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2008年7月17日 (木)

底流に変化が

 前々回、「地中海連合に注目」を記事にした。ブッシュ政権末期を迎え、これまでも言われてきた世界におけるアメリカの一極支配終焉がますます明らかになってきた。14日のパリ祭で、シリア、イスラエルなどこれまで対立してきた各国首脳が、うち揃ってシャンゼリゼで軍隊の行進を参観したというが、これが今後に向けた象徴的な光景になるかも知れない。

 16日にはドイツの仲介で、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラエルが捕虜を交換した。レバノン人捕虜の5人と、イスラエル兵2人の遺体がそれぞれ返された。06年に激しい戦争が展開された原因が取りのぞかれたのである。

 これは、単なる和平交渉による捕虜交換ではなく、双方の国民にとって決定的な意味を持つ。人質がそれぞれ抗争のシンボルだっただけに、民族和解に向けた第一歩となることが期待されている。一方、イランとアメリカの緊張も歯車が大きく動き出している。

 つい昨今まで、いや現在でもイランの核開発やミサイル実験、ペルシャ湾域での軍事演習による応酬が、一触即発の危機にあるかのように伝えられている。その一方、今日はワシントンとテヘランの双方から記者が次のような報告があった。(毎日新聞記事による)

 まずイランでは、アフマディネジャド大統領が14日、国営テレビで「米国との直接対話の実現に向け、前向きに取り組みたい」と表明している。またライス米国務長官が、先月テヘランに利益代表部開設を承認したとのアメリカの報道に対し「正式な要請があれば前向きに検討する」と歓迎の意向を示しているという。

 また、アメリカの主要メディアは16日、イランの核問題をめぐるイランとEUの交渉が行われる19日のジュネーブの会議に、米国バーンズ国務次官を派遣すると報じた。その趣旨については、

 米国はこれまでイランとの対話を避けてきたが、方針を転換し、外交解決に向けた米政府の意思を示すために「1回だけの試み」(米政府高官)としてバーンズ次官の派遣を決めたという。バーンズ次官は交渉の席には同席するが、イラン側との個別会談は行わない。

 と伝える。子供のおねだりじゃああるまいし「1回だけ」というのは、保守強硬派への言訳けである。しかし、アメリカ単独主義の方向転換であることは覆いきれない。イランの方も決して国内が一枚岩であるとも言えないが、国民の目が向く方に従わざるを得ない、ということであろう。

 ここでやはり問題にせざるを得ないのが、日本の外交と安全保障政策である。夏休みを終える頃、首相は、庚申塚の猿のような「見ざる聞かざる言わざる」から脱却して福田色をだせるか、民主党代表選が実施され新政策を明示できるかどうか、どうやら期待薄で、日本の外交は世界の底流から取り残されたままであろう。

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コメント

ご無沙汰しております。ていわです。
いまさらイラン政策を修正するというのは、ブッシュ大統領にメリットがあるのでしょうか。外交官が駐在したとしても、イランは仮想敵国としておく方が、アメリカには都合がいいでしょう。今回の狙いは、石油高騰を含めた「市場」対策の一枚のカードです。アメリカは、イラクやアフガン戦争の敗北を認めて撤退しない限り、中東の域内平和は回復できないでしょう。オバマさんも、アフガンに兵力を増派すると言っていますが、旧ソ連の二の舞になるだけです。アメリカというのは歴史が浅いから、ラジカルもリベラルも歴史に学ぼうとしていません。

投稿: ていわ | 2008年7月17日 (木) 22時30分

はじめまして。

今年は大統領選ですから、イラン問題は争点ですね。国際関係を修復するには、オバマでがらっと変わったほうがいいですね。マッケインだと、同じブッシュと同じ共和党ですから。それが、10年以上も続いてしまいます。もう、オバマが叫ぶ「変革」の時だと思われます。

投稿: ヘルメス | 2008年7月17日 (木) 22時53分

ていわ さま、ようこそ。
ヘルメス さま、こんにちは。

 ご返事を一緒にしてしまってごめんなさい。

 そのオバマさんが、「現地の指揮官と相談しながら」などと発言し、腰がひけているのがすこし心配です。でも、これは、マッケインさんへ行く票を少しでも取り込みたいということで、当選すれば変革のエンジン始動だろうと楽観をしています。
 しかし、大変革が中変革ぐらいになる可能性は高そうです。その歯止めはアメリカ国民より国際世論の力が大きいと思います。

 アメリカの短い歴史は、一国主義と多極主義、介入主義とモンロー主義の繰り返しです。この先オバマさんが転換のスイッチを入れるかどうかでしょう。

 戦争と石油はかつての日本の開戦がそうだったように、いまなお「戦略物資」です。端的に言えば今の中国のアフリカ政策でしょう。

 ただ、アメリカが独占的利権を得るために戦争をする、というのはやや短絡的で、産軍癒着の構造はあるでしょうが、古典的な侵略史観だとはいえないと思います。

 一貫して変わらないのは「星条旗よ永遠なれ」の価値観と精神構造かも知れません。

投稿: ましま | 2008年7月18日 (金) 09時59分

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学者のたまごでした 北海道の大学研究機関で研究者を目指す学生のブログです(開設時)。日々の所感、野外調査での写真等々を紹介します。 2006年12月までアラスカ大フェアバンクス校へ交換留学していました。 2008年3月,博士の学位(Ph.D)を頂きました。今後一年間はポスドク,その後は未定です。 2008年07月16日 ムペンバ効果,追記ムベンバ効果じゃなくて,ムペンパ効果じゃなくて,ムベンパ効果でもなくて,ムペンバ効果。 (Mpemba Effect)。 先日,以下の記事に書いたところ, #た... [続きを読む]

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