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2008年7月31日 (木)

庶民の戦争責任5

 ここまで、一兵士や庶民には戦争責任がない、またそれを体験した人でなければ加害者意識もない、などと言ってきました。またそれを、科学的に実証しようと言うのではなく、あくまでも当時の1少年の実感を申し上げたつもりです。

 いただいたコメントの中に「先祖が負うべき責任は」というのがありましたが、父母の時代、祖父母のまでさかのぼり、それらの時代背景についてこれまでも何度か記事にしてきました(カテゴリ「戦争とは」の《歴史編》などに入れています)。

 「戦時においては中国人は敵、だから加害者・被害者の区別はない」というようなことを前回書きました。しかしこれはいささか詭弁であって、「侵略したのは日本、したがって被侵略国民は全部被害者」と言ってもいいわけです。

 殺戮の現場は中国です。その中国から日本は攻撃を受けたことがありません。軍隊が中国大陸にいて荒らし回ったのですから、一方的に責任は日本にあり、すでに戦争が始まっていたわれわれの時代はともかく、庶民といえども加害者でないと言いはきれません。

 それを当時の日本人はどう意識していたかです。両親の世代は物心がついた頃、すでに日本軍が中国国内に常駐していました。日露戦争の結果、ロシアから奪った中国領土内の利権(鉄道など)を守るなどという口実があったのです。

 そういった他国軍の駐留は欧州列強、みんなやっていましたから日本だけではありません。いわゆる植民地競争、帝国主義さかんな時代の名残です。しかし、第二次世界大戦が世界に悲惨な結果をもたらした結果を受けて、世界は軍事力優先、覇権競争を自制する方向に向かいました。

 ところが、日本だけは逆の方向へ行きました。中国に勝ったわけでもないのに、火事場泥棒のような対華21箇条要求などを押しつけました。私はこれが中国侵略の始まりだと解釈しています。その後、関東軍による張作霖暗殺など卑劣・陰険な内政干渉を繰り返し、自作自演の満鉄線爆破で満州事変に至った経緯は詳しく述べません。

 こういった外交上の機微や謀略事件の真相は一切国民に知らされませんでした。その反面、中国における抗日運動や日本人殺害などは伝えられ、「わからずやの中国人」といった蔑視だけが進んだような気がします。そして昭和に入ると治安維持法が猛威をふるい、国軍批判イコール体制(国体)批判、イコール日本国転覆をねらう共産党、といった社会になってしまったのでしょう。

 そうです。暴力装置である日本軍がよその国にいなければ、あるいは早期に引きあげていればこういうことにならなかったのです。その責任は誰が負うかということになると、天皇であり、軍、特に関東軍であり、歴代内閣など国の中枢にいた人間ということになるでしょう。これを庶民にまでひきおろすのは、やっぱりすこし無理があるような気がします。

『永遠平和のために』カント(1795年)

第三条項
 常備軍(miles perpetuus)は、時とともに全廃されなければならない。

 なぜなら、常備軍はいつでも武装して出撃する準備を整えていることによって、ほかの諸国をたえず戦争の脅威にさらしているからである。常備軍が刺激となって、たがいに無際限な軍備の拡大を競うようになると、それに費やされる軍事費の増大で、ついには平和の方が短期の戦争よりもいっそう重荷となり、この重荷を逃れるために、常備軍そのものが先制攻撃の原因となるのである。

 そのうえ、人を殺したり人に殺されたりするために雇われることは、人間がたんなる機械や道具としてほかのものの(国家の)手で使用されることを含んでいると思われるが、こうした使用は、われわれ自身の人格における人間性の権利とおよそ調和しないであろう。

 だが、国民が自発的に一定期間にわたって武器使用を練習し、自分や祖国を外からの攻撃に対して防衛することは、これと全く別の事柄である。(宇都宮芳明訳・岩波文庫)

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