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2008年7月28日 (月)

庶民の戦争責任3

 前回、「南京事件」をと予告しましたが、特定の事件ではなく「中国では」という広い意味に変えてください。政府は「支那事変」といって、国際法上の戦争と区別していますが、国内では完全な戦争体制に入っていました。

 毎日のように出征兵士を送る行列があり、駅には武運長久の祈りをこめた千人針を求める留守宅の婦人の姿がありました。中国は明らかな「敵国」になってしまったのです。第一次世界大戦以降、戦争は、政府や軍隊と一般国民を区別しません。その国のすべてを総合した国力の差が勝敗を分けます。

 国民精神総動員、国民皆兵といった政府の宣伝も日増しに熱を帯びてきました。じゅうたん爆撃による都市人口密集地への攻撃、戦車隊などによる殲滅作戦など民間であろうとなかろうと「戦力」になりうるものはすべて抹殺の対象になります。

 陸軍歩兵の場合は悲惨です。目の前の人を殺すのが商売です。相手を殺さなければ自分が殺されます。だから、人をためらわず殺せるように訓練されます。中国の場合、「便衣隊」といって民間人に紛れ込んだ敵兵から攻撃を受けるというようなことが多々あったといいます。

 民間人と言っても敵国人です。攻撃を躊躇して友軍を窮地におとしいれるようなことはできません。南京ではこういった犠牲者もあったでしょう。だからといって南京を占領した日本軍を一切弁護する気はありません。戦争というのは妥協を許さない過酷なものだ、と言いたかっただけです。

 明らかな非戦闘員を虐殺したりレイプしたり略奪行為をすることは、軍律上も許されないことです。多くの日本兵は今の若者よりはるかに道徳観念で秀でていたと思います。陛下の兵士で大和魂のある侍の末裔です。弱い婦女子に暴力をふるうなど最も恥ずべきことだと信じていたはずです。

 明治・大正のころまで、日本軍は軍紀の乱れがないことで世界的に評価されていました。南京事件は、極限状態の中で指揮系統の無責任さや軍紀の乱れを露呈したものでしょう。ベトナムやイラクの米兵の行為を見ても似たようなことは繰りかえされるものだ、と思います。

 さて最初の宿題にもどつて、「兵士に加害者意識がなかったかのか」の問題です。開戦は天皇の大権です。選挙で戦争に反対する候補者に投票(女子には投票権がない)できても、議会にそれを止める能力がなく、内心開戦を避けたかった天皇でさえそれをおさえることができませんでした。

 戦争がはじまってしまえばもう反対できません。負けたら元も子もなくなります。勝った方がいいに決まっているからです。次に兵役は国民の義務ですから拒否する自由はありません。戦地に出て戦う以上相手は敵です。敵に対しては加害者も被害者もありません。対等です。

 南京事件で言われるようなことを目撃したり実行していれば、加害者という意識を持つことになるでしょう。そういったことで、心の傷としてしまっおいたことに重い口を開くという話は、最近よく聞きます。しかし、自責の念は、そこにいたことではありません。
 
 例は違いますが、沖縄で非戦闘員に手榴弾を渡し自殺をうながしたとされた守備隊長は、生き延びたことに自責の念はあったでしょうが、当時なら守備のじゃまになるといって住民を銃殺することさえあり得た中で、最善の措置をとったともいえます。戦争とは、それほど非日常的なものだと考えてください。

 庶民の戦争責任については、そのまた先祖の責任という発想もあると思いますが、機会を見てあとでのべることにします。また、中国以外の東南アジアではアメリカと激戦を繰り返したフィリピンはやや複雑ですが、それ以外のベトナム、マレーシア、インドネシアなどは、敵はそれぞれを植民地としたフランス、イギリス、オランダの軍であり、現地人には中国人と違った接し方をしていました。戦中は現地人との友好風景を盛んに宣伝していたものです。

 植民地解放の戦争だったという意見がありますが、昭和18年5月の御前会議の方針から見て、どうやらあとづけの理屈らしく、自慢にはなりません。ただ、朝鮮人にしろ中国人にしろその他のアジア人にしろ、善良な一兵士や庶民に加害者意識を持て、とか戦争責任を負えというのは到底無理な話です。

 あなたは、イラク戦争の被害者に同盟国の国民として責任を持てとか、加害者意識を持てといわれて、どう答えますか。日本人は、元来残虐で征服欲が強く、道義心もありません。心を入れ替えて反省します、というのでしょうか。それこそ「自虐史観」で、逆の意味で歴史や真実をねじまげ、平和への追求をさまたげる「歴史修正主義」におちいる危険があります。

 次回は東京裁判に行ってみたいと思います。

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