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2008年5月 7日 (水)

中国思想

 胡錦濤国家主席の来日が、今後の日中関係にどういう影響をもたらすか未知数であるが、すくなくとも日本人が中国および中国人をどう見るかについて、考える機会を作ったことだけは間違いがない。これまでも中国要人の来日はあったが、オリンピック、チベット、餃子など比較的国民に身近でセンシティブな問題が続発したこともあって、単なる外交儀礼的あるいは、友好促進を超えた効果が期待できるのではないか。

 中国で大昔からある教訓、「和而不同」を題名としたエントリーを先月初めに掲載したが、これが検索にヒットしコンスタントなアクセスが続いている。中国・朝鮮を特殊化し、鬱憤のはけ口にしようという流れは依然としてネット上などで優勢だが、それではなにも解決しないという考えも定着してきた。中国を敵視するならば、まず「己を知る」ことから始めなくてはならない、これも中国の有名な兵法、孫子の言葉である。

 『中国思想を考える*未来を開く伝統』(中公新書)という本がある。2年前の5月5日になくなった金谷治博士の書で1993に書かれ、やや古典に属するという見方があるかも知れないが、上に掲げた諸事件の推移や処理をあてはめてみると意外に符合している内容があることに驚かされる。

 最近、中国政権が盛んに用いる合い言葉は「和諧」であり、胡主席来日でもキャッチフレーズのように使われている。日本ではなじみのない言葉だが、「和」は日本語の解釈通り、「諧」も似た意味だが「調和」というニューワンスを持つ。まずその辺りを同書で見てみよう。

 『論語』の「和而不同」も中庸の精神を説いたものだが、『左史伝』に晏子(あんし)の言葉として「和は羮(あつもの)の如し」というのがある。これも有名なたとえで、羮を日本で言えばちゃんこ鍋のような料理の、おいしいスープの作り方を説いている。

水のなかに酢や醤油、塩や梅をまぜて熱を加え、魚や獣の肉をぐつぐつ炊きます。そうして「和して味を調え、不足を増して過ぎたものを減らす」のです。料理のことを考えていただけば宜しいのです。水だけ、あるいは塩だけでは、よい味はできません。鹹(から)いもの甘いもの酢っぱいもの、いろいろな味をまぜ、雑多な具を煮てこそそこによい味かげんが得られます。材料は多すぎたら減らす、足りなければ増やす、――中庸ですね。そうして得られるのが味の調和です。(以下略)

 また「それは遠い古代のことで、今の共産中国は違う」という人がいるかもしれない。これについて同書では中国共産党創立にかかわったマルキシズムの理論家・李大釗(りたいしょう)の論文を紹介している。

李大釗は血気にはやる青年を抑えて、むだな争いはするなと言います。ある意味でたいへん中国的だと思うわけですが、相手を倒そうとしてつっかかるばかりでは犠牲を多くするだけだ、そこで調和の法則に従えというわけです。調和ということがたいへん実践的に考えられています。李大釗はこういうのです。調和というと、一般にはたがいに譲りあうことだと考える、おたがいに自分を抑えてへりくだって相手を立てて、それで全体が調和してゆけるというようにです。しかし、それは間違ってはいないが、それだけに止まっていてはいけない。「両譲に始まって、両存に安んずる」で、調和の境地は我も人も生かされるところにある。競争といえば調和を妨げるというように考えるのは誤りで、それでは全体の進化とか活発な組織はみな滅びてしまう、自分は両存の調和を愛する、また競立の調和を愛すると、こういうように申しております。

 もちろん中国の人全員が古典や賢人の論文に精通しているわけではない。また解釈も考えもそれぞれ違って当然だ。ただし、指導層は激しい権力争いの中で、中国の伝統に基づく方策に活路を見いだそうとしていることはたしかだと思う。こうした中で、媚中だとか嫌中だとか反日だとかの硬直的発想にとらわれている限り、進歩に取り残されるのは日本の方になる、ということを心すべきだろう。    

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