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2008年6月16日 (月)

漂流する安保 9

 1858年(安政5)、大老・井伊直弼は勅許のないまま、米英仏露蘭の5カ国と修好通商条約を結んだ。関税自主権がないほか、条約国民が犯罪を犯しても日本に裁判権がなく、いわゆる「治外法権」を認めた不平等条約である。

 明治政府は独立国としての威信を確保するためこの撤廃をめざして尽力、1894年(明治27)、日清戦争直前に妥結した「日英通商航海条約」調印により、36年ぶりの念願を果たした。米駐留軍の治外法権的特権は、戦後の占領時、旧安保の日米行政協定、新安保の地位協定と続いて、今年ですでに63年、政府はまだまだ続けるつもりである。

 アメリカがイラクとこの夏に締結を目指している安全保障協定(日米安保に相当)に関し、イラクのマリキ首相は、アメリカ側が米兵だけでなく米軍と契約する民間会社の社員にも刑事免責を要求、さらに△米軍のイラク人逮捕権△イラク政府の許可を必要としない軍事行動△領空、水資源の支配権などの要求があることに対し、断固拒絶すると言明しいてる(毎日新聞6/15)。

 アメリカ側が、交渉テクニックとしてふっかけている点もうかがえるが、「主権侵害」や「長期駐留」に対するイラク国民の反感を全く意に介さない提案だ。駐留軍の特権を維持しないと「士気」にかかわるといい、他国との契約上のバランスを主張する。

 「士気」とは何だろう。躊躇なく人を殺せる気概か、特権で優越感を持たせるための他国民蔑視政策か、そのようにしないと、志願兵を集められないということなのか。そんな「世界の警察官」などにいてほしい国はない。一方、ブッシュ大統領は、イランがウラン濃縮停止の見返りを拒否したことについて、「イラン国民は国際社会から一層孤立する」と次の標的に警告する。

 しかしイランは、イラクの現政権と連携する動きがあったり、日本人人質解放で、民俗・宗教上の対立が深かったパキスタン政権と水面下で協力しあったり、同様に革命以来疎遠だったサウジなど湾岸諸国と交流するなど、以前のような対立を前面に出す政策はとっていない。

 パレスチナでも、過激派ハマスと穏健派ファタ派の和解を進めようとする国際的な動きの中で、イスラエルに影響力を行使し得ないアメリカの方にむしろ孤立感がただよう。西欧各国をはじめ、アメリカ国民でさえイラク派兵に疑念を抱き距離を置くようになったことに、ブッシュはどれほど気づいているのだろうか。

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