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2008年5月13日 (火)

護憲的改憲論にひそむ危険

 「護憲的改憲論」、あるジャーナリストが使っていた言葉だ。わがブログもなにかそれに入りそうだが、まず憲法に対するいろいろな姿勢を私なりに分類してみた。

 1.占領下に押しつけられた憲法だから自主憲法を作り、自衛隊を正規軍として認める。(自民党のほとんどと民主党の極右)
 2.自衛隊の存在を憲法上認知する(自民党および民主党の過半)
 3.9条をそのままとし、時代の変化等で必要になった事項を付け加える。(加憲論=主に公明党)
 4.憲法に不具合なところはない。自衛隊は段階的に縮小する。(主に社民党、共産党)

 ここで言えば2.と3.だ。私も9条を守るという前提で、漠然とそう考えていた。しかし、安倍改憲指向内閣の崩壊、海自のインド洋給油活動の継続や自・民で恒久法の実現ををさぐる動きなどの中から、第5の考えを抱くに至った。それはすでに申し上げたことがあるが、9条に次の第3項を加えるほかは全く手つかずでいいということだ。

 ③公務員は、法律に定めがある場合をのぞき、武器を携行し、または利用して外国または日本国領土以外の地域で行動してはならない。

 なぜそうなるかを説明したい。現行憲法は、前文、第1章 天皇、第2章 戦争放棄、第3章 国民の権利と義務、第4章 国会、第5章 内閣、第6章 司法、第7章 財政、第9章 改正、第10章 最高法規、第11章 補足となっている。明治憲法もほぼ同じ構成だ。

 これをさらに整理すると、前文から第2章までが、日本のアイデンティティおよび国民統合の象徴としての憲法理念をうたっている部分だ。それが主権在民であり、天皇であり、平和であるという密接不可分の関係にある。その次から憲法の中味に入っていき、最も重要な部分である「国民の権利義務」、三権分立の「立法」「行政」「司法」といった国家の機関、7章以下は、手続きと補足で、大きく言って3つのブロックから成り立っている。

 自民党の改憲案を見てみよう。第2章を「安全保障」と題を変え、第1項の戦争放棄条文を残したまま、それとは全く異質の「自衛軍」条項を盛り込んだ。そのため、最初の憲法理念はずたずたになり、国民の権利義務など、最も基本的な条項の前に自衛軍の任務や行動規範をもってくるなど、法文としての体裁が全く狂ってきた。

 かりに、後ろの方の章に持ってくるにしても、憲法には他省の所管業務である警察や海上保安庁や消防などの組織について触れている部分などない。新憲法を作るといいながら、現憲法をいじくり回したあげくの奇怪な案が自民党案だ。

 民主党の方も、小沢理論により、国連の決議があれば自衛隊の海外派遣をする、そのためには現9条1、2項のあとに3項を付け足して、などという案が聞こえてくる。これも上と同じような矛盾を抱え込む危険があり、依然として解釈改憲に道をひらく可能性も残している。

 国連は見ての通り、いつも公正公平な神の決断を下すわけではない。またそれが我が国の国益や憲法の精神に合致するとは限らない。国際情勢や国際環境はこれからも激変する可能性がある。そのような予見不能なことを憲法にうたっておく必要はない。より改廃しやすい一般法にゆだねる方が現実的だ。

 9条により厳密なしばりを加えて、自衛隊は専守防衛に徹すること、その上で、国際貢献などに武力行使あるいは武力による威圧を排除して何かできるかを検討する、というけじめを明確にしておくことが必要だ。それには、憲法違反状態をつくりだした日米安保の運用方針を改めることからはじめなくてはならない。

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コメント

お邪魔します。
私もいろいろ考えましたが、憲法は現行を変えてはならないと結論を出しました。
現行憲法は軍隊を持たないとしたものです。それを、無理に無理を重ねて自衛隊を作り出しています。
民主党は解釈憲法を防ぐため、一歩進めると言いますが、進めればさらなる解釈が待っているだけです。
反戦青年の追加文も「法律に定めがある場合をのぞき」が危険な部分です。付け加えるのならその箇所を除いた文案にするべきでしょう。
③公務員は、武器を携行し、または利用して外国または日本国領土以外の地域で行動してはならない。
とね!

投稿: 飯大蔵 | 2008年5月14日 (水) 01時09分

飯大蔵さま
大洪水、大地震でも救援軍はお呼びでない。ましてや重装備の軍隊を歓迎するところはないでしょうね。ただ、中立地帯監視とか選挙監視とか丸腰でつとまる国際貢献がないとは限りません。
原則禁止ですから、ケースパイケースの特措法とか派遣要件を厳格に制限した半恒久法とかで、解釈改憲の余地を少なくする効果はあると思います。

投稿: ましま | 2008年5月14日 (水) 16時41分

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