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2008年7月 5日 (土)

いつか来た道

 東証の日経平均株価は、昨日で12営業日続落している。これまでの最長は1954年5月18日までの15日続落だというが、来週これを突破して新記録なるかどうか。また、その株安の原因を作っているアメリカの原油先物相場の方は、それにおとらずはるかに異常である。

 04年まで20~30ドル台だった物が一昨日は145ドル台の新記録を達成した。第1次オイルショック(1973年)の時は、実勢価格が3年前の5倍近くなったが、絶対額にすれば2ドルから10ドルの8ドル前後の差でしかない。ガソリンの値上がり額はリッター40円ほどで、高いところではレギュラーガソリンを100円にのせたところもあった。

 すでに諸物価高騰の気配があったところへの石油ショックである。『石油インフレ』(朝日新聞社編)から引用する。

――「1時間半かけて、四軒目でやっと10個入りのトイレットペーパーを買えました。帰る途中『奥さん、それどこで手に入れたの』って三人の女の人に聞かれたわ。教えたら、目の色かえてとんでいくんですよ。買いだめがモノ不足の原因かもしれませんね。でも値段の上がる前に買うのはいけないんでしょうか」――川崎市の主婦(26)

 さらにこう解説する。

 危機がくる半年あまり前の昭和四八年二月、全国の生活協同組合の役員が集まった会合で、大河内一男元東大総長が「みんな高度成長におぼれすぎている。この際、モノを買わない運動をやったらどうか」と提案したが、「先生も年をとったねえ」という反応だけでだれ一人耳をかさなかったという。

 現在のNY原油先物は、金融すじによる買いだめである。オイルショック当時は、独禁法違反すれすれの石油2法を急造するなど、日本の政治が大きく動いた。現在、食料品を中心に生活必需品の値上がりラッシュが続いており、4日の日銀の生活意識調査によると92.1%の人が値上がりを実感している。

 しかし、凶悪な犯罪の報道はあっても、住民の物価に対する動きがクローズアップされることは、あまりない。35年前よりさらに飽食に慣れ、豊かさに馴れきっているということなのだろうか。そして政治は、世界要人会議で実効の伴わない共同声明を用意するぐらいで、何もしない。

 私は、現在の生活を脅かす世界的な危機状況は、象徴的にアメリカ・ブッシュ大統領によって作り出されたものだと思う。まず、世界でもっとも石油埋蔵量の多い中東で戦争をはじめ、いまだに治安回復の見通しが立たず、石油増産に支障を来している。その上、イランとの緊張状態継続で根本的解決を遅らせている。

 アメリカ国内のサブプライム・ローン問題で世界の金融の混乱を招き、石油・穀物市場への資金殺到に手がうてない。さらに、慎重さを欠いた穀物によるバイオマス生産の奨励が世界の食糧危機を誘発し、農業生産に関係の深い地球温暖化など環境問題への関心も低い。

 マハティール前マレーシア首相は、「食料や石油の世界最大の消費国であると同時に、世界最大の二酸化炭素排出国でもある米国が、自らの犠牲を払って問題を解決姿勢をみせていない」(毎日新聞7/4)と手厳しい。新聞論調も遠回しにアメリカの責任を指摘する程度である。現役の国家首脳となるとそこまでもいえないのだろうか。

 柳田邦男の書く『狼がやってきた日』という石油危機当時のドキュメントがある。そのあとがきで、ここで得た教訓は何であるかを次のように問うている。その教訓は生かされているだろうか。残念ながら答えはNOである。

 あのとき、マスコミは、「アラビア語も話せない」と外務省を批判し、「油買いに狂奔」と商社を嗤い、「出荷調整でパニック演出」と企業を攻撃した。首相田中角栄にしてからが、混乱の責任を企業のあくどさに転嫁しようとする発言を何度か繰り返した。中学生的な「正義感」と「勧善懲悪主義」が、社会を征服したかのようにさえ見えた。

 だが、日本の姿を、それ以前と以後とで大きく変えてしまった石油危機とは、そんな単純な「正義感」や「演出論」で割り切れるものだったのだろうか。石油危機とは、日本にとつては、もっと複雑な構造を持った歴史的な体験だったはずである。歴史的体験であるなら、そこには普遍性のある教訓があるはずであるし、その教訓を汲み取る作業をしなければならないはずである。

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