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2008年7月29日 (火)

庶民の戦争責任4

 前の2回では、総力戦のもとでは国民が犠牲になることは当然、と考えられていたことと、まず勝つことが一番で、そのためには「なんでもあり」「殺さなければ殺される」ということを言いました。そして、「勝てば官軍」勝った方はあとでどんなことでも合理化・合法化できるのです。

 アメリカの原爆投下も東京大空襲も、戦争だからやられても「しょうがない」という感情を国民は持っていました。原爆という超能力兵器開発の可能性は、日本でも「マッチ箱ひとつで戦艦が沈む」という表現で知られており、日本が早くそれを発明して使えればいいなあ、と思っていたものです。

 その意味では、久間元防衛庁長官の「しょうがない発言」のどこがいけないのか、という気もします。そして、広島の原爆慰霊碑にある「過ちはくりかえしませぬから」という文言が議論になっているようですが、私は、最初から広島の惨禍を繰り返さないよう、日本人が世界に訴え続けるという意味に解釈しています。

 さて、東京裁判についてですが、教科書問題や靖国問題などをめぐってさきの戦争を合理化、正当化しようてする側から「東京裁判史観」などという新語を持ち出して、裁判の不当性を強調する議論が盛んになりました。

 最近は議論が下火になったように思いますが、この裁判は、世界の大きな流れの中で進められた歴史の一こまです。議論は大いに結構で、それにより裁判の実相が深まることはいいことです。しかし確定している史実を否定したり、結果を勝手に書き換えたりはできません。

 本稿の目的からはずれるので議論には立ち入りませんが、もう中学生・高校生になっていた私にはどう映っていたでしょうか。まず東条元首相逮捕の際の自殺未遂です。これは同級生の間でも猛烈なブーイングが起きました。

 「あれはお腹の皮をつまんでそこを撃ったんだ」などという子もいました。ピストル自殺は銃口をこめかみに当てて撃つぐらいは子供でも常識です。まして「死して虜囚の辱めを受けるなかれ」という『戦陣訓』を作った軍の最高責任者です。彼にとって決定的なイメージダウンになりました。

 裁判は淡々として進められ、概略の報道もありました。東条が開戦に至った正当性を、かたくなに主張し続けたとも聞きました。この点、ほかの被告が自己弁護したり、責任回避をする中で、際だっていたことはあとで知りました。

 私は今では東条崇拝者です。天皇の戦争責任追求を回避し、戦後の日本再興を願って他の一切の責任すべて一身に集中させることに全知全能を捧げたのです。それでなければ、あの不可解な自殺未遂のなぞも解けないし、また裁判でも開戦を正当化し、一切反省を示さないことで裁判官の心証を悪くさせることに集中したのでしょう。東条は稀代の擬悪者、これが私の独断です。

 判決の模様は、ラジオで聞きました「……Death by hanging(絞首刑)」という英語は今でも耳に残っています。国内では、堂々と裁判で渡り合った東条を見直したり、各被告に対する不公平を指摘する意見もあるなど、国民の関心は高かったものの、裁判や判決に対する表だった反対や抗議をしたという話は聞いたことがありません。

 この裁判には日本人から見て、戦争の勝者が敗者を裁くという面と、敗戦に至る戦争を指導した責任を問う両面があり、また同時に敵対国に対しての「けじめをつける」という意味があったと思います。

 それを「けじめはついていない、戦争は自衛の戦争、侵略戦争ではない」などといったらどうなるでしょう。中国国民政府の蒋介石総統は、日本からの賠償請求を放棄しました。また、共産党政府の周恩来首相は「日本の人民に戦争の責任はなく、むしろ被害者である」といって国交回復に応じました。連合国と講和条約を結び、国連に加盟できたのも、そういったけじめの積み重ねがあってのことです。

 小泉首相の靖国神社参拝強行は、たとえ真意がそこになかったにしろ国際社会、ことに中国から軍国日本の復活、と警戒されてもやむを得ない愚行だったと思います。それを支持しあおった「庶民」がいたとすればたしかに「戦争責任」ものですが、やはり「だれがそうさせたのか」は問われなければならないでしょう。

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