以外の違いとは何だろう。過去、戦争や内乱など、突発的な原因があって価格が暴騰したが、そういった契機がなく構造的な理由だけで上げが続くという不自然さだ。よく中国・インド等の需要増加がいわれるが、鈍化することはあれ、これまでの伸び率が続くという保証はない。

 そのほか、生産のピーク説や資源枯渇説などいろいろあるが、以前からある話の蒸し返しで、石油危機の時と変わりない。したがって遠くない時期にまっとうな経済原則が働いて落ち着くところに落ち着くはずだ。

 ただ唯一の真理は、石油資源が有限だ、と言うことである。したがって石油は代替の利かない用途に限定される貴金属並みの物資となるだろう。そこに至るまでは、まだ気の遠くなるほどの長い期間、人類の英知を働かせる余地と余裕があるということだ。

2008_07070005_2 表は『今日の石油産業2008』(石油連盟)より。
実際の原油価格は08年半ばで145ドル、急角度に伸びて上の記事の下から3行目あたりに来ています。クリックで拡大。 

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